4話「伏線回収」
じいちゃんの声が、頭上から聞こえた。
「ほ、ほんとにですか!」
「ああ。少しだけだがな」
「ありがとうございます」
二人が顔を上げてじいちゃんにお礼を言う。
「ありがとう、じいちゃん」
「礼を言われる筋合いはない。裏へ行くぞ」
「裏?」
清水が首を傾げて聞き返す。
「ああ。この神社にはお参りをする拝殿の後ろに、普段は行けないが本殿がある。中には入らせんが、建物の前に行くだけなら見てもいい」
そう言って、拝殿の裏に回るじいちゃんを、三人でついていく。じいちゃんの言う通りもう一つ建物があって、拝殿よりもなんとなく豪華に感じた。数段しかない階段に、大きな扉、真新しそうなしめ縄。そして、扉の前には小さな台があって、その台の上には鈴のついた枝が置かれていた。
「あれって……」
「あぁ、柏の枝だ。神社の由来にもなっている」
「まじか!」
やっと解けた神社の名前の由来に三人で喜ぶ。
「あの、ここの神社では何を祀っていますか?」
「それは言えん」
清水の質問に対し、じいちゃんは即答で答える。
「賽銭箱の中が溢れそうなほど多いのはなぜですか?」
「月に一度、一世帯の代表者で集団参りをしている。個人でする奴もおるし、自然と溜まるだけだ」
次に内田が質問し、じいちゃんは饒舌に答える。
その後も二人はじいちゃんを質問攻めした。じいちゃんは答えない時もあったが、ほとんどのことには答えてくれた。
たまに見せるじいちゃんの暗い表情が少し気になったけど、質問できる雰囲気ではなかった。
時間も経ち、じいちゃんを見送って図書室へと戻る途中、清水がふと口を開いた。
「そういえば、あの柏の枝、前までは拝殿においてあったよな」
「え、そうだっけ?」
「あぁ、確かにあったな。賽銭箱の後ろに」
内田もうんうんと首を縦に振る。
「えー、思い出せない。前っていつ?」
「……小学校低学年ぐらいのころ?」
「そんなに前!?」
「うん。よくみんなで遊んでた頃だよ。夏休みに涼みに行ってさ」
「…………あ!あったね!懐かしいなぁ」
内田の言葉でようやく思い出した。確か、ふざけて鈴を鳴らして、すごく怒られた覚えがある。
「あの後から鈴見なくなって、今思えば俺たちのせいだったかもな」
「俺たちが蒔いた種ってことか。十年越しの伏線回収?激アツだな」
妙な部分で盛り上がっている二人を見ながら、昔のことを思い出す。
あの頃は今よりも活発だった気がする。外でクラスメイトと遊んで、調子に乗って怒られて、どこにでもいる生意気なガキだった。今は少し疎遠になって、遊んだり、定期的に話すような仲はいないが、決してクラスメイトと仲が悪いわけではないし、何かあれば普通に話す。たまに寂しいと感じる時もあるけれど、自分自身、周りを巻き込んでバカやるタイプではないため、そこまで支障は出ていない。
けど……、ここ数日を通して感じた。
やっぱり、誰かと一緒にいるのは楽しいな。
二人の背中を追いかけながらそう思った。




