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【第1話:異世界の労基、爆誕】

「……えーっと、つまり……会社ごと異世界に来たってことで合ってます?」


オフィスの中央で、俺――佐藤ユウトは目の前の角付き少女に向かって、できるだけ冷静に問いかけた。


「正確にはこの空間の一部が魔力転移に巻き込まれ、こちらの世界に“物理的に押し込まれた”状態です」


「ほう……なるほど……はい、意味わからん」


俺の脳内では、タイムカードを押した直後の記憶がループしていた。これは夢か? 現実か? 二度寝か?


「ちなみに、この空間内で“勤務”という行為が確認された場合、魔力の自然循環に悪影響を及ぼします」


「勤務するだけで環境破壊!? 社会の敵!?!?」


リリィ=アルマティカと名乗った少女は、俺の動揺を気にも留めず、書類のようなものを取り出した。しかも、羽ペン。ファンタジー感がすごい。


「ここに、労働意思の有無と業務形態をご記入ください。虚偽があった場合、あなたの魔力が破裂する可能性があります」


「つまりサボると死ぬ!?」


「いえ、嘘をつくと死にます。正直に“働く気ありません”と書けば生き残れます」


なんだその“働いたら死ぬ系”の新ジャンルは。


……待て、冷静になれ俺。ここでボケてる場合じゃない。


「……あの、他の人たちは?」


「現在、社内の各部署に点在中です。企画課の一名は“魔力暴走”で救護室、営業部の男性は異世界の現地民と名刺交換を試みていました」


「田村先輩が!? やりそう! てか名刺あんのか異世界に!?」


ツッコミの自分にツッコミたいが、どうにもならない。現実はいつも俺の常識の一歩上を行く。


「では、あなたはどちらの選択を? 働きますか? それとも、魔力の安定を優先し、しばらく休養を取りますか?」


リリィの目は冷たいけれど、どこかこちらの答えを試すようでもあった。


「……あの、休養って言ったら、その……怒られたりは……?」


「この世界では、“休まない者”が怒られます」


俺は思った。


この世界、ちょっとだけ……住みやすそうだ。


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