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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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第一次世界大戦マルタ出征(2/3)

さっそく救援の要請が第二特務艦隊に下る。しかし地中海は大荒れで、艦船で駆けつけることは不可能だ。そこで史上初の飛行機による海難救助が始まる(IF歴史)

英国は1918年に向けて戦艦フューリアスを改造予定だった。

また極秘で英国初の航空母艦ハーミーズも計画されている。


これは1924年完成で、まだ影も形もない。

竣工予定は1918年だが日本が知り得るはずがなかった。


メスエン「一体どうなっているんだ?」

「これが並行進化というヤツか・・・・・・」


やはり英国と日本は海洋国として、発想が同じなのだ。

全世界が航空機時代へと舵を切ろうとしていた。


1917年第二特務艦隊が向かった地中海の動向はどうか?

地中海には48隻の様々な国の潜水艦がいた。


独U型9+UB型9+UC型13、墺SM14、土SM3の合計48隻だ。

<墺はオーストリア、土はトルコの漢字表記>


狭い地中海の「特に狭い海域」に彼らは待ち構えている。

英国貨物船によるアフリカ大陸への派兵を妨げるためだ。


当時、地中海を暴れ回る潜水艦は「海の新兵器」であった。

そこに日本の第二特務艦隊11隻が赴くことになっていた。


防護巡洋艦1、駆逐艦8、護衛空母1,水上機母艦1の11隻だ。

駆逐艦には多段式の対潜爆雷(デプス・チャージ)とソナーが装備されている。


ソナーは有線曳航式でまだ艦艇に付いていなかった。

実験艦が静止中の瀬戸内海では聴音は良好であった。


だが三角波の立つ地中海で曳航中となるとどうなるか。

開発中の未完成で実験中のモノをむりやり調達したのだ。


ぶっつけ本番だがやるしかない。

ソナーはパッシブで水中聴音し、敵を発見するとアクティブになる。


波の音、自艦のスクリュー音は思ったより大きいはずだ。

はたして理屈通りに地中海でも働くのだろうか?


1917年04月15日、さっそく緊急電が入った。

「マルタ東方130カイリにて貨物船1隻と護衛艦2隻が雷撃を受け沈没中」


240km彼方に救援艦隊が行くのには、どうしても3日間掛かった。

その間に海に投げ出された人たちは水死してしまうだろう。


折しも海は荒れて、三角波が立っていた。

航行を急ぐことはできない、救援艦も遭難してしまう。


そこで護衛空母の子犬ちゃん(パップの事)の出番だ。

航空機なら数時間で現場上空に着く。


佐藤(さとう)皐蔵(こうぞう)少将「全機、海難救助装備にて発艦せよ」

ただちに救命用具を魚雷架に吊下して、40機の航空機が現場に急行した。


救命装具は英王立救命艇協会から借り上げたものだった。

英国は1824年から人命救助のための協会を設立している。


水上機母艦にはカーチスモデルH1改が2機(分解状態)で艦載されていた。

組立てが終わり試運転をしたばかりだが、これも飛び立っていった。


4時間後、沈没現場の上空にやって来た。

多数に漂流物に混じって浮いているのは数千人の漂流者だった。


運送船カメロニア号には陸兵3300人が乗っていた。

パップは魚雷吊に救命艇1艘を吊下している。

ただちに20名乗り救命艇40艘を投下した。


これでも800人が助かるが全然足りなかった。

遅れて水上機母艦からの水上機が到着する。


水上機の800kg魚雷を吊り下げる魚雷架にはカゴが吊下されていた。

そこに10人ギュウギュウ詰めにしてマルタ島までピストン輸送だ。


8機の水上機が1回で80人を運んだ。

3300人を運ぶのに42回運ぶことになる。


当時青年将校だった山口多聞もこれはムリだろうと推察した。

山口「日本だけでは無理だ、英国の水上機はどうしたんだ?」


そのうち事態を理解した英国軍の水上機や水上艇も馳せ参じた。

だが日本以外の艦艇は事情を知っても、なかなかやって来ない。


独国のUボートは救援艦船を撃沈するからだ。

40機ほどの雑多な水上機が集まってきた。


英フェリクストウF.1もやって来た。

これは武装を外せば15人は乗れる。

開発途上のプロトタイプ3機だった。


日本艦上機40機、日本水上機8機、英飛行艇3機が集まった。

(40+8+3)機の水上機が1回で510人を運んだ。

3300人を運ぶのに7回で済んだ。


3日後、日本の救援艦がようやく到着しソナーで海域を探った。

聴音は無い、Uボートは去った後であった。


こうして第1回の救出作戦は奇異な形で終わった。

誰も考えたことのない航空機による救出。


英国は密かに航空母艦の増産と旧式戦艦の空母への改造を前倒しした。

この空飛ぶ機械「航空機」は予想外に「使える機械」なのだ。


今回の救出作戦でパイロットはヘトヘトになった。

そこで佐藤(さとう)皐蔵(こうぞう)少将は奇策をひねり出した。


「グライダーを引っ張っていって現場で投下するんだ」

「遭難者が乗り込んだ所で水上機が牽引して帰投する」


フロート付き水上グライダーを着水させて救助に使う腹である。

もし開発実用となれば世界初ということになろう。


だが第一次世界大戦時にそんな突拍子もない技術者がいるだろうか?

ところが世界は広いもので、連合軍側に奇異な天才がいた。


仏国ガブリエル・ヴォアザンという技術者である。

フロート付き水上グライダーという奇異な分野の開拓者だ。


彼に設計を頼み、英国にグライダー製作を依頼した。

グライダーなら1機につき40人は乗れる。


1回で40機の飛行機が牽引して40人×40機=1600人を救える。

3000人でも2回で救える計算になる。


1917年05月03日。

客船トランシルヴァニアは陸兵3000人、物資を満載して出港した。

目指すは対岸エジプトのアレクサンドリアである。


護衛の駆逐艦はソナーを曳航している。

パッシブで水中聴音中であった。


艦の蹴立てる波、スクリュー音、三角波の波頭。

潜水艦以外のノイズしか聞こえない。


だが微かに、ほんの微かにシュルシュルという音が聞こえる気がする。

そこで聴音員はすぐアクティブ・ソナーに切り替えた。

いよいよ対潜水艦戦が始まります。次回は第一次世界大戦マルタ出征(3/3)です

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