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毒舌少女のために帰宅部辞めました  作者: 水埜アテルイ
第1章 あなたの時間の物語
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初めまして。

 妹と学校に行くなんて小学校以来だ。

 あの頃は二人ともランドセルを背負って仲良く登校したものだ。自分達も成長したんだなとしみじみ思った。もう5年以上前のことか。子供の成長は早いんだな。

 俺と妹はウインドブレーカーの格好で行った。制服はだるいし、妹が学校を散策する上で問題にならない。運動部員にしか見えないからだ。

 学校に着くと妹は「おおー」と声をあげた。


「ここが兄ちゃんの通う高校か」

「そうだ。俺は変人だがそこそこ偏差値のある高校だぞ。動物園みたいな高校じゃないから安心しろ。お前がとって食われるようなことはない」

「兄ちゃんよく入れたね」

「まあな」

「ちょー得意げー」

「何かあれば電話しろ。校舎内とかはあんまりウロつくなよ。ま、運動部員に扮していればまずバレないが」

「ラジャー!」


 妹は校門を通ると走って行った。どんだけ元気なんだ。

 俺はとりあえず薔薇園に行ってみることにした。

 思い返してみれば学校のどこに行けばいいのか解らない。一方的に切りやがったからな、あの毒舌薔薇。せめてどこで待ち合わせかくらい教えてから切れよな。

 しんとした校舎に入り、俺は薔薇園へと向かった。奴がいるとすればそこだろう。


 薔薇園のドアを開けると案の定制服姿のアリナがいた。


「すげえ、制服着てる」

「すごいわ、あなた服を着れるのね」

「なんだその原始人への褒め言葉。制服着るのが面倒だったから運動部員になりきってるんだよ」

「ただえさえダンゴムシと間違われやすいのに運動部員になりきるとか無謀よ」


 言い合いになるとまずこいつには勝てない。なので俺は逃げた。


「これからどうすりゃいいんだ」

「赤草先生のところに行くわ。それからよ」


 静かな校内に二人の足音が奥まで響く。無言のまま俺たちは職員室に到着した。


「赤草先生。連れてきました」

「あら、ありがとう。彗くんごめんね、休日なのに」

「いえいえ、先生のためですから」


 アリナはケッと不快感をあらわにする。

 

「で、何をすればいいんです?」

「保健室のモノをちょっと移動させたいの」

「え、わかりました」


 それだけのために俺は学校に来たのかよ……死にてえ……。

 アリナは嫌な顔一つせず「わかりました」と同意した。この人は何故こうもわたくしと態度が違うのでしょうか。

 寝させてください。そんなお願い事を赤草先生に言えるわけもなく、俺らは早速保健室に向かった。

 保健室の鍵を開けると赤草先生は早速指示した。


「まず彗くん、これを職員室前まで持って行ってくれる?」

「はい」


 ミドル級の本棚を一つ抱えて階段を登る。なんでこんなことしてんだ! 休日に学校の掃除をするくらいなら自室の掃除をしたい。

 しかしアリナはよく来たな。あいつなら120%断る仕事だろう。なのに来たということはやはりアリナは赤草先生に弱いようだ。違う意味で俺も弱いが。

 職員室の入り口付近に棚を置き、再び保健室へ。

 ドアが閉められていたので開ける。


「先生、置いておきましたよ」


 そして俺の身体は鉛みたいに固まった。

 ラッキースケベではない。アリナが着替えてたとか赤草先生が脱いでたとかそんなんじゃない。都合のいいシーンが舞い降りる時はいつだって狙った時だけだ。


 アリナの様子がおかしい。


 キッとした威圧感のあるアリナではなくほんわりしたアリナが椅子に座っていたのだ。一瞬アリナに似た誰かかと思った。

 しかも俺を見て不機嫌になるどころか会釈までしてきた。今まで出会い頭罵倒から始まっていたというのに俺に対し敬意を表したのだ。こんなことはありえない。時計をバラバラにしてプールの中にかき混ぜ、偶然元どおりの時計に戻ることの方がまだ可能性はあるくらいだ。

 

「ア……リナ?」

「はい。日羽アリナです。初めまして」


 初めまして。

 彼女の声はとても透き通っていて、とても純白だった。

 つまり嘘でも冗談でもないということだった。


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【リメイク版・毒舌少女のために帰宅部辞めました】
わたしの愛した彗星

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JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない

水埜アテルイ Twitter

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