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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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ノモンハンの男(2/6)

辻/白州のコンビは試製「ジロ車」を満州に持ち込みます。南京で鹵獲したSd Kfz251を複製(デュプリケイト)して兵員輸送車を大量生産、機械化部隊輸送に活躍します。正史では徒歩でしたので、その速度は格段に速くなりました。

白州は外地である豪州(オーストラリア)を訪れた。

当時、日本人は豪州では嫌われていた。


白州は英国の日本大使館を定宿にするほどの俊邁(しゅんまい)だ。

英語はネイティブで会話が出来た。


そこで米国系中国人と偽って入国、目的は観光である。

北豪の世界最大規模、ハマスレー鉄鉱山を見学した。


7つの鉱山が隣接する大規模鉄鉱山群は呆れるほど広かった。

白州「千層糕(ピンイン)みたいな模様だなあ」


地表に出ている鉄鉱石が層を成している。

それはバームクーヘンのような模様だった。


良質の鉄鉱石は、ぜひ日本へ輸入したいところである。

その為には豪州北部を収奪せねばならないだろう。


ガダルカナル、ポートモレスビー、ダーウィンの順だ。

今のところ、米国スクラップは輸入が途絶えても半年は持つ。


しかしその後は国内の脆い硫化鉄や満州の低品質な硅酸鉄しかない。

日鉄しかない研究所をもっと増やして研究しなければならない。


官庁の技術院を作ろうという動きはあり、実際に設立もした。

帰国後、辻参謀にその事について聞いてみた。


彼は首を横に振って、白州にこう応えたのだった。

辻「縦割りのセクショリズムに何が出来るか、何も出来んよ」


当時、有力な大学の研究所は文部省が握っていた。

農林、商工、鉄道省は自前の研究所を有していた。


それらが横の繋がりを持って研究すれば、技術院なぞ必要ない。

技術院?政府がやりたければどうぞ御勝手にという塩梅(あんばい)である。


白州「これではいけない」


「掛け声ばかりの科学復興なんぞ屁の足しにもならんでしょう」

「私が音頭を取って連携を取るよう仕掛けてみます」


白州は単身で、軍/官/民の研究所を行脚しはじめた。

辻がノモンハンに戻った時、半年がすでに過ぎていた。


情勢は悪化しており、もはや露軍とは一触即発の構えである。

半年前に頼んだ新型戦車はもう届いているのか?


新型は九七式中戦車というのだが、如何せん数が足りない。

新型は日中最前線優先で、満州は二の次であった。


辻「ナニ、たった4輛だと?ふざけんな」


辻参謀は九七式中戦車がたった4輛しか来ない事に憤慨した。

お得意の仮命令書を偽造して10輛取り寄せている。


さらに南満陸軍造兵廠配下の奉天鉄工所に改造依頼を出した。

足りない分は旧式戦車を改造して割り当てようというのだ。


八九式中戦車の前面装甲増強、砲塔交換等である。

奉天鉄工所は満州奉天市にあるチャレンジ魂旺盛な工場だ。


白州が遅ればせながら、満州にやって来たのはこの時だ。

国内の研究所の連携はほぼ上手く行っていた。


白州「上手くいってなかったら、ここにはいませんよ」

船から降ろされた均質鋼板の山を見ながら、白州は笑った。


実際は「弐キ参スケ」の強力な後ろ盾があったればこそだった。

東條英機や岸信介に勝てる類いの輩はそうそういない。


白州は日鉄の研究所から均質鋼板をすでに手際よく斡旋しておいた。

鉄工所の社長は驚くやら呆れるやら、言葉も出ない有様である。


白州は社長になにやら耳打ちしている。

鉄工所社長「溶接砲塔?電気溶接の設備はウチにはありませんよ」


辻参謀「そんな事もあろうかと」

「川崎造船から溶接設備を取り寄せておいたぞ」


鉄工所社長「でも溶接棒の組成は複雑です」

「ひとつ間違えると脆性破壊の原因になります」


白州「そんな事もあろうかと」

「角丸工業から溶接棒を取り寄せておいたぞ」

鉄工所社長「鍛錬期間に2ヶ月間欲しい」

辻参謀「1ヶ月で習得しろ」「ウソだ2ヶ月でいいよ」


こうして八九式中戦車が魔改造されて戦場に帰ってきた。

砲塔も長砲身の47mm戦車砲(初速750m/s)になって帰ってきた。


この砲塔が間に合ったのはまたもや、白州のおかげだった。

大阪造兵廠第一製造所に根回ししていたのである。


製造所では次世代/次々世代戦車の砲塔試作が研究中だった。

装薬と初速の関係を実験中だったのだ。


初速800m/sで薬莢が固着して取り出せなくなっていた。

最初は約350m/sだったのだから、大した進化である。


それを一時帰国していた白州が嗅ぎつけたのだった。

すぐに複製が奉天鉄工所で3門作られ、ノモンハンに間に合った。


九六式十五糎榴弾砲もソ連の122mm榴弾砲に対抗して配備された。

いかんせん野砲のため、自走による移動が出来なかった。


辻参謀「これ、自走砲に出来ないかなあ」

また辻参謀がすっとんきょうな事を言い出した。


辻/白州は第四陸軍技術研究所の技術本部総務部長を訪ねた。

辻参謀「コレコレのスペックと装備で自走砲が欲しいんだが」


部長「ああコレね」「ちょうどやろうと思っていたんだよ」

あきれる2人をよそに部長は満面の笑みを浮かべていた。


白州「おかしいのは我々だけではなかった」

辻「戦争がみんなを狂わせているのだよ」


お蔵入りになった九五式重戦車を魔改造する。

九六式十五糎榴弾砲を搭載するためである。


BMWのV12気筒を国産化した「べ式五五〇馬力発動機」を搭載している。

<ベ式:べ式のベはBMW((ベーエムヴェー)の頭文字>


やっと日本も500hpエンジンが視野に入ってきた。

これは川崎重工がライセンス契約を結び、生産している。


川崎重工「減速歯車の効率を上げれば750hpも夢ではありません」

「浸炭窒化処理で摺動面の摩滅と毀損を克服するのです」


技術本部では独国の自走砲の記事がいい刺激になったらしい。

そして「いつか日本でも」と思っていたらしい。


すでに改造図面も引いてあり、魔改造命令を今か今かと待っていたのだ。

これが「ジロ車」で3輛がノモンハンに送られてきた。


白州「やはりマッドサイエンティストは必要でしたね」

辻「間違ってるのが正しい、ソレも戦争だよ」


戦車重量は30トン(九五式重戦車は26トン)もあった。

貨物船のデッキクレーン限界数値(30トン)ギリギリだ。


戦車揚陸艦なら平気だが、この時代はまだ配備されていなかった。


ほかにソ連は火炎放射器戦車が確認されている。

日本も九五式軽戦車を改造して火炎放射戦車にしている。


装甲車も南京事件で鹵獲したSd Kfz251(装甲兵員輸送車)を複製した。

白州は英兵がカンガルーという車両を運用しているのを見ていた。


破壊された戦車や旧式自走砲の車体を借り、兵員輸送車にしたものだ。

カンガルー化|(改造)して乗員人数を増加したモノだった。


白州「Sd Kfz251も改造すれば20人は乗せられるでしょう」

辻「お前なんか最近、切れ味が出てきたよな」


これが後の一式半装軌装甲兵車ホハになるが、ここではまだ登場しない。


辻「まだまだ少ない、もっともっとだ」「戦いは数だよ」

「ソ連軍の兵力の諜報は間違っている」


「兵員500名、トラック80台、戦車5輌、対戦車砲12門というのは誤報だ」

「ソ連は火砲542門・戦車438輛・装甲車385輛だというぞ」


戦線維持と上層部は言う。

同数だからこそ成り立つ理論だ。


辻「日本は火砲も戦車も百以下しかないぞ、どうするんだコレ」

白州「九八式軽戦車 ケニなら間に合います」


辻/白州は南満陸軍造兵廠に向かった。

八九式中戦車の改造で実績がある。


南満陸軍造兵廠はもともと弾丸、砲弾、信管、火薬の製造工場だ。

だが辻/白州の奇案が通って戦車の新造と改造工場となっていた。


ちょうど海軍の連中が来て、何やら揉めていた。


海軍工廠「勝手に持ち出したアーク溶接設備を返してくれ」

辻「スマンスマン、すぐ返すからここは堪忍してくれ」

次回はノモンハンの男(3/6)です

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 辻ーんもこんな事だけやってるなら良いんだが。
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