プロローグ
お父さん、お母さん。ごめんなさい。先立つ不孝をお許しください。
特に問題を抱えていたわけではありません。貴方達の離婚が原因なわけでもありません。
ええ、全く。
子供ながらになんとなく冷めた夫婦関係だというのは理解していました。子ども時代から。
離婚後も何一つ変わらない同じ生活ですし、私も二十九歳、ショックを受けるようなお年頃でもありません。
理由を強いて上げるとすれば、『なんとなく』です。それ以外にありません。
私の養育にいくら要したかわかりませんが大学まで通ったのですから相当な金額なのは、分かっています。本当に親不孝ですよね。
私の貯金で少しでも損した分を埋めてください。足りればいいんですけど。
それから、遺書も何も残さずごめんなさい。遺書についてはある方が良いのか、無い方が良いのか判断に困るところです。事故ではなく自殺と判るから在る方が警察さん的には良いのでしょうが、お母さんたちはどうですか?
きっと、こんな理由で死んだと知れば立ち直れないでしょうね?ほんの数秒前まで死ぬ気なんてなかったのですから書きようもないのですが・・・・。
あと、それから地下鉄ご利用の皆様方。帰宅の邪魔をしてごめんなさい。また、人身事故か。と思って気に留めないでくださいね。この地下鉄ではあんまり聞かないですかね?
でも、朝の通勤ラッシュより時間帯はマシでしょ。あっ、理由ひとつあった。
これでようやく謝りに行ける。
地下鉄がプラットホームに停車したのと悲鳴が聞こえたのはほぼ同時だった。