カバンから分かったこと
この事件は日本軍乙事件の逆という事になります。スプールアンスが所持していた米軍最重要軍事機密が日本軍の手に渡り、本人も捕虜になるからです。
スプールアンスが洋上に投げ捨てたカバン。
そこには米軍最重要機密事項が満載だった。
西欧と極東での作戦概要に触れていた。
まず「史上最大の作戦」は消えていた。
ノルマンディー上陸作戦がなくなったこと。
英国が独国傀儡となり消滅していた。
日本陸軍は第一次世界大戦に参戦していた為、欧州の地理に詳しい。
参謀参謀A「ブレスト港及びサン=ナゼール港が上陸地点」
参謀参謀B「この二港には巨大なUボートブンカーがある」
参謀参謀C「ロリアンだろう、第四次遣独艦が入港した」
だが上陸予定地はコート・ダジュールだった。
<正確には上陸はトゥーロン付近>
3.5km続く砂浜と坂の多い瀟洒な避暑地の街並みが続く。
大型火器の戦車/装甲車は階段の多い路地は通れない。
町に続くハイウェイはA8+N7+N85+N202+N204と5箇所だけだ。
背後のリュベロン地域圏自然公園は徒歩でしか踏破できない。
だが米軍としては日本に知られた以上場所を変更するだろう。
それはおそらくフランコ総統率いるスペインかもしれない。
枢軸国寄りの中立と連合国寄りの非交戦というコウモリ外交。
要害ジブラルタルを狙ってくるかもしれない。
米リバティ船は英国が独国の手に落ちてレンドリースを断念。
そのかわりに英国ではなく北アフリカに向かっていた。
北アフリカのエジプトのアレキサンドリアだ。
そこにはアトリー副首相の英国臨時政府がある。
アレキサンドリア港には続々と物資が積み上げられていた。
D-dayは1944年06月06日と予定されていた。
またアレキサンドリアの物資は別途アラビアのアデンに運ばれた。
ここから物資はアラビア海を介してインドのカラチへ輸送された。
カラチからディマプールへ、ディマプールからインパールへ。
インパールは日本ビルマ駐屯軍との最前線にあたる。
米国物資は最終的にインパールに積み上げられた。
英領インドはいまだ滅びず、である。
米軍の太平洋戦線はハワイとミッドウェー固守と決定していた。
ガダルカナルとニューギニアを取られて珊瑚海の制海権は日本にある。
もはや米国は東豪州タウンズビルに行くのも命がけだ。
ブリスベンには連合軍南西太平洋域本部があるのも分かった。
マッカーサーは米軍基地タウンズビルとここを行き来している。
ご丁寧にビルの場所まで書いてあった。
豪州にはM3中戦車1700台の供与が決まっているのも分かった。
M4中戦車は米軍は1台も回してはくれない、欧州で必要だからだ。
欧州ではタイガー戦車1輛にM4中戦車4輛が相手をしている。
ただでさえ数は不足しておりレンドリースに回す余裕がない。
日本陸軍が豪州上陸作戦に用意出来る戦車は100余台だ。
まさに数の暴力、米国と戦うという事はそう言う事だった。
日本軍はハワイ・ミッドウェー海戦とも北方より進撃した。
だが珊瑚海の制空制海権を得た今は、南方からの進撃も可能だ。
東豪州を得れば、さらに物資の補給も容易になる。
ニューカレドニア/ニューヘブリデスへの攻撃も容易になる。
日本の進撃履歴には南方からの進撃は一度も無い。
米国はアリューシャン列島までの4200km平方の索敵を密にした。
これだけの広大な海域をカバーするには膨大な兵力が必要だ。
米軍は総力を上げてハワイにある太平洋艦隊総司令部を守りに入った。
ここが落ちればもう米国本土まではなにも島がない。
日本海軍は無人の野を行くが如しである。
また米軍がラバウルでの戦闘を避けようとしている事もわかった。
ギルバート/マーシャル諸島を含めた作戦の立案計画もわかった。
作戦名はカートホイール作戦。
1943年06月20日がD-day(作戦開始日)だ。
1943年07月には週間空母が次々と就航する。
この作戦日を前後して戦力は飛躍的に増大する。
この作戦日が米国の大反攻作戦の口火となる筈だ。
1943年07月は正念場になるハズである。
以上がカバンに入っていた最高機密情報のあらましである。
だがすぐに翌日から暗号は切り替えられ読めなくなってしまった。
また日本の暗号が全部バレている事もわかった。
ミッドウェー海戦はバレていなかったがニミッツの勘は冴えていた。
験を担ぐ(例:天長節までに作戦を終了)のはよくある事。
これがニミッツにバレて、海軍記念日出航を読まれてしまった。
こんな事では日本はどんなに技術で上回っても意味が無い。
湊川の楠木正成をよく日本軍は引き合いに出す。
それは600年前の南北朝時代の故事ではないか?
こういう古色歴然/旧態依然な態勢ではいけない。
日本軍の作戦開始日はランダムになった。
次いで日本はアナログ暗号をやめてしまった。
コードトーカーとしてアイヌ語も使ってみた。
だがアナログはやがて破られる運命にある。
現に英国は独国のエニグマを破ってしまった。
組み合わせが151兆もあるのに、だ。
bombe開発者のチューリングは米国で開発を続けている。
<bombe:英国の暗号解読機>
彼は今、米国で人工知能AIの研究に没頭している。
AIならどんな暗号も解いてしまうだろう。
そこで日本はデジタル暗号に全面的に切り替えてきた。
復号にはハードウェア認証を使う。
パスワードカードによる時刻同期の使い捨て認証だ。
本部の中央電算装置と時刻で同期している。
セキュリティ対策は一定時間を過ぎると使えなくなる事だ。
部隊は手のひらサイズの復号カードを持っている。
デジタル暗号はアナログでは受信出来ない。
これで送られてくる暗号指令をデジタル復号機で平文に戻す。
もしこのハードウェア認証が敵の手に渡ったら?
それは1日の終わりに本部から送られてくる符丁が保障になる。
富士山麓オウム鳴く、人並みに奢れよ、といった語呂合わせだ。
前者は5の平方根、後者は3の平方根である。
米国人、ましてや日系二世でも「?」となるようにしてある。
答えられなければ電子的に復号が出来なくなる。
こうして日本軍の暗号は当時としては難攻不落となった。
日本は語呂合わせで暗証キーを確認する方法を取りました。イイクニ造ろう鎌倉幕府とか色々です。戦前なのでイイハコではないです。次回は豪州攻略(1/7):計画です




