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五つの記憶と二人の会話と一組の家族

(  ̄▽ ̄)(*´∇`*) [おーい>


Σ(  ̄▽ ̄)<あ、あんた達、やっと来たわね]


(  ̄▽ ̄)(*´∇`*)[なんだ、なんだ>ヽ( ̄▽ ̄)ノ


[珍しく俺ら待ちかよ。つかなに読んでんだ二人で>ヽ( ̄▽ ̄)ノ( ´∀`)


(*´∇`*)ゞ⊂(  ̄▽ ̄)ノ<この子の書いた物語。前、来たとき頼んでたっしよ?全員に]


(*´∀`)<あれをこの子、さっそく書いて来てくれたの]


(*´∇`*)<一回ねぇ。書いてみたかったのぉ]


[な、なんだって>( ; ゜Д゜)ヽ(・∀・)ノ


(忘れてた…俺)○。!Σ( ̄□ ̄;)(・∀・)


(  ̄▽ ̄)<あんた]


(  ̄▽ ̄)<忘れてた、俺なんて思ってないでしょうね]


[いたいけな子供の心を読むなっ>!Σ( ̄□ ̄;)


(  ̄▽ ̄)<まぁ、いいわ。さっさとあんた達も読みなさい]




 おばあちゃんは言っていた。


「大切な記憶がある人はとても強いんだよ」


 と。だから私は無邪気さを盾に、悪戯心を剣におばあちゃんに返す。


「じゃぁ長く生きて、たくさん記憶があるおばあちゃんは、この家の中で一番強いんだね」


 と。


 するとおばあちゃんはいつものように静かに微笑み返すだけだ。


 あまり、意味のないこの会話は初めてではなかった。


 そして、いつもはここで終わるのだが、成長途中というか、発展途上というか、要するに生意気盛りの生意気ばかりな私は、この日は続きを求めた。


「そうじゃないの、違うの、おばあちゃん。それともおばあちゃんは嘘つきなの?」


 おばあちゃんは困ったように笑った。


 そりゃそうだろう。


 腕力ならお父さんやお兄ちゃんが当然強い。


 そうでなくとも家事全般を通せばお母さんや私の方が上手いからだ。


 まぁ、家事を強い弱いで判断するものではないが。


 困ったように笑ったおばあちゃんを見ていると、少しだけイライラしてきた。


「嘘つき」


 何となく私は呟きおばあちゃんの元を離れた。





 それから私とおばあちゃんはあの会話をすることは無く過ごした。


 あの日以来、あの会話は無くなったのだ。


 そう言えば何で私はあんなにもあの会話をしたのだろうか。


 よく、思い出せない。


 繋ぎ繋ぎの継ぎ接ぎだらけ。まばらな記憶とぼやけた思い出のような映像を頭の中から引っ張り出す。


 なんでそんなことをするのか。


 何となく…等と言えば聞こえは悪くないはずだ。けど、ようは、おばあちゃんとの会話が無くなったことで暇になったのだ。





 今よりずっと幼い頃。


 お父さんが苦手だった。無口で殆ど会話なんてない。仕事で疲れてるのはわかるけど、いつも口を開くときはお酒をのんでいたから。


 お母さんが苦手だった。よく喋るその口はお説教にも使われた。家事で大変なのはわかるけど、いつも私のことを厳しくしてたから。


 お兄ちゃんが苦手だった。年もそんなに離れてないのに偉そうにしてた。勉強で悩んでるのはわかるけど、いつも私のことを小馬鹿にしてたから。


 おばあちゃんは。


 おばあちゃんは……。


 おばあちゃんは、大好きだった。


 不貞腐れた私に楽しいお話を聞かせてくれたから。おじいちゃんとの思い出話や自分が行ったことのある場所の物語は楽しかった。


 塞ぎこんだ私を楽しい世界に連れ出してくれたから。近所の公園から思い出のあの場所まで行ったのは楽しかった。


 怖がる私と一緒になって考えてくれたから。夜に眠れない私のために、一緒になって怖くなくなる方法を考えたのは…嬉しかった。


「そうだ。あの時だ」


 私は不意に思い出した。思い出してしまった。


 あの時に初めてあの会話をしたのだ。




「おばあちゃんはどうして夜に一人で眠れるの?」


 幼い私が聞いたのだ。すると、もう耳に残るほどに聞いた答えが返ってきたのだ。


「人はね、大切な記憶がある人はね、とても強いんだよ」

「夜に一人で眠れるくらい?」

「もちろんそう。貴女もいつか、そんな風になれるわ。寂しい夜から貴女のことを守ってくれるくらいの記憶をたくさん作りなさいね」


「うん」


 あの時の私は素直にそう返事を出来たのだ。


 そして「強さ」の意味を聞いていたのだ。




 忘れてた。ずっと前のことだったから。


 忘れてた。当たり前のことのように夜が怖くなくなってたから。


 本当に良かった。忘れていただけで。




 ナクシテナクテ。




 それからあの会話の続きを私は次々と思い出した。


「どうしたら記憶を作れるの?」

「それはね、大きくなるにつれてわかるわ」

「早く大きくなりたいな」

「そうね。すぐに大きくなれるわ。そしてね、一つだけ約束して」

「何?」



「貴女が感じたものを忘れないでね。それがきっと、貴女の大切だと思える記憶を増やしていくから」



 そう言って頭を撫でてくれた。



 ごめんなさい。忘れてた。



 ありがとう。思い出せたよ。



 感じたもの?なんだろう。考えてみなきゃ駄目だ。


 人には五感というものがあるらしい。耳、舌、目、鼻、肌で感じることだ。


 この五つからなる私の記憶。


 …。


 ……。


 ………。


 あった…かもしれない。これがそうなのかもしれない。



 ある停電になった夜のこと。


 食事中、突然真っ暗闇に包まれ、不安に包まれた私の耳に真っ先に聞こえたのは、普段は無口なお父さんの声だった。


「大丈夫だ。すぐにつくから」


 たったの一言だったのに、とても安心したのを思い出した。


「お母さんの手を繋いでなさい」


 隣にいたお母さんが私の手を握りしめてくれた。たったそれだけだったのに、不安なんか和らいだのを思い出した。


「ほら、父さんが明かりつけに行ってる間、これで我慢しろよ 」


 お兄ちゃんが灯してくれた懐中電灯が僅かな光で家族を照らしてくれた。たったそれだけだったのに、勇気が湧いたのを思い出した。


「……ちゃん。今日の晩ごはんの味噌汁は格段に良い香りがするでしょう。たまには薄暗いのも悪くないとおばあちゃんは思うんだけど、どうかしら」


 おばあちゃんが場違いの、でも場を和ますように味噌汁の香りを嗅いだ。たったのそれだけだったのに、本当に良い香りがしたような気がして、元気が出てきたのを思い出した。


 そして、いつの間にか笑っていたのだ。


 あのあと、電気はすぐになおって明るさは戻り、同時に、いつもの食事時に戻った。


 しかし。違うところもあった。皆が停電について語ったのだ。


 ほんの少し前まであった「出来事」を「共有」して一緒に語り合い、「記憶」という思い出にしていったのだ。


 あの日に食べたご飯は…美味しかったのか覚えてない。けど。


 あの日に食べたご飯は、とても楽しかったのを覚えている。





 あった。あったよ、おばあちゃん。他にもいろいろ。私にも、確かに、いろんな事を感じて思い出せる記憶が。


 家族を家族足らしめる、大切で大事な記憶が。


 私が、私を「一人」の人間足らしめ、強くしてくれる記憶が。





 さて。思いだし、覚えたての昔話をもって、おばあちゃんに会いに行こう。


 まずは何て言うべきか。


 生意気盛りで生意気ばかりなこんな私を、いつでも優しく迎えてくれたおばあちゃんに。


 無邪気さを盾に、悪戯心を剣に放った「嘘つき」という言葉に負けない最強の「家族」に。






[………>!Σ( ̄□ ̄;)( ̄□ ̄)


(  ̄▽ ̄)<どうしたのよ。なんか言いなさいよ]


[いや、普通に、物語になってて…すげぇ>( ̄□ ̄;)


( 〃▽〃)<頑張ったよぉ]


[確かにね。僕も書こうとは思ってるけどオリジナルは難しいな>ヽ( ̄▽ ̄)


[えっ!お前も書く気だったのか>(°Д°)


(*´∀`)<書くの楽しいよ]


[し、しかし俺は>Σ( ̄□ ̄;)


(  ̄▽ ̄)<あんた]


[お?おお?>( ̄□ ̄;)


(  ̄▽ ̄)<約束したよね?この間。お菓子と飲み物提供する代わりに書くって]


[お、おお>( ̄□ ̄;)


(  ̄▽ ̄)<最低、一冊は書くって]


[か、書くよ。近いうちに書くからっ>( ̄□ ̄;)


ヽ( ̄▽ ̄)ノ<しゃあ、楽しみにしてるわよ、あんた達]

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