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「まあ、陛下に会われないのですか?」



シャナが驚いた顔で振り返った。

シャナは普段クールであまり感情が表に出る方ではない。わたしが8歳の頃から10年ほどわたしに仕えてくれているけれど、こんなに驚いた顔は数えるほどしか見たことがないくらい。

そんなシャナが驚いた顔をするほど、わたしがクルスとの予定をキャンセルすることは珍しいことだ。


「今日はアスランに会いたいと思って…どうかしら?」


「左様でございますか。よろしいと思います。念の為乳母のメリー夫人に連絡を入れておきますね」


すぐに平静さを取り戻したシャナが他のメイドに言伝を頼み、また準備に取り掛かる。




………そういえば、シャナって子供がいたわよね。

シャナは今26歳。20歳で結婚してすぐに出産していたはず……その間はシャナじゃないメイドが世話をしてくれていたものね。


シャナは子爵家の次女。乳母ではなく自分と旦那様と、ご両親と、って一般家庭のようにご家族で子育てをしていたと聞いたわ。

これは子育てについて知るチャンスよ!



わたしは子育てについてほとんど何も知らない。

わたしのお母様がわたしが産んだと同時に亡くなってしまったことが、大きい理由かしら。


お父様は愛妻家だったらしく、お母様を亡くした悲しみで仕事人間になってしまったらしい。

でも実際本当にその通りだと思う。だってお父様はほとんど屋敷にはいなくて、本当に数えるほどしか会話をしたことがない。

小さい頃は乳母や使用人たちが世話をしてくれたけれど、皆どこかよそよそしかった。

きっと、主人に嫌われている主人の娘をどう扱ったらいいかわからなかったのよね…


そんなこんなで、親子愛にとことん疎いのね、わたしは。それがわかったら、まずは知るところから始めましょう!



「ねえシャナ、子育てってどんな感じかしら?」


準備をしているシャナに声をかける。


「どんな感じ、とは?」


シャナは手を止めてわたしを振り返る。



「その、例えば、産まれたての時ってどんなことをしていたの?」


「ああ、私には乳母ではなく自分の乳をあげておりましたので、四六時中息子と一緒におりました。乳をあげたり、下着を交換したり、泣いたら抱っこしてあやしたり…とにかく出産してから半年くらいはつきっきりでした」


「まあ、そうなの。例えば、教育的なことはどうなの?躾けというのかしら…?そういうのも自分でやったの?」


「夫や両親の力ももちろん借りましたが、基本的にはわたしが色々なことを教えたと思います。最初はどうしても母親と過ごす時間が長いですし、自然流れだったように思います」


「はあ〜なるほどねえ…それって一般的なのよね?」


「よほどの上位貴族でなければ一般的ではないかと思われます。市民の大半もこのような感じだと他のメイドから聞いたこともございます」


なるほど…

知識がなさすぎて、なるほど、という感想以外でてこないわ………!

どうするのがいいのかしら……!

頬杖をついて考え込むわたしを見て、



「あの、奥様、アスラン様におかれましては王位継承者ですから、乳母や城の教育係にお任せされても良いかと…」


シャナが遠慮がちに声をかけてきたが、わたしは強く首を左右に振った。


「いいえ、シャナ。それではだめなのよ…!」



おそらく、バカ王子になってしまうんだもの……!



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