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第1話 異世界から配信始めまーす

初めましての方は初めまして。そうじゃない方はお久しぶりです。空館ソウです。

新作は配信ものです。日本ではない異世界からの配信ですね。

ではお楽しみください〜

「はいはーい、地球の皆さんこんサユ〜。わたしは蜂柑ほうかんサユカと申します! キャスティア所属の異世界配信者としてこのたびデビューしました〜」


 木漏れ日の眩しい森の入り口でわたし蜂柑サユカはカメラに向かって精一杯の笑顔を向けて両手を振っている。

滑り出しは上々。だが気を抜いてもいられない。配信者として成功しないと昇天してしまうからだ。

 現在の状況とそこに至る経緯については一旦わきに置いておきたい。なぜなら配信者としてチャットを追うのに忙しいから。


 

:初配信おめでと〜

:こんサユ

:ロケ地どこだ? みた感じ地中海の田舎っぽいけど

:日本語うまくね?

:めっちゃ美人さんやなー

:金髪翠眼で日本語配信ができる時点で勝ち確やろ

:どっちかっていうと瞳の色は紫じゃね? そしてまつげなげぇ

:異世界設定ということは日本ではないんだろうけどどこから配信しているんだ?

:サユカタソスタイル良いね、モデルみたい



 ありがとーと笑顔で答えつつ、改めてカメラの前でくるりと周り、ハチミツ色の髪をふわりと靡かせる。

 よし、チャットの流れも概ね良好。視聴者の数も右肩上がり。そりゃこの見た目ですもん、いいに決まってますよね知ってたー。


「どこから配信しているかっていうと、ヴィーアル大陸の西側にあるイベル王国、その中南部のルジット地方からです。地球の皆さんにとっては田舎かも知れないけど、ちょっと日差しが強い以外は温暖だし、水も綺麗だしいいところですよー。あ、観光名所もあったりするからそのうち紹介しますね〜」


 そう言いながら両手をバッと広げる。ぐるっとカメラに回ってもらい周囲の風景を見せていく。

 気分は○ステリーハンターだ。番組無くなってさみし。

 小川の水際に生える菖蒲のような草や丘の斜面につくられた麦畑、遠くに見える雪をいただいた青い山脈。そのふもとに見える鐘楼の群れ。

 平凡かも知れないけど雰囲気は伝わるだろう。


:おおーいい景色

;という設定ですねわかります。

:これ配信専用のドローン使ってるんか? 金かかってんなー

:なんで異世界から配信なんてしてるの?


「なぜ配信しているかって? ……まーざっくりいうと、神様の悪ふざけのために地球から拉致られてきたというのが真相です。だから知識も最低限しか教わってないんですよねー。はい説明終わり!」


 本をぱたんと閉じるように胸の前で両手を合わせる。

 話すと長くなるし、ここはリスナーの察し力に期待したい。

 大体異世界にいるって言えばみんな頭の中にテンプレの一つや二つは思い浮かぶはず。

 流れを大事にさせていただきたい。


:投げやりw

:設定雑すぎて草w

:知識も最低限って鬼か事務所……いや神様か

:格好もいかにも駆け出し冒険者っていう感じだけど人のいるところでもロールプレイできるん?

:観光地いいねー。遺跡とか行ってほしいわ


「お、勘のいい人がいますねー。はい、わたしサユカは駆け出しの冒険者、ヴィーアルでいうグリムガードなのです! だから配信の内容は冒険の日々が主になってきます。ちなみにチートなしのガチ配信です! 生の冒険者ライフをみなさまにお届け!」


 カメラに向けて指をぴんと立てピストルを撃つ仕草をする。我ながらノリノリだと思う。

 わたしはサービス精神旺盛なのだ。じゃなきゃ配信者なんてやってないし。


:チートないんかーい

:グリムガード……ドイツ?

:巡礼いってるからピルグリムのグリムじゃね?


「お、勘の良い方がいますねー。確かにグリムガードは別名巡礼護衛です。異世界言語は単語レベルで翻訳されているので、そういう意味かもしれませんねー。とはいえ、まだ登録してないんですけどね」


:無職じゃねーか

:やったー一緒だねサユカタソ

:お前は早くギルド(ハローワーク)行けw


 ぐっ、リスナーからのフレンドリーファイアが胸に響く。私もここに来る前は無職だったのでね……カサブタを剥がされているようで痛いのです。


「そ、そうですね、早く行かなきゃですねー。この世界ではギルドに当たる団体はベルゲルという巡礼者をサポートする施設なので、街に入ってベルゲルでグリムガードに登録するのが当面の目標にしたいと思います!」


 よろめきつつも体勢と笑顔を保ち解説をしていく。

 テンプレとは違って登録証は身分証にはならない。 

 この世界の身分証は聖別の護符。聖教会が洗礼の時に発行するものでアミュレットともよばれる。

 それを市民が礼拝の時に定期的に更新することで聖教会は更新料という名のお布施と信仰を得る。

 などなど。

「そしてこのカードがアミュレットです。不思議金属でできていてしおりっぽいですよね。わたしはすでに持っていますが、これをベルゲルに持っていけばグリムガードになれるわけです」

 そう言って胸の谷間に埋まっていた金属片を取り出す。

 ちょっとサービスショットを映してしまったかもだけどここはスルーしておこう。


:どこから出してるw

:かなりあるぞこれは

:なかなか面白そうな世界やん

:楽しみにしてる

:とりあえずどんな世界観?


「世界観? うーん」


 ちょっと迷うそぶりを見せてみる。

 ここはだんだん情報開示する方向にしよう。そのほうが面白いだろうし。


「うん、まずグリムガードですけど、この世界では巡礼が活発なんです。で、その巡礼者を狙って魔物が来るんです。だから直接護衛をしなくても、魔物を倒す人は巡礼者と巡礼路を守るということでグリムガードと呼ばれます」


:へー

:なんか普通の冒険者より社会的地位が高そうだな

:どうやって生計立ててるの?


「もちろん護衛、と言いたいところですが、実際は巡礼路整備という名のハンティングがメインです。巡礼路の魔物を倒した時にでる凝血石という赤い石をベルゲルで買い取ってもらいます。他には雑用や素材集めなんかもありますよ」


 まだそれくらいしか知らないんだけどね。


:大体テンプレ冒険者でいいっぽいな

:素材集めかー駆け出し冒険者といえば薬草集めだな、ノシ草

:雑草を生やすなw

:森の入り口にいるってことはこれから薬草を集めるん?

:そこは魔物狩りじゃね?

:スライム?

:オークに襲われる展開ある? 陵辱展開ktkr


 きてくれじゃねーわBANされるって。

 こちとら台本なしのガチ配信なのだ。そんな展開死んでも嫌だ。

 などと考えつつ世界観の説明をしつつチャットを見ているけど、反応は上々だ。

 やっぱり異世界ファンタジーといえば冒険者ですよね。みんなわかってるー。

 わたしがする配信の方針は『王道』だ。

 異世界配信なんて突拍子もないことをするのにさらに奇抜なことをするのはくどい。

 リスナーの需要を考えても間違っていないはずだ。


「正解は薬草集めでーす。魔物討伐はまた今度ですねー。そしてオークに襲われる展開って言った奴は地獄にお・ち・ろ⭐︎」


 そう言って笑顔で親指で首を掻っ切る動作をする。

 お約束ではあるけれどそんな展開は期待しないでほしい。乙女の貞操をなんだと思っているんだ。

 わたしは谷間は見せても軽い女じゃないのだ。 


:ごめんなさい

:さすが荒くれ業界の方。仕草に躊躇いがない。これからサユ姐さんと呼ばせてもらいます

:女冒険者って言ったらオークかゴブリンに拉致だろわかってねぇな

:美女がそのポーズを決めると凄みが……

:配信者は大体最初は猫かぶってるからな。いつ本性が現れるのか楽しみ

:やば、なんかに目覚めそう。サユ姐と呼ばせていただきます


 予想以上にたくさんのリスナーがこじらせ……もとい柔軟性が高いみたい。


「わかってくれて嬉しいです。でもサユ姐呼びはやめてほしいかな? ということで、これから森へと入っていきます。え? 薬草の名前?」


 コメントにあった質問に目が止まる。確かに名前は知らなかった。

 カメラ”本体”に向かって質問を投げかける。


「ね、ムルル、薬草の名前ってなんていうんだっけ?」


:うん?

:ムルルってなんぞ?


基本コメディの世界観なので、気軽に楽しんでいただけると幸いです。

しばらく毎日投稿しますので、よろしくお願いします!


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