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墓参り
緑深い市営墓地で仙太郎は汗だくになりながら、祖父と祖母の眠る墓を手入れした。雑草を全部抜き、玉砂利をきれいにならし、ぶっ倒れそうになったら、ポカリスエットを飲んで、また労働に励んだ。
墓をきれいにして、水をかけ、花を新しいものに変えて、煙草をひと箱、お供えものに置くと、仙太郎はクーラーボックスからビールを一缶取り出して、ぐびぐび飲んだ。
「あー、このために生きてる」
ビールはよく冷えていて、たまらなかった。
仙太郎は、少しだけだからね、と前置きして、墓石にビールをかけた。
二缶目のタブを起こしたとき、空から歌がきこえた。
明るくて、浮き浮きした、楽しい歌だ。
だが、何より、その歌はちょっとだけ温かかった。
仙太郎は空を見上げた。
海のように青い空を、☆のステッキを持ったペンギンが先頭に立ち、五線譜の音符や熱帯魚たちを連れて、遠い国へと旅立とうとしていた。
MUDABONE NOTEBOOK〈了〉




