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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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ミッドウェー(6/7):空母蒼龍炎上

蒼龍にも運命が迫っていました。レーダーもオペレーターも眼を光らせていましたがそれをかいくぐって米軍機は爆弾を投下したのです。

空母蒼龍は右舷後方の加賀と赤城の戦闘を注視出来る位置にあった。

味方空母への被弾!その光景はまさに悪夢であった。


加賀には何発当たったろうか?

応急防禦行動(ダメージコントロール)班がすぐ動き出していればいいが。


だがその悲惨な光景は一瞬だが、柳本艦長以下首脳陣を固まらせた。

「敵機直上!」「艦爆急降下!」


その声に我に返ると、敵艦爆がすでに突入体制に入っていた。

航海長はとっさに回避運動に入ったが遅かった。


最新鋭の射撃管制レーダーは完璧に敵機を捉えていた。

オペレーターは事象を完全に理解し把握していた。


何も引かない何も足さない、完璧な調律だ。

それでも何かが作用し、敵機は投擲態勢に入った。


当たるはずの十字砲火をかいくぐってくる。

運命がそこに作用していたとしか言いようがない。


副長小原中佐は直感した。

<これは当たる!>


対空砲火の猛威の中をかいくぐり、第一弾が米軍機より投下された。

その1000ポンド爆弾はスローモーションのように甲板中央に向かった。


第一弾は前部と中部リフト中間の左舷に命中した。

第二弾は前部リフトに命中、遅延信管により貫通し格納庫で爆発した。


この第一弾と第二弾はほぼ同着であり、逆かもしれなかった。


第三弾は後部リフト左舷側に命中した。

これは発艦準備中の九九艦爆18機の群の真っ只中であった。


飛行甲板員たちは全員が爆風で吹き飛ばされ、全員が戦死したようだ。

ダメコン要員がわらわらと防雷具甲板から飛行甲板に上がってきた。

だが火勢が強く、誘爆もあり、近づけなかった。


艦橋にいた主要幹部の軍服にはドライアイス噴霧器が付いていた。

灼熱を感知してマイナス79℃のドライアイスを5秒間噴出する。


内地での噴出試験では睫毛も眉毛も真っ白に凍り付いた。

あの時見学者は笑ったが、まさか本当に役に立つ日がくるとは。


肝いりの四層アクリル防弾ガラスもアメのように垂れ下がっていた。

三層まで溶解したが貫通はせず、耐え切ったようだ。


熱を感知して閉まる装甲シャッターも瞬速の爆炎には間に合わない。

柳本艦長「みんな、無事か!」


柳本艦長、小原副長以下軽いヤケドで済んだのは奇跡というしかない。

同じく爆炎を浴びた航空指揮所ではそうはいかなかった。


楠本飛行長は熱風で顔と両腕を焼かれながらも命令を下した。

「全艦一斉放水始め!」


両手の皮膚はペロリとむけて、顔は火傷で真っ赤に膨れ上がっていた。

そこを軍医に見つかり包帯で全身をぐるぐる巻きにされてしまった。


イソプロピルメチルフェノール+リドカイン+サリチル酸。

(殺菌剤+麻酔剤+抗炎症剤)を混ぜ合わせた戦場での万能薬だ。


戦時法による敵性特許権の取消・公開によるものだ。

敵国薬品を日本でも製造した。


それは米キップ社のパイロールであった。


楠本飛行長の命により、水圧全開でバルブが一斉に開かれた。

類焼を防ぐため、まだ燃えていない箇所に放水した。

蛋白泡(たんぱくあわ)消火薬剤も散布され鎮火は目前だ。


ドライアイスを濛々たる爆煙と炎に次々と投げ込む。

二酸化炭素がマイナス79℃で凍結したものがドライアイスだ。


これが熱源から熱を奪い、消火に必要な炭酸ガスに気化する。

そして噴霧散水で可燃性ベーパー(Vapor)をさらに冷やす。


熱源から輻射熱を奪い、再発火を防ぐ。

黒煙がみるみる白煙に色が変わってきた。


熱を奪われ、酸素が無くなり、放水と泡消火でとうとう鎮火した。

ここまで着弾爆発から5分、誘爆は無かった。


九九艦爆18機はもう海上投棄しか方法が無い。

甲板の滑車とワイヤを利用して機体を引っ掛け、海面に引き摺り下ろした。


第一弾、第二弾の格納庫火災も放水と泡消火、炭酸ガス消火で鎮火した。

ドライアイスは1200kgほどが爆炎に投げ入れられた。


炭酸ガスの気化熱は鎮火に劇的な効果を(もたら)した。

あとは燃え残った構造材を廃棄して、清浄化していく。


破孔はそれぞれが予備の桁材で溶接され、鉄板で密閉された。

仮設甲板が復旧するまでおよそ45分。


前部リフトは破壊され緊急復旧の見込みは無い。

しかし中部後部リフトは健在である。


レーダーは対空、洋上とも吹き飛んで跡形もない。

射撃統制レーダーのみ耐爆構造だったので難を逃れていた。


柳本艦長は軽症でまだ陣頭指揮を執っていた。

ジェット機も彗星改も損傷はなく、無事だったようだ。


レーダーポッドも懸下されたままで無事だった。

柳本「艦載レーダーが吹き飛ばされて無くなった代わりをやってもらう」


一方250kg爆弾を吊り下げた第一次攻撃隊は飛龍を飛び立っていた。

送り狼となって、逃げていく米軍機の後を密かにつけていく。


小林道雄大尉「よくも日本空母をコテンパンにやりゃあがったな!」

「今度こそ、てめえらの土手っ腹に穴空けてやるぜ」


戦果を確実にする為に空母1隻に集中攻撃する。

確実に1隻だけを大破沈没確実とするのである。


それはおそらくヨークタウンになるだろう。

珊瑚海海戦でメチャメチャにやられ、奇跡の復活を遂げた。


小林「だが、そんなのはまやかしだ」

応急修理はどこかにガタがきているものだ。


小林「2ヶ月掛かる修理を14日でやれば、どこかを諦めねばならん」

「そこに攻撃を集めれば、今度こそ転覆沈没間違いなし!」


一方、第二次攻撃隊が新兵器を搭載して発艦準備を行っていた。

満身創痍となった加賀、赤城、蒼龍では離艦準備が進んでいた。

柳本艦長は自死せず反撃に移ります。第一次攻撃隊はただ1隻ヨークタウンのみに攻撃を集中します。次回はミッドウェー(7/7):米空母炎上です

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