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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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ミッドウェー(4/7):空母加賀炎上

「戦争の霧」、それは、戦争倫理学や軍事論理学では語られない不確定要素。その瞬間に優劣を決めるのはなんと運次第でした。ミッドウェー海戦では日本軍に戦争の霧が掛かり、米軍に運が味方したのでした。

戦争には戦争の霧(Fog of War)という状態が生じる事がある。

情報が錯綜し混乱となり、予測不可能な状態が連続する。


霧で視程(見通し距離)が狭くなる事に例えたものだ。

作戦や個々の戦闘に見通しが立たなくなる瞬間だ。


日本軍側に今、「戦争の霧」が掛かっていた。

そしてその瞬間に勝敗を決めるのは「運」。


その運は米軍に味方していた。

堀直三「敵機直上!」「急降下!」


左舷側機銃座から二十五ミリ連装機銃が撃ち出された。

空母加賀には射撃管制レーダーはない。


その機銃の弾幕をかいくぐって米軍機が第一弾を投下。

第一弾は艦橋右舷前方海上にて爆発。


第二弾、第三弾と続き、全て海上至近弾であった。

岡田次作艦長は「次は当たる」と不吉な予感を感じた。


そして第四弾は右舷側後部リフト付近に命中した。


1000ポンド爆弾は飛行甲板を貫通、防禦甲板を破壊。

後部高角砲座の砲側で爆発し、積載砲弾60発が誘爆した、


上部格納庫内の航空機26機が被害を被った。

ここは飛行甲板真下の上部格納庫である。


燃料を満載した九九艦爆にも燃料が引火し爆発炎上し始めた。。

魚雷に換装した機体も外した爆弾も危険だ!


直ちにガソリンの火勢を弱める為の炭酸ガスが噴出された。

応急防禦行動(ダメージコントロール)班員がわらわらと集まってきた。


これは珊瑚海海戦での翔鶴(しょうかく)大火災の貴重な戦訓である。

応急防禦行動(ダメージコントロール)を軽視した為に大損害を被ってしまった。


急遽、職能のある兵員が集められて、技能訓練が行われた。

応急防禦行動(ダメージコントロール)班が結成された。


また上部格納庫も密閉型から開放型に変更された。

これは翔鶴(しょうかく)の密閉型上部格納庫の欠点を補う改装だ。


内部で爆発が起きると爆圧を逃がす場所がないのだ。

開放型は塩害の恐れや駐機の流出の懸念があった。


珊瑚海からミッドウェー海戦まで1ヶ月しか余裕がない。

それでも開放型に(こだわ)ったのはダメコン重視ゆえである。


応急防禦班員A「消火作業急げ!」

応急防禦班員B「機体を投棄しろ!」

応急防禦班員C「魚雷をリフターごと海に放り出せ!」


魚雷を換装した機体をそのまま海に投棄した。

弾薬も爆弾も台車共々海に投げ捨てた。


上部格納庫が開放型なのが幸いした。

もし密閉型のままだったら、火災で艦体が膨張大爆発していた。


いまはただ大火災で燃え続けているだけだ。

だが引火したガソリンを消火せねばならない。


応急防禦行動(ダメージコントロール)はさらに続く。

次々にダメコン要員がドライアイスを火元に投げ込む。


応急防禦班員A「蛋白泡(たんぱくあわ)消火薬剤散布!」

蛋白泡(たんぱくあわ)消火薬剤は牛の角や蹄などを微粉砕したものだ。


アルカリで加水分解した後に中和調整した粘液である。

これに第一鉄塩類を加え、泡の揮発を遅くする工夫も加えてある。


ジョボジョボドロドロ~ッ。

応急防禦班員B「うわ、臭いなコレ」


鹿の角の精力剤も臭いがこれもまた中々の強者である。

さらにガソリン供給管にも二酸化炭素が充填された。


真っ黒な煙を上げていた燃料火災は急に白い煙になった。

蛋白泡(たんぱくあわ)消火薬剤と炭酸ガスで火勢は急に弱まった。


延焼は徐々に収まり、20分後には鎮火した。

真っ赤に焼けた鉄材に放水し、急遽(きゅうきょ)冷却を図る。


だが急降下爆撃は続いていた。

第七弾は艦橋直前の甲板に着弾した。


運悪く、燃料補給車(5トン)が曳き出してあったものに直撃爆発した。

この爆砕の焔(BLEVE)が艦橋をなめ尽くした。


BLEVE現象とは沸騰液膨張蒸気爆発とも呼称する。

燃料はタンク内で液相で貯蔵されている。


爆弾が当たると急激な過熱で一気に燃料は蒸発、気相に変わる。

その圧力でタンクが破裂し、一気に燃料に引火する。


その破壊力は原子爆弾L11の約1/10と言われるぐらいである。

脱出の間もなく、艦長、副長以下、航海長全員が戦死。


艦橋とともに燃え上がった。

艦橋伝令「艦長戦死!副長戦死!主計長……」


伝令も事切れたのか、報告は途切れてしまった。

防弾ガラスもドライアイス消化器も役に立たなかった。


艦橋背後の指揮所にいた天谷飛行長は無傷だった。

発着艦指揮所は艦橋が盾になって爆風を防いでくれたのだ。


天谷「とうとうオレが最先任か」

空母の主要幹部が艦橋の中で全員焼け死んだのだ。


艦の指揮は飛行長のオレが執らねばならない。


その時、第九弾が前部飛行甲板中央に炸裂した。

左舷側対空砲火に被害があり、砲声が途絶えた。


さらに直後、艦橋右舷に至近弾が炸裂。

前部発電室を破壊し、全艦が停電した。


応急防禦班員C「非常用蓄電池に切り替え!」

ただちにバッテリー駆動に切り替わった。


だがこれは2時間しか持たない。

もうエレベーターを動かすだけの容量はなかった。


補修技術班がわらわらと集まってきた。

ダメコン班員が手に負えない場合の職工たちだ。


補修技術班A「ちくしょう!腕が鳴るぜ!」

補修技術班B「発電機室はメチャメチャだ」

補修技術班C「倉庫から予備を持ってこよう」


直ちに予備の発電機が倉庫から引っ張り出された。

ぶっ壊れた発電機は見るも無惨な有様である。


軸は曲がり、整流子は吹っ飛び、コイルはバラバラだ。

フランジスプレッダーを用いて、土台から引き剥がした。


補修技術班A「よし、設置に移れ」

補修技術班B「こんな事もあろうかと」

補修技術班C「予備を積んでいてよかった」


補修技術班は飛行甲板も修理した。

桁材は予備材で溶接し、爆発孔は鉄板で塞がれた。

その上に木材を敷いて、仮設甲板が蘇った。


補修技術班A「仮装甲板設置完了!」

補修技術班B「発電機設置完了!」

補修技術班C「全電気系統、復電します!」


被弾から30分後、復電しエレベーターも使用可能だ。

空母加賀は発着艦が可能なまでに回復した。


それを上空で見ていた米軍機はギョッとしていた。

<大破炎上中の日本空母の最後を見届ける>


そのはずだった米パイロットは目を白黒させていた。

さっきまで被弾して爆発炎上していた日本空母。


それがどうだ、黒煙が収まり白煙に変わったと思ったらこれだ。

でかい穴の周辺に日本人がわらわらと集まっていたのはわかった。


おそらくは君が代を斉唱して退艦するのだろうと思った。

今見ると仮装甲板が完成し、要撃の為の戦闘機が発艦している。


おかしいだろ?1000ポンド爆弾の直撃だぞ。

<1~4弾は500lb、5弾のみ1000lb爆弾>


どうして元の状態に復活できるのだ?

「ありえない、さっきまで瀕死の空母が!」


だがその考えは日本戦闘機の要撃で中断された。

この機は爆撃機(ドーントレス)戦闘機(ゼロファイター)にはかなわない。


怒りに燃えた日本戦闘機の追撃をかわし、帰還するしかない。

だが送り狼の日本機を米空母に導く訳にはいかない。


燃料の残量が気になるが、彼はミッドウェー島に向かった。

途中で不時着水してもミッドウェーならなんとかなるさ。


後に彼は近傍のクレ環礁にあるグリーン島に不時着する。

そこでやはり不時着していた日本人兵士と出会う。

だがそれはまた別の話になる。


米軍機は彼のように覚悟を決めた者だけでは無かった。

僚機のうち数機が米空母に向かって必死の逃避行に入ったのだ。


日本軍の米機動艦隊への攻撃が始まった。

空母加賀は正史と同じく4(5)発の爆弾を喰らってしまいます。しかし鎮火して戦線に戻ってきます。最大の原因は開放型格納庫の設定とダメコンの徹底でした。正史では大火災を鎮火出来ず発電機が破壊され全艦停電で放水ポンプも動きませんでした。日本軍の悪いところは発想もあり準備もしていたのに、いざ実践となると役に立たないところにあります。次回はミッドウェー(5/7):空母赤城炎上です

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