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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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ミッドウェー(1/7):地点記号AF

ミッドウェー海戦がいよいよ始まります。この勝敗を分けた第一のキーワード、それが地点記号AFでした。米軍諜報部がミッドウェーで真水が不足しているという偽情報で日本軍を引っ掛けてAFの意味をあぶり出そうとします。

日本海軍では一般暗号として「海軍暗号D」が使われていた。

これは海軍独特の暗号式で、コード式と呼ばれていた。


文章は暗号数字に割り当てられ、暗号書に従って暗号/復号化される。

これを米軍が解いたのは2つの偶然からであった。


①真珠湾攻撃の際、被弾墜落した機体から符丁を入手できた。

②豪州沖で撃沈された伊124潜より暗号書を入手できた。


この2つにより、日本軍が解読不可能とした「D暗号」は危機に晒された。

定期的に暗号書を改編される。

それゆえ数ヶ月でセキュリティは守られる筈だった。


だが日本海軍はこれを改編する作業を怠っていた。

これは連戦連勝により戦線が伸び切っていた事が原因だった。


拡大した最前線の駆逐艦・航空機にも暗号書はある。

その数はおよそ20万冊にも及ぶ膨大なモノになっていた。

それらの新旧暗号書の交換が困難だったからだ。


実践の作戦行動と無線の作戦支持の符丁解読もその間に進んだ。

符丁とはこの場合地点記号のことである。


例えば作戦命令に出る「R攻略部隊」とはなにか?


そのコードを含む作戦命令の後に「ラバウル空襲」があった。

その結果「R」がラバウルである事が分かったのだ。


こういった知的生産技術の累積により、暗号は暴かれていった。

この後数回にわたり「D暗号」は改変される。


ミッドウェー作戦が迫り、日本軍前線基地との通信は膨大な量となった。

つまり暗号解読の例文のオンパレードだ。


文字の組み合わせは例文が多ければ多いほど良い。

どういう仕組みで暗号化されるのかの理解を助けるからだ。


どうやら6月中旬~下旬に大きな作戦があることが分かってきた。


さらに日本軍攻略部隊司令部はあろう事か平文で機密を通信した。

こんな文章を「平文」で横須賀に送っている。


「6月中旬以降は当隊宛ての郵便物はミッドウェーに送られたし」


これを傍受したハワイの米太平洋艦隊司令部は色めき立った。

まさしくミッドウェー攻略を期しているとしか思えない。


しかし妖しい、妖しすぎる。

米情報部はにわかには信じなかった。


戦闘情報班A「これはワナだ!」

戦闘情報班B「こんな作戦機密を平文で打電するワケがない」

戦闘情報班C「もう一度探知情報を調べ直そう」


日本の緊張感の無さが米情報部を混乱させた笑えない話である。


その後、珊瑚海海戦前日に次期攻略作戦の暗号文を解読した。

ここに出てきたのが「AF」という地点記号であった。


さらに第二艦隊がサイパンに集結後、攻略部隊がAFに向かうと解読した。

AFとはいったいどの地点を表す符丁か?


米国統合参謀本部「攻撃目標はハワイ」

陸軍航空隊「攻撃目標はサンフランシスコ」

「いや、アラスカだ」「米本土西海岸」


米情報将校ホルムズ「ひとつ偽電で日本軍をワナに掛けましょう」

それは「ミッドウェーで真水が不足している」という偽電である。


日本軍はこれを傍受し「AFで水が不足している」と暗号にするだろう。

そうすればAFはミッドウェーだという事が確実になるというわけだ。


そこで諜報部は平文でハワイに打電した。

「ミッドウェーで真水が不足している」


それを日本のウェーク島守備隊が傍受していた。


米国諜報部の思惑が正しければ、直ちにAFの正体が暴かれる!

日本守備隊は「それは大変ですね」と英語の平文で打電した。

米諜報部「え?」


諜報員A「なんだよこれ?」

「日本側が引っ掛かってAFがどこか分かる筈だろ?」


「なんで(お仕事お疲れ様)みたいになってんだよ」

「ふざけやがって、チクショーメ(Sie ist ohne Ehre)」


米情報将校ホルムズ「貴様、独国人だな!」

諜報員A「え?あっ、ち、ちが……」


ホルムズ「取り押さえろ!」

どうやら英語で「恥知らずめ」と言おうとして母国語が出たらしい。


ホルムズ「米諜報部に、よりによって敵のスパイかよ」

ここは真珠湾の太平洋艦隊司令部の地下20mにある諜報部である。


「まったく恐ろしい世の中になったもんだ」


2週間後に暗号は組み替えられ、解読は不可能となった。

しかもやっと解読しても平文がおかしい。


米諜報部「アプンノ パイエ アン?」

「何語だよ、コレ」


それは日本版コードトーカー「アイヌ語」だった。


解読が出来ている間の地点記号はおおよそ分かっていた。

「A」「AO」「AOB」は確かにアリューシャン方面だった事は解読できていた。


では「AF」もアリューシャン方面なのだろうか?


現米空母は太平洋に5隻、大西洋に1隻が配備されている。

そのうち2隻はハワイ他で修理中で、戦力にはならない。


空母3隻で多方面に展開は出来なかった。

惜しむらくは空母レキシントンであった。


珊瑚海でレキシントンは沈没、ヨークタウンは大破であった。

特にヨークタウンは珊瑚海海戦での傷跡が酷いものだったのだ。


2発の直撃弾、3発の至近弾を喰らっていた。

直撃弾の1発は飛行甲板の下4層を貫き、艦底のボイラー3罐室を破壊した。


それでもヨークタウンは沈まず、速力24ノットを維持していた。

やがて這々の体で、ハワイの真珠湾に到達する。


これをドライドックに入れて72時間の突貫工事で修復出撃させた。

工事の電気溶接でホノルルが停電するほどであった。


結局AFがどこかは分からなかった。

暗号が解読できなければ、周辺情報の累積から推測するしかない。


米国は太平洋をおおまかに3つのエリアに分割していた。


ニミッツの太平洋戦域艦隊司令部はハワイの真珠湾にあった。

マッカーサーの南西太平洋戦域司令部は豪州ブリスベンにあった。

キングの南東太平洋地域戦域司令部はパナマのバルボアにあった。


AFは真珠湾の太平洋艦隊司令部に大いに関係があるのだろう。

ニミッツ以下首脳陣が真珠湾の司令部に集まっていた。


会議室には壁に大きな白地図が貼られている。

そこには様々な注釈がびっしりと書き込まれていた。


米太平洋艦隊長官ニミッツ大将は「ミッドウェーだ」と断言していった。

「我々は暗号解読に頼り過ぎ、状況証拠を見落としている」


「第二次ハワイ攻撃作戦に日本軍が出るのは間違いない」

「その為には経由地としてどうしてもミッドウェーの滑走路が欲しい」


ニミッツ提督はハワイとミッドウェーの間の環礁を指さした。

「フレンチフリゲート環礁のペロウス島は無人島だ」


「PBY哨戒機はここで強い電波を探知している」

「これは日本の潜水艦が遊弋している証拠だ」


1942年03月04日。

数度にわたる二式大艇によるハワイ攻撃(K作戦)が行われた。

日本軍はこの環礁を燃料補給基地にした形跡がある。


「その時は潜水艦が環礁で二式大艇に燃料を補給していた」

「今回もその潜水艦補給を使う気だ」


「真珠湾の強行偵察を二式大艇で行うだろう」

「今度こそ空母の所在地をあきらかにするという目論見だ」


「目標はこの空母機動艦隊か、あるいはミッドウェーか」

「その後にハワイに大軍で押し寄せる気なのだ」


米太平洋艦隊情報主任参謀レイトン中佐「それはわかります」

「しかし日時が分からない事には作戦行動に移れません」


ニミッツ「それも状況証拠から割り出せるのだ」

「そして出撃は5月27日」


「なぜならばその日は日本軍の「海軍記念日」だ」

「天佑を頼み(げん)(かつ)ぐのが日本人の習わしである」


「これ程の大作戦を平日に発するわけがない」

「意気揚々と出撃するならば、この日しかないのだ」


レイトン「余りにも荒唐無稽で根拠が希薄です」

ニミッツ「空振りでも万が一に備えるのだ」


ニミッツは候補生時代に東郷平八郎と会った事がある。

1905年05月の戦勝祝賀会を東京で行った時のことだ。


彼は東郷の胴上げに参加し、彼にテーブルに招かれて親しく会話した。

気さくに喋る東郷の英語は、流暢でよどみなかった。


この時日本海海戦戦勝日が海軍記念日になる話題が出た。

その日が05月27日だった事をニミッツは忘れなかった。


ニミッツ大将は太平洋の白地図になにやら鉛筆でラインを引いた。


ニミッツ「4650km……、速度20~30ノット……およそ8日間」

「そうすると6月5日にはミッドウェー付近に現れる」


レイトン「それは計画では無くバクチですな」

ニミッツ「そうとも、他に方法があるか?」


暗号はとうとう解けなかった。

もはや直感とインスピレーションに頼るほかにない。


米海軍太平洋艦隊司令長官発の作戦計画が決まった。

ニミッツの大ばくちといわれる作戦が始まった。


任務部隊(TF)16はエンタープライズ、ホーネットを基幹とする。

任務部隊(TF)17はヨークタウンを基幹としで緊急修理後に出発する。


作戦開始は5月28日と決まった。

AFの意味はとうとう見破られる事はありませんでしたが、ニミッツは周辺情報から日本海軍の作戦行動をあぶり出したのでした。次回はミッドウェー(2/7):奇襲作戦破れるです

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― 新着の感想 ―
[一言] 暗号解読合戦、見ていて楽しいです。 ニミッツの考察は見事ですが、日本海軍の攻勢にどこまで対応できるか、見ものです。 AFの真の意味は、座標と関連するのは間違いないでしょう。
2021/05/12 17:45 退会済み
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