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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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帯域精製法(1/2)

帯域精製法とはぶっちゃけトランジスタを作る方法です。世界的にはノイズ研究所が着手しますが1942年シュックレー博士は徴用され研究所を離れてしまいます。この間にソ連の物理/電気学者のロシェフがレニングラード包囲戦を脱出して(正史ではレニングラードで餓死)日本で研究を継続してTRを実用化します。

真空管は確かに20世紀最大の発明であった。

だが人間の欲にはキリというモノがない。


もっと小さくもっと省エネにできないものか?

真空管を上回るモノが理論上予見されていた。


半導体だ。


理論的には半導体の増幅作用は予想されていた。

だが先に真空管が実用となり、半導体は二の足を踏んでいた。


実用にはとんでもない純度の半導体が必要だった。


理屈では帯域精製法(たいいきせいせいほう)という方法がある。

帯域精製法は半導体製造にはどうしても必要だ。


多くの研究が不純物の問題で挫折して来た。

その純度は99.999999999%という9が11並ぶ高純度だ。


古くから多くの化学者が研究を重ねてきた。

1902年仏の化学者ベルヌーイはベルヌーイ法を発明する。

ベルヌーイ法はルビーとサファイアを人工的に造る方法だ。


錬金術の時代から宝石を人工的に合成する事は長年の夢であった。

19世紀ルビーの構成物質は錆びたアルミ(Al2O3)である事は分かっていた。


不純物として錆びたクロム(酸化クロム)を添加すればサファイアになる。

いずれにせよ出発原料は微細粉末となった灰色のアルミナである。


大自然の中でサファイヤはゆっくりと地下で高温に晒される。

それとまったく同じ雰囲気を人為的に作り出すのだ。


この方法は火炎融解法と呼ばれ、単結晶析出の嚆矢となった。

人工サファイアの出現で、サファイアは希少価値を失う羽目になった。


次々に析出の技術は開発されていった。

技術のカギは温度勾配の制御にあった。


例えば5千年以上昔から使われている合金のハンダがある。

鉛と錫を重量比63:37で混合した合金として使われる。


融点は鉛は327.5度、錫は232度である。

しかし合金のハンダの融点は183度である事が分かっている。


鉛と錫の金属状態図にはナワバリがあると考えると判りやすい。

液相、固相、共存相を図で表したものが状態図(相図)なのだ。


ブリッジマン法は温度勾配を設けたルツボで単結晶を生成する方法。

チョクラルスキー法は1915年に偶然発見された単結晶を得る方法だ。


タンマン法は逆に加熱ではなく徐冷によって単結晶を得る方法だ。

キロプロス法(1926年)もまた徐冷によって単結晶を得る方法だ。


他にもステパノフ法(1938年)など、単結晶生成の歴史は続く。

1902~1938年はいわば「単結晶祭り」であった。


ソビエトの物理学者はオレク・ロシェフ。

半導体による鉱石検波器の研究に没頭していた。


その日々の中で、炭化ケイ素の鉱石に増幅作用があるのを発見。

しかし純度の高いゲルマニウムが得られず、研究は行き詰まっていた。


1924年発光ダイオードの基本構想を抱き、実験で確認した。

だがまたも純度の高いゲルマニウムが得られず、研究は頓挫していた。


ロショフ「純度99.999999999%のゲルマニウムさえ得られたら!」

「理屈はわかっているのに……」


原理も方法も間違ってはいない、正しいのだ。

当時の鉱業・冶金技術がついてこれないのだった。


1939年第二次世界大戦が始まる。

ロシェフが滞在するレニングラードも危うい。


悪名高いレニングラード包囲戦が始まろうとしていた。

包囲戦に弱い地勢は敵に包囲されるともう脱出出来ない。


包囲されれば脱出を企てる民間人は射殺と決まっている。

ロシェフ「今のうちにレニングラードを離れよう」


だが迫り来る独軍はインフラ(ガス・電気・水道)の破壊から始めた。

街を干上がらせて、籠城するロシア軍を市民もろとも日干しにする。


軍管区司令官ジェーコフは「鉄の規律」で脱走を禁じた。

「持ち場を離れれば政治士官ともいえど殺す」


そこで暗躍するのが白系ロシア人部隊「浅野部隊」である。

対ソ連の諜報・破壊工作を担当する関東軍別働隊だ。


当時の関東軍は満州国境でソ連軍と睨み合っていた。

そのソ連軍を攪乱するには規律統制を崩せば良い。


レニングラード包囲戦はうってつけの事件である。

部隊はロシア人であるから変装の必要もなかった。


編成は1917年満州に脱出移住した白系ロシア人から成る。

その多くはザバイカル・コサックの末裔であった。


彼らは密かにレニングラードに入り込み、市民の脱出を図った。

当時ナチスから逃れようとするユダヤ人で欧州は混乱していた。


リトアニアでは一人の日本人領事が悪戦苦闘していた。

彼の名は杉原千畝(すぎはらちうね)、独断でユダヤ人にビザを発給し続けた男だ。


ユダヤ人はそのビザを取得するため、カウナスに押し寄せていた。

その流れはシベリア~神戸へと続き、海外脱出となっていた。


ロシェフもまた浅野部隊に助けられシベリア鉄道で東進を企てていた。


満州行きのシベリア鉄道はユダヤ人でごった返していた。

そこで多くのユダヤ人が孤軍奮闘する杉原千畝の話をしている。


ロシェフは杉原領事とは何の面識もなかった。

だが噂話をするユダヤ人は喜色に溢れていた。


ユダヤ人A「ペンが折れるまでビザを発行し続ける」

ユダヤ人B「ペンが使えなくなると領事のサインをゴム印に」

ユダヤ人C「そしてビザの発給を止める事がなかった」


ソ連人のロシェフはその噂話に底知れぬ感動を覚えていた。

ロシア人は逆に射殺で問題を解決しようとしたのではなかったか?


レニングラード閉鎖は地獄の様な有様を呈している。

かたやこの日本人の人道的行為は何ということだ?


彼は脱出行の旅程の中で、日本国を見たくなった。

米国へではなく日本へ亡命してもいいのではないか?


だが列車には、ロシア秘密警察NKVDが見張っていた。

ユダヤ人に紛れて脱出するロシア人を逮捕するためだ。


この大勢の乗客の群衆から見分けられるはずがない。

と思っていたら現実は違った。


「Будь осторожен!」


あっという間に何人かのNKVDが一人の男を連行していった。

危なかった、ロシェフを見咎めたのではなかったのだ。


ロシェフ「どうなっているのか、野生の勘だとでもいうのか?」

「私もそのうち見咎められる時が来るのだろうか?」


モスクワで線を乗り継ぎする場所に日本領事館員がいた。

ユダヤ人に便宜を図り、旅路を容易くするアドバイザーだ。


やはりロシア人とユダヤ人はそれとなく分かるらしい。

日本領事館員もロシェフを見つけてこう言ったからだ。


日本領事館員「貴方はロシア人のかたですね」

ロシェフ「いいえ私はロシア人ではありません」


日本領事館員「脱国者は分かるのですよ、こちらへ」

館員についていくと駅の事務室に通された。


今、シベリア鉄道はモスクワ - ハバロフスク間は自由に乗車できる。

ハバロフスク - ナホトカ間が厳重に監視されているらしい。


そこでモスクワ-チタ間で東清鉄道に乗り換え、ハルピン下車を薦められた。

これなら南部支線で旅順に出られ、そこからは日本の定期船が出ている。


このルートを薦められ、一も二もなくロシェフは承諾した。

チェリャビンスク駅からシベリア鉄道で満州に脱出。


満州を南下して旅順に向かった。

1940年5月ロシェフは旅順から舞鶴へ向かう。


舞鶴から神戸へは列車に乗り換え福知山線に乗り継ぐ。

神戸にはユダヤ人共同体やシナゴーグ(ユダヤ教会堂)がある。


神戸からユダヤ人たちは米国行きの船に乗るのだ。

だがロシェフは米国には行かなかった。


日本人というものを知りたくなったのだ。

ロシェフ「みんなスギハラのような偉人なのだろうか」

浅野部隊は実在しますが満ソ国境での調略に限定でした。IF歴史ではソ連撹乱のために各地に散っている設定です。神戸にはユダヤ人のシナゴーグや共同体があり、米国移住のための中継基地の役割を果たしていました。次回は帯域精製法(2/2)です

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