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2.妹はプレイヤー

現世界。玲御の葬儀が終わった後、


(はぁ、結局葬儀中は涙出なかったなぁ。)


琥珀の妹である(なぎ)は、一人家の二階ベランダで考え事をしていた。


(小っちゃい頃は仲良かったのに、最近はやけに喧嘩が増えてたな。)


喧嘩する程仲が良いって、散々周りから言われてきたけど、私からすると兄妹仲は最悪だった。

正直言って、これで無駄に喧嘩しなくて済むと思うと、少し清々した気持ちもある。

それなのに何故か、兄が居なくなって(わだかま)りが解けたはずなのに、新しくできた大きな何かが心にぽっかりと穴を開けているようだった。


そうやって胸に手を当てていると突然、キィーンと耳を(つんざ)くような金属音が脳内に響き渡る。


(何、、これ…!!)


激しい頭痛がして、私は堪らず頭を強く抱え込む。

しばらくすると徐々に音は止んでいき、不気味なほどの静けさが辺りを包んだ。

すると突如、その静寂を突き破るように急遽(けたたま)しいサイレンが鳴り、それとほぼ同時に自室のドアが開かれた。


「凪!!大丈夫!?」


「私は大丈夫。さっきの何だったの?」


「分からないけど、普通じゃないわよね。」


外を見ると近所の家々も騒がしくなっていて、只事では無さそうだった。

落ち着いて情報を得ようとしてテレビをつけると、緊急ニュースで番組が埋め尽くされていて、少なくともこの現象は日本全国で起きているようだった。


「え、あれ何!?」


すると突然、お母さんが家の下を見て言い放つ。

驚いて私も覗き込むと、なんと道の真ん中に亀裂が入っていた。

ふと空を見上げると、そこにも大きな亀裂がジワジワと広がっていく。

その瞬間、二つの亀裂が一気に裂けていき、空間が弾けて割れた。

そんなあまりにも現実離れした現象に唖然とし、その割れ目に釘付けになっていると、突如緑色の手のようなものが割れ目の縁を掴み、何かが這い出てきた。

よく見ると、全身緑色にの体につり上がった目、下にはボロボロの布切れを巻いて右手にダガーナイフを持っていた。

その姿は、ファンタジーなどに出てくるゴブリンそのものだった。


兄の影響でアニメをよく見ている隠れアニオタの私は、特にファンタジー系が好きで毎日漁るように見ていたから、いつかは異世界に行ってみたいと思っていた。当たり前だが、ゴブリンやらの魔物なんて現実には居ないと思っていた。

それでも、その当たり前が今目の前で壊された。


数多のゴブリンが割れ目を飛び越え、それだけに留まらずオークやワイバーンなど多種多様な魔物が溢れ出る。

次の瞬間、一体のオークが手元の棍棒を大きく一振りし、隣の家のブロック塀を豪快に砕いた。

するとそれを皮切りにして、全ての魔物達が一斉に町中の家という家を破壊していく。

割れ目が現れてから一瞬の間に町は火の海と化し、辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


「何が…起きてるの……」


母はその光景に唖然とし、膝から崩れ落ちる。

もちろん我が家も例外ではなく、オークの容赦無い一撃で、外壁が粉々に砕けて大きな穴が開く。

そこから3匹ほどのグールが家の中に入ってきた。


「お母さん立って!!やばいって!!」


私は母と逃げようとするが、足が空くんでいるのかなかなか立ち上がってくれない。


バゴォォン!!!


そうこうしている内に二階のドアが勢い良く破られ、グール達が我先にと流れ込んでくる。


「グフゥ…フゥ……」


肉々しい肌に人とよく似た歯がズラリと生えていて、口まわりにはべっとりと鮮血が塗りたくられている。たぶん既に何人か食べているのだろう。

アニメとは比べ物にならない程の恐ろしい容姿に、私も思わず足に力が入らなくなってしまった。


「助けて、、お兄ちゃ…」


あまりの恐怖から兄に助けを求めようとしたが、途中で気付いた。

もう兄は居ないんだと、その時初めて実感が湧いた。

逃げることも立ち向かうことも出来ず、ただ貪られる。

そんな言い表せない絶望の中、私はただ襲われ食われるのを待っている事しか出来ない。


とその瞬間、とうとう一匹のグールがヨダレを垂らしながら飛び上がる。


「凪!!」


鋭い爪が喉元を搔き切ろうとしたその時、母が間一髪で私とグールの間に割って入った。

次の瞬間、無惨にも母の首がグールによって引き裂かれる。

肉を大きく削がれた首は、頭の重さに耐えきれず根元からブチッと千切れてしまう。


「え、……お母…さん……?」


突然の事で頭が回らない。

目の前で母の亡骸がグールに囲まれ、周りに広がる血の匂いと血肉が喰いちぎられていく音に吐きそうになる。

しかし、貪欲なこいつらは母を中途半端に食べ残し、ぐるりとこちらを向いた。

そして、余裕を感じさせるゆっくりとした歩みで近付いてくる。

私はもはや抵抗する気力も無かった。

グールは腕を持ち上げ、母を殺したその爪を容赦なく振り下ろす。

突如その時、ガキンッと目の前で何かがグールの攻撃を弾き飛ばした。


(……!!)


驚いてそこに目をやると、幾つもの六角形のガラスのようなものが球状に私を覆っていた。


「何、これ?」


すると突然、目の前に文字が浮き上がる。


―――


        覚醒条件を満たしました

      プレイヤーとして覚醒しますか?


         はい    いいえ


―――


まるでゲーム画面のような文字に訳が分からないでいると、いつの間にか自分の手が勝手に"はい"を押していた。


―――


         覚醒の意思を確認

   これより身体をプレイヤーとして再構築します


           ロード中…


―――


その瞬間、全身が眩い光に包まれる。


―――


          身体強化 完了


         魔力の最適化 完了


       システムのダウンロード 完了


―――


徐々に光は弱まっていき、その中で私の意識も落ちかけていた。


(やばい…意識が……)


視界はどんどん暗くなっていき、私はそのまま地面に崩れ落ちる。

そして無防備な状態の私に、グール達が再び近付いてきていた。

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