5.初クエストは草狩り
勝手ですみません。
この作品を改良して、リメイク版を出そうと思います。
絶対後悔させませんので、それまで待って頂けると幸いです。
俺達は再びギルドに戻りクエストを受けようと、掲示板に張り付けてある数多の依頼の紙を見渡していると、
「あ、あれとか良いんじゃない?」
テトラが一枚の張り紙を見て指差す。
俺も差した指の先を見る。
そこには、
―――
クエスト ☆☆☆☆★
【魔薬草の草狩り】
魔草の森に生息する魔薬草を10本狩る
【報酬】
銀貨30枚
―――
と書いてあった。
「草刈りか、最初のクエストらしいけど少し物足りないかもな」
「みんな最初は小さい所からやっていくのよ。あんたはつべこべ言わずに、私に着いてくれば良いの。」
乱暴な言い方ではあるが、訳すと"急に高難易度のクエストを受けたら危ないから、簡単なモノからやっていこう"という事だろう。
「分かりました、それでいきましょう。」
「あ、また敬語で話した!敬語はやめてって言ったわよね!」
「あ、ごめんごめん。」
それから俺達は、受付嬢さんに張り紙を渡してそのクエストを受けた。
―――
ギルドを出て、街を出て、王国の壁を越えて、しばらく歩くと、ようやく例の森に着いた。
「薬草取りかぁ、まぁ確かに最初のクエストには丁度良いかもな。」
「ん、薬草取り?違うわよ、魔薬草っていうのは…」
テトラが何かを言いかけたその時、突然目の前の地面がゴモゴモと盛り上がり始めた。
すると、そこの周りの土を突き破るようにして、数本のツルが勢い良く飛び出す。
「下がって!!」
テトラの掛け声とともに、俺は反射で後方に飛び込む。
後ろを振り返ると、先程まで自分が立っていた場所に、深々とツルが突き刺さっていた。
一方のテトラはというと、防御魔法らしきものを展開して、ツルを弾いていた。
突然の出来事で頭が回らずにいると、今度は2本のツルが同時に襲って来た。
(もうダメだ…)
そう思った時、俺はある違和感に気付く。
ツルが進むスピードがやけに遅い。
遅いというか、いつまで経っても俺の元に辿り着く気配がない。
この感覚を、俺は前にも経験した事がある気がする。
そうか、思い出した。
俺が死ぬ直前、トラックに轢かれる瞬間の視界と良く似ている。
あの時も、衝突の瞬間までの時間が異様に長く感じられた。
しかし、あれは恐らく"死ぬ間際は時間の流れが遅く感じる"というやつだったが、これは違う。
確証は無いが、直感的にそう感じる。
だとすると、考えられる仮説は一つ。
俺は今ゾーンに入っているという事だ。
もう一つ加えると、俺は自分の意思でゾーンに入る事が出来るのではないか。
そう考えると、俺の仮説に確証が生まれる。
一般的なゾーンは、こんな短期間に何度も出せるものじゃない。
恐らく俺は、死を間近に経験した事で、ゾーンを自発的に引き起こせるのかも知れない。
まぁ取り敢えず、戦闘中なので今の状態を保っている内にツルを倒そう。
俺は剣を鞘から抜いて、ツルに斬りかかろうとする。
しかし、予想外の事態が起きた。
俺の身体能力がゾーンに着いていけず、自分の動作もゆっくり進んでいたのだ。
俺は片方のツルを斬るのがやっとで、もう一方はどうする事も出来なかった。
半ば諦めていると、突然爪の形をした風がツルを両断した。
「大丈夫!?」
風が飛んできた方向を見ると、そこに居たのはテトラだった。
俺は直ぐさまテトラの方へと駆け込み、再び剣を構える。
そして、得体の知れない魔物について、俺はテトラに問うた。
「どういう魔物なんだあいつ。」
「え、知らないの?あれが魔薬草よ?」
「はぁ!?あれは草っていうか明らかに魔物の類だろ!」
「だから書いてあったじゃない、"草狩り"って。」
「狩るってそっち!?」
どうやらこの世界の草刈りは、俺が思ってたものとは全くの別物だったらしい。
しかし、そんな会話をしている間にも魔薬草は襲ってくる。
俺は再び集中し、目を凝らす。
すると、やはり魔薬草の動きが遅くなった。
これで確定だ。俺は自発的にゾーンに入ることができる。
俺はそのまま、向かってくる魔薬草を袈裟に斬り伏せる。
幸い、俺よりもテトラの方が脅威と感じたのか、俺に来たのは一本だけだった。
一方のテトラは、五本程の魔薬草を魔法で一気に薙ぎ倒していた。
流石は先輩冒険者といったところだ。
それからも俺は夢中で戦った。
足りない身体能力を目でカバーしながら、必死で応戦した。
そして気が付くと、動いている魔薬草はもう一本も無くなった。
「はぁ、、はぁ、、終わった…のか?」
「みたいね…」
テトラが、ふうっと一つ息を吐く。
初の魔物狩りで大分体力を使ったが、それはテトラも同じのようだった。
「今回は結構数が多かったわね。いつもは五日くらいかかるんだけど。」
ぐったりとした魔薬草を、根元から切り取りながら会話を続ける。
「なるほどな。普通はこんなに大変なクエストじゃないのか。」
「そうよ。まぁ初めてにしては結構頑張った方だったんじゃない?足で纏いにはならなかったわよ。」
テトラは、イメージ通りのツンデレな反応を見せる。
魔薬草を全部獲り終えた俺達は、暗くなる前に帰路に着いた。
夜になると、今の比じゃないくらいに魔物が湧き上がるらしい。
幸い、魔薬草はそこまで大きくないので、普通に抱えて運べた。
街に戻った後、ギルドのすぐ隣にある解体舎へ、狩り獲った魔薬草を運び込んだ。
そこには、ガタイの良い豪快そうな男性が腕を組み、堂々と仁王立ちしていた。
「おじさん、解体お願い!」
「お、テトラちゃん!今日はまた大量に…ん?そこの坊主は?」
「紹介するわ、私のパーティーメンバー、レオよ。」
「どうも初めまして、イサハヤ レオです。」
「おぉ、テトラちゃんにも仲間が出来たのか!俺はここで魔物の解体をやってるゲルマってもんだ、よろしくな!」
ゲルマさんが口角を大きく上げ、歯でニカッと笑う。
「じゃ、早速取り掛かろうとするかな。」
「お願いね。」
「お願いします。」
俺達はゲルマさんに魔薬草を任せて、解体舎を後にする。




