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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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金星ゼロ戦(3/3)

とうとう金星エンジンが採用されます。栄エンジンでシフトを組んでいた陸海軍は大激怒です。軍民官の内、民間が軍に逆らったのです。陸軍は2kmの地上滑走路があり説得できたのですが、問題は海軍でした。護衛空母の飛行甲板は120mしかないのです。どうしてもカタパルトが必要でした。

堀越は資源物資のある外国に思いを馳せた。

フィリピンは米国領、オーストラリアは豪州(英国)領。


これらの鉱脈/鉱山のある外地はすべて敵性外地だ。

占領する前提で製造工程を組むことになる。


堀越「頼むぞ……」

彼は祈るような気持ちだった。


占領したらすぐ輸入の為の船団を組むことになる。


民間商船船団はだいたい貨物船12隻で船団を組んだ。

最低は4隻でも船団を組むが、これは例外中の例外である。


貨物船はカタパルト装備商船に変容していた。


火薬射出カタパルトを艦橋下に持つCAMシップだ。

<CAM:Catapult Aircraft Merchant Ship>


船首側第一貨物室を犠牲にしてカタパルトを装備する。

戦闘機1機を打ち出して護衛任務に就ける事が可能だった。


だが着艦は出来ず、着水してパイロットは救出、機体は使い捨て。

効率が悪すぎる上に、パイロットが溺死する事故もあった。


そこで護衛船団構想が浮かび上がった。

海防艦と空母を船団護衛に追加する案だ。


武装貨物船12隻、海防艦2隻、護衛空母1隻、合計15隻だ。

これを運用する商船船団40統に対して貨物船は480隻必要だ。


なんと海軍艦船は海防艦80隻、空母40隻が必要である。

戦時標準設計船の出番がとうとう回ってきた。


海上護衛総司令部を設立され、猛然と標準船が造船され始めた。

内地でも外地でも、造船造船また造船である。


独軍が仏国を降伏させた暁には仏領インドシナ(現ベトナム)も視野だ。

そこには巨大造船港湾都市ハイフォンがある。


堀越の危惧は取り越し苦労のいいほうで終わった。

航空機用エンジンには2種類ある。

液冷式と空冷式だ。


構造が複雑で工作が難しいV型液冷式エンジン。

構造が簡単で工作が単純な星形空冷式エンジン。


後者を選んだゆえ、エンジンは熱を持ちやすい。

その為には耐熱合金でもあるニッケル合金が必要だ。


熱に強い添加物質はこれまたニッケルコバルトである。

やはり戦時物資の輸入を絶やしてはならないのだ。


一方敵国の米国はどうだろうか?

米国は近国ブラジルにあるニッケル鉱山を供給先としている。


ブラジルから米国へは、大西洋航路を使い、通商破壊不可能である。

さらに生産過程で副産物としてコバルトも生産している。


世界最大の鉄鉱山カラジャス鉱山も隣接している。

堀越「米国は無限の供給源の上に座っている資源王国だ」


戦時となれば米国は物量にモノを言わせてくるだろう。

「デカい、重い、強い」の三拍子揃った重戦だ。


それに対抗するための軽戦は早くも設計段階で破綻しかけている。

日本は出来る限りではなく、それ以上やらねばならないのだ。


ここで金星を採用すれば概ね解決するのはわかっている。

だがそれを素直に受け入れられない自尊心があった。


堀越の設計者のプライドがジャマだったのだ。

プライド?じゃあ、そんなものは踏みにじれ!


堀越「栄を廃して金星を採用します!」

永野「すまない、よく決断してくれた」


永野は早速、陸・海軍上層部に連絡した。


陸軍A「やっぱりできませんだと?」

陸軍B「とんでもない決断だ」

陸軍C「制式採用を覆すとはなにごとだ」


陸軍はゼロ戦のために航空工廠を前倒しで1937年に設立していた。

陸軍航空機工場は全て名古屋の熱田と千種にあった。


流通担当A「ゼロ戦は繊細だから牛車で運ぶほうがいいよな」

流通担当B「専用列車を組んで陸送する方がいいぞ」

流通担当C「新式ディーゼル機関車なら大丈夫」


独国から輸入したディーゼルDC10。

これは国鉄DD10形として量産に入っていた。


このディーゼル機関車で静々と運べば良いのだ。

鉄路もなんと長さ60km余のロングレールである。


工場の移設や統合も考えたが、煩雑になるため断念。

代わりにディーゼル機関車による輸送流通の高速化を図っている。


栄破棄に陸軍も海軍もカンカンだった。


陸軍はハ25として「栄」を制式採用したばかりだった。

一式戦闘機「隼」のエンジンもハ25の予定だった。


それだけ信頼もあり、期待もされていたのだ。

それが何もかも吹き飛んでしまったのだった。


陸軍は石頭だが理屈は通った。

「重戦か……それもよかろう」


陸軍の滑走路は陸上で2kmほどあった。

重戦どんとこい!の心構えであった。


だが海軍はどうだろうか?


海軍には源田参謀という軍人がいた。

「寡をもって衆を制す」が彼の持論だ。


永野は源田を説得しなければならない。

彼が納得すれば、海軍も納得する。


彼の「軽戦の格闘性こそ勝敗を制する」は難敵だった。

永野は源田の元に向かった。


源田は渋い表情で永野を迎えた。

すでに栄脱落は源田の耳にも入っていた。


理屈は分かっていた、重戦は正しいのだ。

だが軍人が民間人に負けたのが気に入らない。


永野「軽戦は今はいいでしょう」

「しかし将来的に防弾/防漏は必要です」


源田「攻撃は最大の防禦であるから防弾も防漏もいらん」

「厳しい訓練で鍛え上げられた操縦技術で鎧袖一触だ」


ここで永野はすばやく合いの手を撃った。


永野「それは素晴らしい戦闘能力じゃないですか」

「優れたパイロットと優れたエンジン」


「海軍航空隊がうらやましい限りですよ」

「金星エンジンはまさに鬼に金棒ですな!」


源田参謀は少し照れくさそうにした。

持論が認められたと感じたらしい。


源田「金星か、またそれもよかろう」

「だが格闘性能優先だぞ」


源田は承知もしなかったが否定もしなかった。

彼もまた最終的には重戦だろうと予測はしていたのだ。


空母の飛行甲板は200m余、護衛空母なら120mしかなかった。

フル装備5トンにもなるだろう重戦にはカタパルトが必要だ。


3トンまでなら油圧式、ぎりぎり5トンまでいけるだろう。

だが5トンを射出するなら少なくとも6トンまで余裕が欲しい。


欲を言えば8トンは射出能力が欲しいところだ。


そうなると蒸気式しかないが、それは難しい問題だった。

源田は流体力学には詳しくないがそれぐらいは分かった。


永野には後々カタパルトについて言い含める必要があるだろう。

飛ばない飛行機はただの鉄の箱に過ぎない。


エンジンはともかくも一応の目安がついた。

次は機体の軽量化だ。


源田参謀が懸念した事は堀越も懸念していた。

やはり重戦のネックは重量なのだ。


これは肉抜き/肉盗みといわれる工法によった。

圧延加工機で軽量化のために部材に穴の部分を穿った。


その際に穴部分にカウンターシンクを施す。

加工硬化により強度が増すという塩梅(あんばい)である。


また複雑な加工部品には電気(スポット)溶接を船舶課から導入した。

こうして部品はさらに軽く、さらに強靱になった。


さらに問題は人力による機体組立の鋲打ちだ。


組み立て工程にも自動鋲打装置(オートマチックリベッター)が登場した。

治具を正確に当てて、正確に沈頭鋲を鋲接する為、ほぼ無音である。


この機械が一工場に40台あって自動稼働している。

これは主に翼面の鋲接に使われた。


胴体の深いところはスポット溶接機が対応した。

アルミは鋼の4倍の熱伝導率がある。


容易にスポット出来ない難物の素材だった。

酸化皮膜も難物で、これは大電流で対応した。


なお治具の位置決めと鋲の仮置きは人力によった。

こうして複雑な工程も一元化がなって管理下に置かれた。


同じ品質で同じ性能の金星ゼロ戦。

これも生産技術の躍進のおかげだった。


起案者は連合艦隊司令長官の山本五十六だ。


「米国の工業技術には目を見張るものがある」

「複雑な作業が自動工程に組み入れられておる」


「だが複雑な作業も要素に分解すれば、それは単作業の集合に過ぎない」

「それを要領よくやれるのは日本人の特技じゃあないか?」


そういって工場視察に来た山本司令官は笑った。

堀越は言われたとおりにしたのだった。


工場を説得して、米国風にラインを再構築した。

山本長官の「鶴の一声」だった。


こうして少々デカいゼロ戦が出来上がった。


名前はゼロ戦だが、当初の計画とは違っていた。

デカい、重い、航続距離が短い。


デカい分、後ろ折り畳み主翼で航空母艦での収容を増やした。

重い分は空母にあるカタパルト射出を標準とした。


1915年米軍艦ノースカロライナがカタパルトを装備している。

カタパルトは艦発促進装置として日本でも研究が進められた。


火薬式、油圧式、蒸気式と研究は英米で研究された。

英国は1942年のアークロイヤルから設備として取り付けられている。


日本も地上運用としてまず研究され、次に海上運用を見当した。

1942年からの運用目指して見当が重ねられているところである。


堀越「蒸気漏れをあえて許す英米の技術が信じられない……」

「こんな構造、オレだったら永遠に考え付かないだろう」


構造は現在のZipLock(ジップロック)の仕組みと似ている。

もともとは日本の生産日本社が開発したモノだった。


それを米国ZipLock社が最終的に製造/販売権を得たのだった。

つまり早い話が日本人が開発したモノなのだ。


カタパルトの前後にファスナーが付いていて開け閉めする。

時速200kmの速度で開け閉めするので軟鉄で出来ている。


使用頻度が激しいので軟鉄といえども疲弊する。

その交換頻度の研究が行われているのだった。


航続距離は増槽で稼ぐしかなかった。

爆弾搭載は止めて、特殊な増槽で燃料を稼いだ。


爆撃は九六式陸上攻撃機、九七式重爆撃機が担当する。

ゼロ戦はこの護衛が任務で爆弾は必要ない。


このゼロ戦が後の真珠湾攻撃~ミッドウェーで活躍するのだ。

正史では開戦前から南方資源に基づいたシーレーン防衛構想がありながら実行されるのは1943年11月という有様でした。海上護衛総司令部が設置された1943年は米国の通商破壊作戦が開始されており、もはや手遅れだったのです。船団は正史では商船4隻+旧式の巡洋戦艦1隻で組まれ、もはや夜店の標的でした。次回は彗星改です

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