14話「優しすぎる」
「ん、どうしたの?」
「俺、海音のこと一生好き。大好き」
「へ、急にどうしたの?変なものでも食べた?」
「ううん。俺は海音のことが大好き。ずっとずっと。嫌いになろうと思ってもなれない。だって、大好きなお兄ちゃんだから。今までもこれからも」
「急に言われると照れちゃうな。でもありがとう、すごく嬉しい。ちゃんと朝陽にお兄ちゃんができて、俺も朝陽のこと大好きだよ。大切な弟だもん」
海音の体があったかくて、落ち着けて、安心して、ずっとこのままでいたい。
ふと、嫌な感情が流れ込んでくる。
この腕の中で本音を言って、大声で泣けたならどれだけ良かったのだろう。
本当に海音は優しすぎる。ひどいくらいに。
本音も言ったし、泣いてもいるのは事実。これでも抑えている方だ。
あのことは、アラタとのことは口が裂けても言えない。
……でも、なんで自分は死んでいないのだろう。
手術は成功した。つまり朝陽とアラタの契約によって成功したともいえる。
なら、どうして。
「いいよ、このままでも。朝陽が泣き止むまで、満足するまでこのままでいよう」
そんな考えとは裏腹に優しい言葉で朝陽を落ち着かせる海音。
「………ありがとう」
いやだな、かけたくない。
「ずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん。ずっと一緒だからね」
あぁ……かけちゃった。
分かっていたはずなのに、自分はどれだけ海音を苦しめれば気が済むだろう。
そのまま眠ってしまって、目が覚めた時には真夜中だったけど海音は起きていた。
「ごめん朝陽。ベッドに寝かせちゃった。朝陽が満足するまでそばにいるって言ったのに」
「ううん、大丈夫。大満足だから。それに、ずっとそばにいたでしょ」
「はは、ご名答。朝陽の寝顔を堪能してたよ」
「気持ちわる」
「ひどっ!朝陽は俺の寝顔いっぱい見てるくせに」
「それは海音が目を覚まさないからじゃん!」
「あーそうだね。ごめんごめん」
海音が謝った瞬間、笑いが止まらなくなった。
「ちょっと!なんで笑うの!?」
「いや、なんでもない」
最初は不満そうにしていたものの、ずっと笑っている朝陽を見て海音も笑い出す。
この時は忘れていた。
自分は死ぬということを。




