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これは恋にはなれない

作者: 伊崎てんり

穏やかな日常を書きたかった

平行線もいつかは交わるらしい。

かつて悪友だった谷崎はどこか頭のネジを外した狂人だった。

「平行線ってのは、交わってしまうものなんだよ」

やつは私に普段からは想像も出来ないかしこまった言い方でそうにうものだから、ふざけてるものだとばかり思って

「平行線なんて交わらなくていいよ。交わってしまったら平行線とは言わないんだから」

と少しかしこまって谷崎に合わせてふざけたことを言ってみたものだった。

するとそんな調子の私をちらりと見て

「美香は、テンプレすぎるんだよ。そんなんじゃ人を殺せない」

なんて笑うもんだから。

ああ、人を殺すか殺さないかを引き合いに出すあたりが谷崎らしいと妙に納得して、こいつはどこでこうなったかを考えてやる。

「人を殺す予定なんてないからいいんだよ」

人がめったに来ない階段にしては少し掃除されていて、でも完璧じゃないから隙間にほこりが挟まっている。

それをなんとなく見つめながら呆れて反論すれば

「はは、違いないね」

また、笑う声が聞こえる。

「ねえ、美香。人生経験として殺人は許されるかな」

「谷崎。死にたいの?」

「ばかいえ、ここは楽園だよ。幸せを享受しているこの谷崎が死にたがりなんて君は愚かなことを考える」

「そんな谷崎に朗報です。C組の絵梨ちゃんに彼氏出来たんだって」

「美香、言っていいことと悪いことがあるのを知ってるかい?」

「ええ、もちろん」

「賀田に彼氏が出来たことは悲報以外のなんでもないんだけど」

「知ってる。谷崎が変な気を起こさないように先回りして言ってあげてるの」

「賀田絵梨に恋愛感情を向けたことはないんだけどな」

「それも知ってる」

谷崎の愛は重苦しい。谷崎のそれは恋ではないから。

谷崎は気まぐれに人を溺愛し、捨てる。

人には恋だと思われてるようだかそれは違う。

「美香はなにも言わないんだね。なんで?」

「恋人が出来てもお構い無しに絵梨ちゃんを愛するんでしょう」

「そうだよ、恋人なんて脆いものよりも賀田には必要なものがある」

「その遠回しの自己愛どうにかなんないの」

「どうにもならんな、悪癖だから」

今日の谷崎はよく笑う。寝不足なのだろう。

「また、遊んでたの?」

「ちょっとした実験だよ、もうすぐ終わりにする」

「そ、まあいいや。あと5分でお昼休み終わるね」

この言葉は合図だ。

私は瑠奈ちゃんとお揃いで買った色つきリップを引き直す。

10秒目をつむって深呼吸をすれば、谷崎はもういない。

こんな毎日が私の高校生活で、日常だった。


私はどこにでもいる普通の高校生で、

谷崎もまたどこにでもいる変人だった。


谷崎は私に嘘はつかない。

私は何十個もの嘘をついているけど。


私は谷崎に溺愛されたもののひとつの例に過ぎない。

そこに意味なんてない。


わかってるけど嘘をついて欲しかったな。

大人になった今、谷崎の真意を少し感じ取れた気がした。

言葉は魔法だ。いつまでも残る。


平行線の話をしよう。

高校生のあのお昼の会話はどこまでも平行線だった。

いま、それは平行線ではなくなっているだろう。

平行線はいつか交わる。

そういった谷崎は私を未来ごと愛していた。

子供の頃は信じられなかったが

そして大人になっていく。

ありがとうございました。

意味不明と思った方、正解です。

ふんわりと書き上げました。


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