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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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戦争計画オレンジ(2/2)

(IF歴史では)秋山真之は海軍大学に招聘されて研究成果を披露する事になった。極東の島国はどんな戦略を披露するのか?興味津々だった米国人のアゴは床に落っこちる事になる(顎が落ちる本来の意味は美味の意:ここでは驚愕の意)

余りの勤勉さに米海軍大学は「講義をしてみないか」と秋山を誘った。

かつて留学を断られた大学での講義である。

願ってもない事だった。


かれはそこで「日米戦争シミュレーション」を兵棋演習した。

今こそマハンの言う「日本人の戦略/戦術」を披露する時だ。


当日海軍大学校の講堂は満員御礼であった。

極東の小さな島国「日本」のシミュレーションに期待が広がる。


米高官A「小笠原諸島あたりで小競り合いになると思う」

米高官B「1827年初めて英国人が入植したからな」

米高官C「それまで日本人島民はいなかった」


コーヒー片手に気軽に拝聴しようという者がほとんどだった。

軽い気持ちでの講習なのでノートを取る者もいない。


秋山「それではみなさん、シミュレーションを始めます」


黒板には刻一刻と変化する戦況がグラフと共に描かれていった。

秋山「占領時期、兵站、人員/艦船の移動、戦争費用」


秋山「まずは主戦場はハワイになるでしょう」


「ブーッ!ゲホゲホッ」

見物人の米高官たちはコーヒーを吹いてしまった。


秋山「アリューシャン列島、ミクロネシアも視野にはいります」


その内容は米海軍の軍事機密「戦争計画」そのものだった。

米高官たちは密かにお互いに目配せした。


米高官A「なんで戦争計画を日本人が知ってるんだ」

米高官B「国防総省の地下大金庫に秘蔵されているはずだ」

米高官C「まさか日本人が自分で考え出したのでは?」


秋山真之がその機密に触れる事は絶対に無い。

彼が自前で勉強し、自力で編み出したに違いなかった。


兵棋演習なのだから、そういった並行進化も起こり得る。

同じ条件で同じ戦略/戦術を採るのだから。


だがその計画性は余りにも緻密で的確だった。

秋山「ハワイをハブ(拠点)とすると」


秋山「豪州、フィリピン等はスポークになります」

ハブ&スポーク?秋山は何を言っているのか?


黒板には次々に戦略(STRATEGY)の結果が示された。


STRATEGY:JPN FIRST STRIKE WINNER USA

STRATEGY:USA FIRST STRIKE WINNER USA

STRATEGY:PACIFIC MANEUVER WINNER USA

STRATEGY:TAIWAN THEATERWIDE WINNER USA

どのような戦略でも、米国が勝利した。

全戦で圧倒的戦力差により日本が全面降伏。

こうして兵棋演習は終わった。


秋山「いやあ、感服致しました」

「米国海軍には学ぶべき事が多いです」


秋山の講義が終わった後の教室は騒然となった。

もはや日本は「遅れたアジアの島国」ではなかった。


この事が米国の戦争計画を再考するきっかけとなってしまった。

日本の一挙手一投足をつぶさに研究する誘因を与えたのだ。


秋山は次の任地の英国に旅立っていった。

マハン「ここまで学ぶとは恐ろしい情熱だ」


1905年日露戦争は日本の勝利に終わった。

秋山真之は作戦担当参謀となっていた。


旅順港閉塞作戦ではステパン・マカロフを機雷で爆死させる。

日本海海戦ではバルチック艦隊を対馬沖で壊滅させた。


マハン「あの海軍戦術論の著者マカロフを葬るとは」

「秋山真之はおそろしい男に育ってしまった・・・・・・」


1906年米国はオレンジ計画を立案(策定は1924年)する。

これは米国対日本の戦争計画の図上演習である。


1919年立案された3つのプランは1つに絞られてきた。

米国側の米国対日本の戦争計画の図上演習は次のようなモノだった。


「日本はミクロネシアまでを占領するが兵站が伸び切り停止する」

「そこから米軍が島嶼伝いに反抗し、グアム・フィリピンを奪還」


第一にミクロネシアを制する者が太平洋戦争を制する。

米国はここでミクロネシアの重要性に気付いてしまった。


重要なのは、ハワイではなく、ミクロネシアなのだ。

豪州防衛と補給のためにはミクロネシアを押さえる事が必要だ。


またニュージーランドとニューカレドニアも同様である。

ミクロネシアを制する者が太平洋を制するのだ。


1923年日本でも、秋山真之の得た知識を元に、図上演習が続けられた。

日本側の日本対米国の戦争計画の図上演習は次のようなモノだった。


「兵站供給地として中国を確保し、潜水艦と航空機を島嶼沿いに配置」

「西進してくる米軍の戦力を削ぎ落とし、日本近海で決戦を挑む」


いわゆる「大艦巨砲主義」による艦隊決戦思想である。

まだ航空機は黎明期であり、戦艦の敵だとは見なされていない。


ミクロネシアが重要拠点なのは米国の計画と同じであった。

ソロモン諸島から先、フィジー&サモアを前哨線としていた。


結果的に日本は米国のオレンジ計画と同じ方策を練っていたのだ。

そこで重要なのは、日本側としてハワイ諸島をどうするかであった。


ハワイは太平洋の要害であることは間違いない。


1886年ハワイ王国カイウラニ王女は日本の依仁親王に嫁いでいる。

米自治領となっても、ハワイ王国はかろうじて命脈を保っている。


日本の皇族にハワイ王国の血脈が保たれている為、米国は躊躇していた。

そのためハワイ諸島は日米親近派により東西に分裂していた。


オアフ島以東は親米派、カウアイ島以西は親日派が大勢を占めていた。

カウアイ島以西にはミッドウェー、グアム島も含まれる。


オアフ島以東はカリフォルニアまで島嶼は中部太平洋にはなかった。



日本の海軍大学校では、米国同様に、戦争計画研究が続いていた。

日本の陸軍大学校で重要なのは現実問題として「中国とソ連」だった。


張作霖の権力拡大とシベリア出兵(無名の出師)問題である。


結局、7年間の海外出兵で得たモノは何も無かった。

バイカル湖までを占領地域にしておきながら領土取得も資源搾取もない。


戦術で勝ち、戦略で負ける日本兵法の悪い傾向である。

戦争は最後の外交手段であることを日本はよく思い知る事となった。


陸軍はその後大陸進出に傾倒し、太平洋方面に興味を失っていった。

海軍大学校の「戦争計画」にはこの事も研究し尽くされていた。


日本は島国で外地はすべて海の向こうで歩いて行く訳にはいかない。

戦地までの運搬は船舶であり、その手段は海軍がおこなうのだ。


陸軍「海軍は陸軍を敵地に安全に届ける義務を背負う」

海軍「海軍は陸軍の輸送トラックの運ちゃんではない」


たしかに駆逐艦輸送の最大積載量は20トン。

非武装民間貨物船の最大積載量は6000トン。


つまり陸軍専用の艦船がどうしても必要だった。

海軍に「おんぶにだっこ」させるには無理がある。


海軍は在外大使館から要請があれば出撃する義務を課せられていた

海外に住む日本人を保護する事が目的である。


その為の揚陸し駐屯する海軍陸戦隊がいる。

つまり海軍専用の兵団がどうしても必要だった。

陸軍に「おんぶにだっこ」させるには無理がある。


要するに、陸海軍は双方でいがみ合いながらお互いを必要としていたのだ。


海軍大学校がこのような事態に備えたのが「海上機動旅団」構想だ。

陸海軍とは別途の第三の軍隊(海兵隊)である。


これには揚陸の際、上空を防空する海兵隊航空団も含まれていた。

この時は構想だけだったが、後年真剣に検討され、最後には実現する。


「戦争計画」は決して無駄にはならない。

後年の第二次世界大戦がそれを証明することになる。

(IF歴史では)日本も海軍大学で戦争計画の鍛錬を始めた事になっていますが、(正史では)発案だけで継続には至りませんでした。ここでは後のマレー上陸作戦の回でのように資源/兵站確保を重点的に追求します。

マレー戦線での「空からおはぎが降ってくる」はこの戦争計画から生まれました(辻政信の仕業です)。

いよいよハワイを巡る葛藤が始まります。米国のハワイ準州が先か、日本・ハワイ連合が先か?また海上機動旅団も早期に結成の予感です(正史では44年から活躍)。次回はハワイ王族と日本の皇族の縁談です

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