15話「大好き」
「あそこ行きたい!あそこ!」
「あそこってどこだよ?」
病院帰り、久しぶりに朝陽と小さい頃に行った山に行きたくて朝陽に言った。
「ほら、あの山みたいなとこ」
「あぁ、いいよ。一緒に行こうか」
お母さんとお父さんに許可をもらい、朝陽と二人で丘に向かうことにした。
「お父さんたち着いてこなかったね」
「それだけ俺が信用されているってことだよ」
「そっかぁ。お見舞い一番来てくれたの朝陽だもん」
外の景色が数年ぶりで、いまだに実感が湧かない。
あと数週間様子を見て、特に何事もなかったら完治。
本当に何もないことを祈りながら、なんとなく大丈夫だろうと慢心している気持ちもある。
でもお医者さんも手術が成功すれば完治する確率は100%に近い、と話していた。
だから、大丈夫なはず。
「どうしたの、海音?」
「あ、ううん。なんでもない」
少し朝陽とどういう感じで話せばいいか分からなくなった。
朝陽は海音を見てすごく嬉しそうに話す。
その笑顔が嬉しくて手術を受けてよかったと改めて感じる。
生きていてよかった。
自分でもわかる。入院していた頃とは別人かと思うほど変わった。
あの時、必死に嫌だと言う朝陽を見て自分を殺したくなった。
なんであんなこと言っちゃったんだろうって。
でも、朝陽が喜んでいるならそれでいい。
そう思いながら横断歩道で信号が変わるのを待っていた。
「海音」
「何?」
「大好き」
「急にどうしたの?しかもこんな街中で」
「海音は?」
「……俺も大好きだよ!」
朝陽に向かってそう言った瞬間、
「危ないっ!」
「え?」
少し息がしづらいと思ったら、すぐに朝陽に思いっきり腕を引っ張られる。
そして朝陽は海音と入れ替わるように道路に倒れた。
ドン。
朝陽はそのまま轢かれた。
「え、あ………」
ざわつき始める人たち、次々と止まる車。
「朝陽?朝陽!」
道路の方へ飛び出して朝陽が倒れている場所へ向かう。
「朝陽、朝陽!」
「あ、まね?」
うっすらと目を開け海音を見つめる朝陽。
「よか、った。海音、が、生きてて」
血だらけの体。飛ばされた衝撃か後頭部が陥没していて、頭を支えようとしても上手く支えられない。
「まって!朝陽、朝陽!」
朝陽のまわりに黒いモヤのようなものがかかる。
そして圧のようなものを感じる。
でも、ただ怖いだけじゃない気がする。
「これ、からは、ちゃんと、生きるんだよ」
「やく、そく」
そう言って朝陽は意識を失った。
かくんと傾く頭。どこを触っても血がつく傷だらけの体。
もう何も分からなくなった。




