【第3話:ようこそ、ダンジョン職場体験】
翌朝――。
「ここがダンジョンかぁ……」
目の前に広がるのは巨大な石造りの門。地響きを立てるほど重厚な扉の奥には、暗がりと風のうなりが待ち構えている。完全にRPGで見たやつだ、これ。
「緊張してる?」と隣でティアナが無邪気に笑う。
「え、そりゃまぁ……ちょっと……」
「大丈夫! 最初のフロアはまだ“勤務初日”レベルだから」
なにその“業務難易度スライド式”みたいなノリ!?
「でも一応、危険はあるから気をつけてね。たまに出るのよ、“働きすぎ幽霊”とか」
「それ完全に元社畜の怨霊でしょ!? 供養しようよ!!」
ダンジョンの内部は、意外にも整っていた。床はタイル、壁には魔石照明が灯り、気温も快適。ところどころに“休憩ベンチ”まで設置されてるのは感動すら覚える。
「ここって、誰が整備してるんですか?」
「ダンジョン管理局よ。公共事業」
「しっかりしてるううううう!!!」
しかし感動も束の間――
「ティアナさん、あれ……敵じゃないですか?」
前方に、巨大なスライムのようなものがずるずると這い寄ってくる。
「ふむ……あれは“ノルマ過多型スライム”ね」
「そんなピンポイントな名前ある!?」
「ストレスを感じてる人間にまとわりついて、魔力を吸い取る厄介なやつ。放っておくと“過労死エンチャント”が発動するわ」
「なんでそんな仕様にしたのおおおお!!」
「だから今日の訓練は“働きすぎるとどうなるか”を実感する回ね♪」
そんなのいらん!! 心理的にくるわ!!
――そしてその時だった。
「ちょっと待ってください」
後方から静かに歩いてきたのは、黒いスーツのような制服に身を包んだ、気品漂う少女だった。瞳は紅、手にはタブレット状の魔導具。
「あなたが新任の佐藤ユウトさんですね。初めまして。魔王軍監察局のネイ=ラドランです」
来た! ヒロイン③!! てかこの異世界、どんだけ人材豊富!?
「業務態度と適性を評価しに来ましたので、よろしくお願いします。なお、手抜きや過剰労働は減点対象です」
やりにくっ!!!!