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毒舌少女のために帰宅部辞めました  作者: 水埜アテルイ
第3章 あなたが輝く物語
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デートプラン

「デート、と聞いて連想するものは?」

「あー。遊園地とか水族館?」


 休み時間に真琴が話を振ってきた。

 彼はクラスメイトの三森流歌と付き合っている。

 彼らの進捗は全くわからんがそんなことを訊いてくるということはまだデートらしいことをしていないのだろう。


 ぱっと連想したのはその二つだった。デートしたことのない俺にはそれくらいしか思いつかない。というか訊く相手を間違えている。


「やっぱそれだよね。彗でも同じ事思うんだなぁ」

「おい、俺はデートと無縁みたいな言い方するな。悲しくなるだろ。事実だけど」

「ごめんごめん。で、どこがいいかな?」

「俺に訊かれてもなぁ。流歌には訊いたのか?」

「そんな難易度の高いことはできません」

「高い……のか?」

「当たり前だろ! デートに誘うということすら究極難易度なのに。『まだ行き先決まってないけどデートしない?』とか無理です。せめて場所を決めてからじゃないと理論的に不可」

「でもそういうのは二人で考える方が楽しいんじゃないのか? 流歌も喜ぶと思うぞ」

「他人事のように適当に言うべからず」

「他人事だぞ」

「お願いだぁ! 協力してくれぇ!」


 控えめでお淑やかな流歌と挑戦的でない真琴。進展がないことで彼は悩んでいると見た。

 このカップルを応援していないわけではないが口を突っ込む気は今まで無かった。でもいざ助けを求められたら手をさしのべたくなってしまった。真琴とは付き合いが長い。俺の中では彼が一番の友人だから。


「わかった。恋愛のスペシャリストっぽいやつに訊いてみる」

「そんな人、彗の周りにいたっけ。あ、なんか嫌な予感する」

「大丈夫だ、気のせいだ」


 俺はトイレに行くという口実で教室を出た。尿意など一切無いが俺はトイレに向かい、スマホを取り出して電話する。

 連絡先はもちろんあの女だ。


『はい、日羽です。どちら様ですか』

「彗です。着信者に俺の名前が表示されてなかったか?」

『死者、とだけ表示されてたからわからないわ』

「俺は死んだことになっているのかよ……最低でも生者にしろ」

『で、なに。私が電話したときは「隣の教室なんだから直に来いよ」ってあんたほざいてたけどこれは新手の皮肉?』

「あまり聞かれたくない内容だからだ」

『スピーカーで話していい?』

「お前は鬼か。とある男子を泣かせたいのか?」


 白奈情報によると薔薇園という空間がなくなってからアリナは教室にいることが多くなったようだ。それによく喋るようにもなったという。白奈や女子テニス部長の柊結梨や宮中蘭以外とも喋るようになったそうだ。

 

「恋愛のスペシャリストに質問があってだな。馬面覚えてるか?」

『あんたとよくいる、アレね』

「そう、アレだ。真琴が流歌をデートに誘いたいらしいんだが場所が決められないらしい。いい案はないか?」

『え、あいつって付き合ってんの? 確か私のこと好きなんじゃなかったっけ』

「過去形だ。お前にズタボロに言われてPTSDになったんだぞ。覚えてないか?」

『そ。でもそのデートスポットやらを私に訊いても無駄よ。私の性格わかってるでしょ』

「恋愛経験とかなさそうだもんなァ! だよなァ!」

『腹立つわね。ご自宅爆破するわよ。こういう話なら鶴の方がわかるんじゃないの』

「おっ、それは盲点だった。あの見た目ギャルなら知ってそうだな。昼休みにでも鶴を誘拐して尋問するぞ」

『私が録音してたらあんたの人生終わってたわよ』


 そんなわけで通話を打ち切り、鶴を誘拐することになった。昼休みにでもサクッと拉致ってアリナのクラスに持って行こう。

 教室に戻り、真琴に「任せとけ」と一言送った。それに対して「あぁぁ、言う相手を間違えた」と彼は嘆いた。大丈夫だ真琴。こっちには学年トップの脳味噌と学年トップの美少女が付いている。まず安心だ。


 昼休みになり真琴との食事会をしている最中も俺は鶴の動向を見逃さなかった。端から見ればただのストーカーだ。その視線に気づいたのか、鶴は時折首をかしげて俺に目で訴えたが俺は無視して見続けた。完全に変質者である。

 ともあれその変態行為のかいがあって俺は鶴が飯を食い終わるタイミングを見逃さなかった。


「鶴。ちょっといいか」

「は、はひっ、なんでしょう!?」

「誘拐していいですか」

「え?」

「隣のクラスまで誘拐したいんですがよろしいですかね」

「なんだぁ。ずっとジロジロ見てたから怖かったよ。アリナさんのとこに連れて行きたいのならそう言ってよ」

「ユニークはどの時代でも生かし続けなきゃならんのだ。じゃ、行くぞ」

「はいはい」


 鶴を連れ出して隣クラスに入る。アリナは普段通り文庫本を手に座っていた。


「誘拐してきたぞ。どれ作戦会議だ」

「ホントに連れてきたのね……」

「アリナさん、これはやっぱり犯罪……?」

「そうね。少なくとも彼は存在が罪だから逮捕できるわよ」

「俺は罪の体現者かよ」


 アリナの前の席と隣の席を借りてトライアングル状に話し合うことにした。

 

「さて、諸君よく集まってくれた。主題は『真琴&流歌のデートスポット』だ。この議題についてお二人のスペシャリストに頭を捻ってもらいたい」

「面倒くさい」

「誘拐」

「まあまあお二人とも牙は収めてくださいな。協力してくださいな」


 アリナと鶴は顔を見合わせてため息をついた。


「私はそういうのよくわからないから鶴に訊くといいってあんたに言ったじゃない」

「イエス。さて、鶴さん。何かいいスポットはありませんか?」

「いきなり一対二!? ん~どこかなぁ。真琴くんってどんな人なの? 流歌の好みに合わせた方がいいならどうでもいいけど」

「真琴は真面目で純情なやつだ。マスクを被ったら変わるが」

「不真面目で不純のあんたと真逆じゃない」

「ちょっとそこの毒舌お嬢さん静かに。あと七百年黙っててくれ。どうだ、鶴。いいとこあるか?」

「ん~~。流歌はアクティブな方じゃないからなぁ。ん~水族館とか花園?」

「……俺でも思いついたんだが」

「ありゃりゃ」

「やっぱ水族館がいいよな!? 俺は間違ってなかったぞ真琴ォォォオ!」

「もしかして話し合い終了?」

「のようね」

「ありがとう二人とも。早速真琴に連絡してくる!」


 二人は呆れたように目を伏せてまたため息をついた。幸せが逃げちゃうぞ。あざーっす!


「あいつホントバカ」

「ねー。アリナさんもよく相手するね」


 おい聞こえてるからな。

 

 



「真琴。結論。水族館」

「どうしたんだよ彗。グーグル検索みたいだぞ」

「我々のカンファレンスで出た結論は『水族館』だ」

「日羽もそう思っているのか……彗の言うとおりというかテンプレートなスポットってやっぱ当たりなんだね」

「イエス。また何かあったら言ってくれ。協力しよう」

「どうしてそこまで……」

「友達だからな」

「ズキューン! ハート」

「効果音を口に出すな。吐き気がする」

「じゃあ一つだけ頼みたいんだけど。デートって何すりゃいいんだ?」

「それは自分で考えろよ。もはや俺が操ってるみたいじゃないか」

「じゃあ困ったときに即席アドバイスできるようこっそり追跡してくれないかな」

 

 俺に本当のストーカーになれっていうのかこの男は。散々ストーカーだの犯罪者だの歩く変態だの言われ続け、挙句の果てに本当のストーカーになれ、と?

 アリナは大喜びで罵倒するだろう。

 いい玩具にされそうだが道連れにしてやる。

 

「了解。具体的な案と日程が決まったら教えてくれ」


 ストーカーになってやろうじゃないか。

 しかしストーカーは俺だけじゃなく、アリナ、お前もだ。堕ちるときは一緒だ。


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【リメイク版・毒舌少女のために帰宅部辞めました】
わたしの愛した彗星

【書籍化作品】
JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない

水埜アテルイ Twitter

https://twitter.com/Aterui_Mizuno
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