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毒舌少女のために帰宅部辞めました  作者: 水埜アテルイ
第3章 あなたが輝く物語

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似た者同士の自虐

 結局、文化祭が終わるまで妹には遭遇しなかった。

 神は本当に世界を少し曲げてくれたようだ。後夜祭は参加せず俺は普通に帰宅した。疲れたので一刻も早く寝たかったのである。

 明日は日曜日なので寝腐れると思うと最高だ。しかも月曜日は振替休日。まさに死角なし。

 文化祭も自分の役目も無事終わったから文句なしだろう。そこそこ楽しめた。生徒会の皆々様からは感謝の言葉をいただき、俺とアリナは普通の無所属高校生に戻った。帰宅部という名のね。


「ああー疲れた」

「お疲れさん」


 いつもの如くテレビをぼーっと眺めながら妹に相手をしてもらう。


「うちの文化祭どうだった?」

「楽しかったよ。兄ちゃんに会えなかったの残念だったけど」

「なら良かった。俺も結構楽しめた」

「アリナさんと付き合わないの?」

「なぜそうなる。頭のネジ20個くらい落としてきただろ。拾ってこい」

「私、文化祭ついでに好奇心で『日羽アリナさんって知ってますか』って生徒さんたちに訊いたんだけどね、なんと『あー、そういや最近榊木ってやつとつるんでるなあ』みたいな返事を多々貰ったわけですよ」

「はぁ」

「もうさ、付き合ってんじゃないの?」

「宇銀くん、よく聞きなさい。確かに一時期そういう噂は流れた。だが付き合っていないのはマジだ。俺は彼女の口の悪さを矯正するためだけに関わってるんだよ」

「あ、今『彼女』って言った」

「Sheの方だ、宇銀くん。ガールフレンドじゃない」

「でもさ、あれだけアリナさん美人なんだから付き合いたいって思っちゃうでしょ? ぶっちゃけ」

「多少なりは」

「謙遜しちゃって。どうすんの、もしアリナさんが誰かと付き合ったら。今の関係続ける?」


 アリナが誰かと付き合う想定は考えていないわけでもなく、ほんの少しだけ念頭にあった。美少女なのだからやはり人は寄ってくる。この世の定理として当然だし、付き合うこともまた自然だ。

 特に深く考えていなかった理由としては、あの性格ではアリナは誰とも付き合わないだろうと思っていたからだ。誰であろうが基本的に拒絶するので、もうこいつは極度の人間アレルギーか何かだと決め付けていた。

 しかし、もしアリナが付き合ったらどうするのかと妹に言われて真っ正面からそのことについて向き合ってみると意外と俺は言葉に詰まった。


「どうなるんだろうな。考えてもみなかった」

「マジかよ兄貴」

「もしアリナが誰かと付き合ったときは――まぁ確実に俺は関わるのをやめる」

「そうなっちゃうよね」

「他人の仲をいじくりまわしたり、俺が原因で不仲にさせるのも嫌だからな」

「兄ちゃんは悲しい人間だね」

「そうだな。前世はマンモスに踏み潰された原始人あたりだろう」


 






 火曜日、放課後、薔薇園。


「――という話を妹からされたんだが、もしお前が誰かと付き合ったら薔薇園解散&俺は消えるという方向でいくから安心しろ」

「突然何よ」


 不審者でも見るかのような懐疑的な目で俺を見るアリナ。今すぐ黙らないと皮膚をすべて剥がすわよ、と目が言っている。

 三日前に妹と話した内容を振り返ってみるともしかしたらアリナはこの件に関して俺が厄介者であると思っているかもしれない。だからはっきりさせておくべきだと思った。余計なお世話かもしれないが。


「端的に言えばお前が誰かと付き合ったら俺は綺麗さっぱり消えるから安心して愛を育めということだ」

「う、吐きそう」

「大丈夫か」

「ミンチにした血まみれのミミズみたいな顔したやつに『愛』だのなんだの言われる人間の身になってみなさいよ」

「それは……地獄だな」


 余計なお世話だったようだ。


「お前はモテるからな。もしお前が付き合ったらその男が俺に対して何らかの物理攻撃をしてくるかもしれん。変な噂付きで。それは流石の俺でも嫌なのでね」

「もうすでに噂のせいで被害を受けているわ。あんたのせいよ」

「あれは俺のせいじゃない。アホの勝手な妄想だ」

「はいはい」

「この話は終わりだ。さて、今日は何をするか」


 ネタ切れになりつつあるも俺はボケーッと案を考えた。


「あんたが付き合ったら私も消えるからお互い様よ」


 不意にアリナから言葉が投げられる。


「何? 俺とお前が付き合う?」

「はぁ? シュレッターにかけるわよ。だからあんたが誰かと付き合ったら私もあんたが言うように消えるから安心しなさいってこと。同じよ、考えていることは」

「面白いな、この関係。まるでどちらが先に彼氏彼女を作るのかが勝負みたいだな」

「勝負にもならなそう。私もあんたも誰とも付き合わなさそうだから」

「確かに」


 俺は思わずクククと笑った。アリナも本で顔を隠しながら肩を揺らして含み笑いをする。

 寒さを忘れられる温かさがじんわり胸に広がった。




 冬が近いため生徒らはカーディガンを着たりして厚着をしている。寒さ嫌いの俺もカーディガンを着用したが、足の方から冷気が入ってきて結局こごえた。息も白くなり、灰色の空の日が続いた。でも雪が降る気配はまだなかった。

 高校2年生の俺にとって今年の冬は安らかに過ごせる高校生活最後の冬となる。来年は受験で、今頃はセンター試験に向けて血眼になって勉強している最中だろう。亜紀先輩も頑張ってるはずだ。

 この時期になるとスマホのバッテリーの持ちが悪くなる。化学変化と電圧に寒さが影響しているらしい。なのでポケットに突っ込んで体温で温めながら登校している。なるべく使わないようにしてはいたものの、メール着信のバイブレーションが鳴ったので、俺は仕方がなく取り出した。


『放課後、何かするなら連絡ちょうだい』


 アリナからだ。朝からメールするなんて恋人かよと一人で突っ込んだ。事務的であるのでそうでないことはわかっている。

 同時に「とうとうアリナとメールする仲になったんだなあ」としみじみ自分の成長と成果を実感した。

 このアドレスは金になるな。主に男に。アリナの電話番号とメールアドレスを知っている者は当校に何人いるのだろうか。一握りではないか? やっぱり絶対金になるじゃん。


 最近はあまり活動していない。

 寒さで流石に俺もアリナも運動部の手伝いをするのが辛かったからだ。部活をしている人たちには敬服する。やることとすれば放課後に薔薇園に集まって他愛ない会話、俺への言葉攻め、たまに生徒会の手伝い、たまに文化系部活動の手伝いだ。生徒会は文化祭以来よく交流するようになった。鶴が誘うので断る理由もなくズルズルと行くのが毎度のパターンとなりつつあった。

 俺は「特にないから自由だぞ」と返信しておいた。自由だがアリナは薔薇園に行くだろう。何かあっても無くても薔薇園に集まる。

 しかし今日、俺には予定がある。赤草先生にもう一度アリナのことに関して相談するためだ。

 

 アリナについてもう一度認識を改めなければならないと強く思ったからだ。


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【リメイク版・毒舌少女のために帰宅部辞めました】
わたしの愛した彗星

【書籍化作品】
JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない

水埜アテルイ Twitter

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