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Case1―Scene0  ある主婦の場合

 梅雨も佳境に入り、その湿気にも慣れてきたその日、呉谷愛香はいつもより少し良い恰好をして、普段はあまり行かない百貨店まで足を延ばしていた。夫である光雄との、結婚十周年を祝う豪華なディナーを準備するためだ。その気分は、その日の珍しい晴れ間と共鳴していた。

 思い返すと、もう十年も経ったのかと愛香は不思議な気持ちになる。学生時代の同級生だった光雄と十数年ぶりに再会したは良いものの、その時には光雄は失職し、多額の借金も抱えていた。

 そのせいで恋仲になってからも結婚できるまでに色々とあったが、この人を支えられるのは自分しかいないと奮起し、新たに起業した夫を、どん底の暮らしの中で自分なりに精いっぱい支えてきたつもりだ。

 約三年前、事業がようやく軌道に乗り、やっと人並みの生活ができるようになったが、それでも贅沢はほとんどしなかった。

 だが、そんな日々がやっと報われるときが来た。来月、結婚十周年を記念して海外旅行に行こうと、光雄が誘ってくれたのだ。

 光雄がやっていたのが新型コロナウイルスの影響を受けにくいITの仕事であったことも大きかった。世界がコロナの猛威を乗り越えた今、やっと夫婦水入らずで羽を伸ばせる。

 両手に大きな紙袋を提げ、夢見心地で百貨店から出てきたそんな愛香の胸に、突然大きな穴が開いた。赤黒い血が勢いよく噴き出る。


 キャーーーーーー!!!


 といういくつもの叫び声がその周囲から聞こえてきた。だが、平和ボケした日本人たちはその場からすぐには逃げようとはしない。何なら、目の前で倒れるその女性に駆け寄る人達も多かった。

 その場にいる人間をさらに二人射殺して、彼はその場から離れた。




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