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第10話 海辺で初仕事

「というわけで、わたしは今、ルジット地方の海岸の村、ローヤンにきておりまーす」


 配信三回目。青い空の下、延々と続く白い砂浜の上で、わたしは笑顔で手を振っている。

 馬車を使いジッレの街から西に二日進んだ先にある漁村だ。


「みてください、この海の綺麗さ! 青い海が視界いっぱいに広がっていまーす」

 ムルルの前から身体をずらすとボードに映るのは美しい海。

 遠浅の海が西にむかって延々と広がっている。


:海岸線なっが! 九十九里浜かよ

:グレートバリアリーフとか出て来んのか関東民

:行ったことねぇし。引きこもりバカにすんな

:砂浜は白いな。石英系か珊瑚系か?


 チャットも賑わっている。やっぱり観光地っぽくてテンション上がるよね!

 こういうのをしたかったの私は! さて、次の仕掛けいってみよう!

 ボードを横目にみながらブーツを脱いで素足になり、革鎧を脱いでは砂浜に放り投げていく。

 ムルルには足元だけうつすようにいってある。


「こーんな美しい海でわたしがすることといえばー?」


 ムルルが海を映している間に準備を整えたわたしはリスナーに問いかける。


:まさかの?

:水着か!

:まさか配信二回目にしてサービス回なのか?

:仕事どうした、でも遊びも大事だよね!

:準備は出来ているぜ!


 チャットはにわかに色めきたつ。みんな正直だねー。

 予想通りの反応に内心ほくそ笑みながら場所を移動し、ムルルに合図を送る。

 ムルルが準備ができたわたし“達“の方に向き直った。

 ボードに映ったのは小麦色に焼けた健康的な裸体。


:ちょぉぉぉい!

:なんで半裸のおっさんなんだよ!

:サービスなんてない、わかっていたはずなのに……!


 組員達は阿鼻叫喚である。

 というかムルルアップで映したでしょ。あんまり登録者を減らす行為はやめてくれないかな。

 とはいえそこは訓練された組員。嘆きつつも引っかかった事に喜んでいる。

 

:それにしても、なにげにサユ姐の初生足綺麗じゃね?

:正直期待以上、ショーパンから伸びる長い足たまらん

:運動してたんだっけ。長いけど筋肉もついているよな

:バストも過去一露出してるもんな

:違うだろ、おっp

:それ以上はやめとけ、サユ姐がキレる


 ん、んー。

 今の私は鎧の下の姿、ショートパンツにシャツ姿。暑いので腕まくりして前も開けている。

 最初からサービスしすぎ? でも人前で着替えられなかったし。

 確かに我ながら美脚だとは思うんだけど、大勢から見られると……ムズムズする。

 うー、身持ちの堅い女としては複雑なところだ。


 よし、とにかく紹介をはじめていこう!


「漁師のシゲさん、そしてグリムガードのアルさんとゴルドさん、ピアちゃん。この四人でこれから漁をします。よろしくねー!」


「おう、なんで仕切っているのか分からねぇが、まあ頼まぁ」

「うーす」

「……よろしく」

「がんばろーねー」


 いかにも漁師といったシゲさんを筆頭に、ハーフパンツにパーカーっぽいものを着た細マッチョ黒髪のアルさん、厳つい全身鎧を着た刈り上げのゴルドさん、桃髪ショートカットのピアちゃんが手をあげて応える。ゴルドさん暑くない?


 ムルルがピアちゃんをアップにするとチャットが湧いた。


:ロリ巨乳だ!

:小動物系アイドルを投入してきたかー

神333:素足チュニカ……いいね

:あざとい、さすが姐さんあざとい


 あざといに決まってるじゃない、こちとら取れ高優先よ。これからも可愛い女の子がいたら積極的に抜いていく所存。

 ちなみにチャットが湧くほどボードが青く光るようにムルルが設定した。

 こういう細かいアップデートも大事だよね。


「よーし、じゃあ船に乗ってくれ」


 いつのまにかシゲさんが船から渡し板を砂浜につけていた。

 グリムガード四人がつぎつぎと乗っていく。


「きゃっ!」


「危ない!」


 先頭を登っていたピアちゃんが足を滑らせて落ちそうになるのを後ろのアルさんが抱き留めた。


「ご、ごめんなさいぃ」


「だいじょうぶ? ケガはない?」


 微笑むアルさんに目がハートマークのピアちゃん、ニコポって言うレベルじゃない。惚れっぽいのかな?

 ちょっと手持ち無沙汰だったのでボードに目を移す。


:おいこらイケメン! そこかわれ!

:代わってもピアちゃんは手に入らないぞ

:鏡みてこいよ

:ピンク髪は伏線だったか

:ムルル、いつまでうつしてんだよ、そんなに俺達の心をなぶりたいのか!


「仕方ないなー、ほらよー」


「ん?」


 ボードには中途半端な姿勢で所在なげに下を向いている女が……って私ぃ!


:サユ姐棒立ちw

:板の幅せまいもんな、そりゃ待つしかない

:声をかけられない小心者っぷりよ


「ちょっとムルル! 盗撮みたいなことしないでよ!」

「しかたないじゃんかー、お、ほら道が空いたぞー」


 前を向くとピアちゃん達が小走りに船に乗るところだった。めっちゃペコペコしている。

 あれ、私やっちゃった?


「よくやったな」


 後にいる鎧姿のゴルドさんにサムズアップされた。いや、私二人にどなってない。不可抗力だからね?


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