ジャングル問答
叶姉妹も恥じ入らせるゴージャズな鳥が飛び交い、派手な色の花が視界を埋め尽くす。忘れ去られた古代王国の石碑や神殿が濃緑の蔦のなかで息づいている。
仙太郎がいるのはジャングル――を真似した市営植物園の温室コーナーである。
澄花曰く、この古代遺跡には宝を手に入れるために必要な鍵があるらしい。
「でも、ここは人工のジャングルじゃないですか?」
「だから?」
「ここの古代遺跡は偽物ですよ」
「そのとおり」
「おかしいじゃないですか」
「古代遺跡が偽物だからって鍵まで偽物とは限らないでしょ? 伝説の宝物の鍵を隠すのにコンビニと古代遺跡、どっちのほうがそれっぽい?」
「古代遺跡です」
「なら、ここに鍵があってもいいじゃない」
「でも、偽物ですよ」
「だから?」
「偽物の古代遺跡に隠すなんて変じゃないですか」
「でも、古代遺跡よ。千円カットの床屋と古代遺跡、どっちのほうが宝物の鍵を隠すのにふさわしいと思う」
「そりゃ、古代遺跡ですよ」
「じゃあ、それでいいじゃない」
「でも、偽物ですよ」
「だから、なに?」
「おかしいじゃないですか。偽物の古代遺跡に隠された鍵だなんて」
青と赤と紫の鳥が二人の頭上でギャアと鳴いた。
「もっとふさわしい場所に隠すべきだって言いたいんです」
「じゃあ、きくけど、古代遺跡とトイザらス、宝の鍵を隠すならどっちのほうがふさわしい」
「なんだか騙されてるような気がしてきました」
「で、どっち?」
「そりゃあ、古代遺跡ですよ」
「じゃあ、いいじゃない」
「でも、偽物ですよ」
「だから、なに?」
「おかしいじゃないですか?」
「でも、あなただって宝の鍵を隠すなら古代遺跡がいいって言ってたでしょ? 古代遺跡と市民プール。どっちが宝の鍵を隠すのにいいと思う?」
「もちろん古代遺跡ですよ」
「でしょう? じゃあ、いいじゃない」
「でも、偽物ですよ」
「だから、なに?」
無益な問答の末、二人は宝の鍵――おみやげコーナーで売られていたマスコットの人形を手に入れた。腕が異常にひょろ長く全身緑の毛だらけで頭に大きな花が咲いていたが、まるで寄生植物に脳みそを乗っ取られた人間の成れの果てのようだった。
自分たちを宝へ導く鍵だと言われて、これを見せられた仙太郎は今回の宝探しについて、ますます胡散臭さを感じたのだった。




