コオロギ食はそんなにダメなのか?
まずお断りしておきますが、私はコオロギを食べたいとは思いません。
気持ち悪いからです。
それはそれとして、コオロギ食への否定論には頷きがたい内容も多いのでツッコミたいと思います。
まずタイでは養殖コオロギが市場に出回っており、それなりの歴史があるようです。
「コオロギ養殖のはなし フューチャーノート」というサイトによると“コンケン大学の昆虫学者によって、コオロギの養殖技術が確立されたことをきっかけに、タイでは1998年からコオロギの養殖が始まりました[1]。2011年時点でタイ国内にはコオロギ養殖農家が2万か所あり、1年間に7500トンの食用コオロギが生産されているそうです。”とあります。
従いまして、コオロギ食は人間にとって断固として拒否すべき類ではない事が分かります。
タガメなど、伝統的に昆虫食を続けてきたタイ人がコオロギを選んでいるのですから。
否定論の中には中国人が食べてこなかったからという意見がありますが、中国人を信頼しすぎではありませんかね?
なんせ刺身や冷やご飯を食べて来なかった人々なのですよ?
あてにならないのでは?
コオロギにはボツリヌス菌があるという意見もそうです。
まずボツリヌス菌は嫌気性菌です。
しかしコオロギは総計として好気性菌が多いという結果が出ています。
レポート元は「欧州食品安全機関 (EFSA)、新食品としてのヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)についてリスクプロファイル」です。
好気性菌が多いコオロギの消化器官内では、嫌気性菌であるボツリヌス菌は増殖しにくいと推測します。
因みに好気性嫌気性とは、酸素の有無で活動が左右される事を意味します。
好気性菌は概ね酸素のある環境を好み、嫌気性菌は基本的に酸素のない環境で活発となります。
つまり、コオロギの消化器官内は酸素が多い環境であるのでしょう。
一方、人間の腸は長く、比較的酸素のある小腸、酸素が少ない大腸というように嫌気性菌も多く生息しており、複雑な腸内フローラを形成しています。
とはいえこれだけではコオロギが安全だとは断定出来ません。
飼育環境によってはボツリヌス菌に汚染させる可能性もあるでしょう。
では、ボツリヌス菌はどこにいるのでしょう?
答えは土の中です。
つまりどこにでもいるという事です。
逆に言えば、飼育に土を用いなければボツリヌス菌汚染の危険性は下がります。
また、製品を真空パックにでもしない限り菌が増殖する環境にはなりません。
次に、加熱処理後も芽胞形成菌の生存が確認されるという危険性です。
ボツリヌス菌で説明しますが、ボツリヌス菌は100度の加熱では容易に死にません。
120度で4分以上の加熱をしないと死滅しないようです。
また、ボツリヌス菌が生み出す自然界最強とも称されるボツリヌス毒素は80度で30分、100度でも数分以上加熱しないと失活しないとの事。
なので不十分な加熱では芽胞形成菌が残り得ます。
と言いますか、加熱処理後とありますが、どの程度の加熱処理かが分かりません。
この危険性は、油で揚げる、フライパンで炒める程度の加熱処理しかされていないであろうタイの状況を調べれば十分でしょう。
タイで食されているコオロギで、どれだけの食中毒事故が起きているのかが分かれば危険性が計れます。
寄生虫がいる危険性。
ひろゆき氏がツイートしていましたが、「昔から食べられてるイナゴやざざ虫以外の虫には、謎の寄生虫や細菌や毒がある可能性があるので食べちゃダメです」と。
また、なめくじを食べて死亡したという記事を引用し、「人間が食べてない虫は、寄生虫や雑菌やアレルギーやら何が起こるかわからないので、食べちゃダメです」との事。
ひろゆき氏はフランス在住だったと思いますが、フランスではエスカルゴを食べていますよね?
エスカルゴは、つまりカタツムリです。
カタツムリは殻のあるナメクジと言っても過言ではない筈で、ナメクジが駄目ならエスカルゴも駄目な筈ですが、そうではない現実を見ればひろゆき氏の発言は間違いです。
また、「『外国で食べてる人がいる』も安全ではありません。日本人が、ガンジス川の水を飲むと病院送りになります」とありますが、インドの大臣がガンジス川の水を飲んで病院送りになった事件はどうお考えなのでしょう?
危険なレベルにあれば慣れた人でも危険であり、安全であれば慣れていなくても大丈夫だと考えるのが妥当です。
つまり安全な環境で飼育され、安全に調理されたエスカルゴは日本人が食べても大丈夫です。
それはコオロギでも同じ事です。
因みにナメクジを生食して死んだのは広東住血線虫が原因で、野生のカタツムリにもナメクジにも住んでいる可能性が高いので、触った後には必ず手を洗いましょう。
アレルギーの危険性はタンパク質だから当たり前ですね。
重金属類が生物濃縮される危険性ですが、これはコオロギに共食いの習性があるからでしょう。
これは餌にタンパク質が足りていないから起きるようです。
つまりタンパク質を十分に与えていれば、重金属が生物濃縮される危険もなくなります。
妊婦への危険性はタバコと同じではありませんか?
仮に危険性があるなら、妊娠中は食べなければいいだけです。
また、これもタイの状況を調べれば判明する筈です。
基本的に、危険だと訴える人はその証拠を出すべきだと考えます。
最後になりますが、私はコオロギ食に否定も肯定もしません。
気持ち悪いので私は食べないというだけです。
食べたい人は好きに食べたらよい。
しかし、研究や養殖事業に補助金が出るのには反対しません。
資格を満たすなら分け隔てなく補助すべきです。