プロ・ゲーマー ノリ
カードバトル的VRMMO(仮)とかであくまでVRはゲームは遊びだというスタンスでやっているのでたまにはゲームは仕事と言うお話を書いてみました。
人の気配の無い簡素な住宅街を一つの機体が走り抜けていた。
PR031…プロ・エンジニア[テツ]が送る、ポップリアルシリーズの31番目のタイプだ。彼によってステータス、武装、センサーなどの各種機器が設定されたこの機体は彼の想定通りのパフォーマンスを生み出していた。
さすがはテツ…俺の相棒だぜ!!
男は思う。
男はPR031を脚部に装備されているローラを使い器用に動かし住宅街を抜けていく。男の名は[ノリ]…プロ・ゲーマーだ。
『ノリ…今回のPRは速度重視のチューンになっている。その為に武装は最低限だ。数は撃てるが威力の低いハンドガン。そして小型のブレイドがメイン武装になる。…敵はどうやらその先の路地に居るみたいだ検討を祈るよ』
「了解だ!!」
テツの言葉にうなずきノリはハンドガンを握らせる。そして路地から出た瞬間、相手のロボットの足を狙いそれを乱射した。
威力の低い攻撃だが足の間接を破壊するには十分だ。その攻撃と共にノリの現実とノリとを結ぶイヤホンに歓声が響いてくる
『わーと!!チーム!ノリテツ!!先制攻撃だ―!!足を破壊されたチームヒビト、彼らに逆転の手はあるのだろうか~!!』
足の間接が破壊され動けないことを察した敵は、エネルギーを充填させることでその機体に備わったシステムを発生させる。機体が浮き上がり、機動力を確保しなおしていた。
「まだ動けるのかよ!!」
『どうやら持久力に重点を置いたチューンのようだね。冷静になれノリ。そういった相手を崩すには持久力を奪うことだ』
ノリは相手に隙を見せないように建物の隙間を縫いながらハンドガンを連射する。だが多少装甲に傷をつけても致命打には至れない。相手もこちらを攻撃するためにライフルを取り出した。
「それができないから困ってんだろう!奪ったのに動いて来てるんだぞ!」
『…相手の浮遊はただのその場しのぎだ。必ず負荷が機体に掛かっている…恐らくそこを狙えばハンドガンの攻撃力でも攻撃が通せるはずだ』
テツの冷静な言葉にノリは冷静さを取り戻した。ここぞといった所で熱くなりすぎてしまう…ノリのプロ・ゲーマーとしての魅力であり、そして欠点でもある。テツはそれを補ってくれる…ふたりはまさに最高の相棒なのだ。
「いっくぜー!!」
ノリはあえて機体を過剰に動かす、そして銃を乱射する。相手は腕を盾にしながら建物の影に隠れた。
ノリのイヤホンに現実世界でのラフプレイに対する歓声が沸きあがる。プロ・ゲーマーは勝つだけではいけない魅せることも必要なのだ。
建物の裏に敵が隠れたことを確認したノリはテツが用意した飛行用のウェポンを機能させ、ビルを三角跳びの要領で駆け上がっていく。そして建物を乗り越え、上空から敵を狙い撃つ。
『空気を生み出すスラスター…その上部についてる突起だノリ!!』
「わかってるさテツ!!」
俺はそこに向かってハンドガンを撃つ。敵はその攻撃によって浮遊のための機器を破壊され地に落ちたそして俺はブレードを取り出し、落ちながらそれを向ける。
「おおおおおおお!!りゃ!!」
ブレードが敵のモノアイに深く突き刺さり爆発させる。こうして今日も俺はこのショウに勝利した。
☆☆☆
VRが世界に普及して早10年。VRは広まりはしたものの誰もが気軽に異世界へと旅立つような夢の世界に世の中にはならなかった。
VRが出来た時、世界は狂喜した、そしてすぐさまこの技術を活かそうという動きが出てきた。話はとんとん拍子で進み、あとは政治家の認可を…政府の認可を残すのみとなった。だがそこで問題が起きた。
…単純に言えばごねたのだ。政治家が。
VRが浸透する世の中になるまでに人々はVRに憧れそれを題材にした多数の小説、アニメ、ゲームが発売された。だがそれらは娯楽文化の媒体な以上、日常を扱った品行方正なものではなく尖った作品になってしまう。そう例えばデスゲーム、例えば異世界転移、例えばVRと誤認しての世界破壊、例えばゲーム中、動かない体への攻撃、例えば電脳アレルギー、例えばゲームとはいえ現実に近い攻撃による幻痛、恐怖からのショック死、借りの肉体ゆえの風紀の乱れ、現実と誤認しての犯罪の増加…それらがきわどく描かれ、主人公が解決する。…政治家たちはそれをリアルタイムで楽しんだ世代だった。
現実に主人公なんて存在しない。もしVRを実現化してこれらの問題が発生してしまってはどうするのだろうか、誰が責任を取る?作った会社か?やった人間か?それとも認可した我々か?
政治家は恐怖した、実際に物語のようなことが怒れば被害は一人、二人では止まらない。それこそ万、いや億単位かもしれない。現代社会においてそれだけの被害を出せば、認可したことが間違いでしたさーせん。問題起こったので引退します。大臣やめます…は通用しない。遺族たちはきっと我々を殺しに来るだろう。そんなリスク、いくら旨みがあってもやりたくない。
結果、普段は連携しない政治家すべてがごねた、敵に回った。彼らの中の一人が言った
『夢は夢のままだからこそいい』
その言葉が彼らの本心を余すことなく表していた。現実とはかようにめんどくさいものなのだ。
これに焦ったのはVR開発会社側だった。巨額な金を投資して作り上げたVRが認可されない、これは大きな損失だ。無認可でやることもできるがそうした場合、責任はわが社に全て降りかかる、政治から保証も手に入らない。何よりせっかく作った夢の舞台を死なせたくない。彼らは様々な手を撃っただがそれは結局政治家を肥えさせるだけで何の意味もなかった。理不尽に危険性を訴える政治家やマスコミに世論を操作され、VR技術は未完成の技術として封印されそうになった。
悩んだ彼らは譲歩を行うことにした。彼らはVRの全体的な許可はいらない。だから特定の規約…それこそVRによっておこる全てのデメリットを受け入れる人間だけはVRを利用してもいいと認可してほしいと言い始めたのだ。
デスゲームや異世界と言う文言から始まり、一切の責任を政府、企業、そして個人に向けません。すべて自己責任において行います。と書かれた都合1000ページにも及ぶ責任転嫁公式契約文書。通称、責任認めません状を見た政治家はこれならと納得し、判を押した。こうしてVRは世間に認められることとなったのだ。
だが、こんな契約のゲームなど売れるわけない。酔狂なゲーム廃人たちは次々とこの世界に乗り込んでいったが、ほとんどの人がプレイすることはなかった。
再び企業は悩んだ。これじゃ売り上げが危ない。折角認めて貰えたのにこのままじゃだめだ…悩む彼らの目に映ったのはVR開発途中で完成された技術AR…拡張型現実の技術だった。
そうだ…最低でも一定数プレイするゲーム廃人が存在する…ようはこれをどう利用するかだ…プロだ!!プロ制度だ!!プロゲーマーだ!!スポーツだってマラソンや体操など危険の伴う競技は多い。それなのにあんなにも人気があるのはプロとして活躍しているからだ!あのきらびやかな世界が人を麻痺させる!!廃人たちをプロとして売り出し、その攻略映像をARによって…正確にはARを見ることができる安全なメガネ型ディスプレイによって見せる。現実の世界にARとしてVRの世界を重ねる…!!そうすれば他のスポーツと同じように観戦費などの収入が得られ、そしてプロに憧れる子供が増えるはずだ!!
こうしてゲームの世界ではほぼ存在しなかったプロのゲーマーが世界規模で多数出現し、ゲーマーは人が稼ぐ職業の一つとなった。そしてそれに合わせるようにしてゲーマーを補助する職業も現れる。
プロ・エンジニアだ。彼らは体を動かし、戦闘を行うプロ・ゲーマー。彼らのプロモーションをする。ゲーマーが扱うアバターのステータス、装備など使用するもの全般を管理し、仕合に向けて準備をする。仕合となれば通信機を使い敵の解析、そして情報の通知を行うまさにゲーマーの相方だ。
他にも細分化した職業はあれば基本的にはこの二人が居ればVRの世界は、この大衆に魅せるゲームの世界は戦える。
各企業から支援を受けたグループ…いわばスポンサーを表すギルド、そして自分たちでブランドを作る、チーム、パーティ。様々な者たちが仮想の世界で争い、世界は熱狂の渦に包まれる。
命知らずは栄華を求め、仮想の幻想の世界へと旅立つ。
時は、大プロゲーマー時代である。
☆☆☆
「お疲れ様ノリ。最後の仕合に勝てて良かったよ。これで心置きなくここから去れる」
仕合終わり、いつものようにハイタッチをしていたノリはその言葉を受け、手を空中で停止させた状態で固まった。そして状況を理解し、いや理解たくない気持ちを隠しもせずに話を続ける。
「な、なんでだよテツ。俺達最高のコンビだろ?冗談はよしてくれよ!」
「冗談じゃないさノリ。もう決めたことなんだ」
憑き物が晴れたように晴れ晴れとした顔でそんなことを言うテツにノリは怒りが沸き起こった。彼は詰問するように詰め寄る。
「なんでだよノリ!俺の何がいけないってんだ!!」
「なんで…?…もう耐えられないんだ!!俺の最強が!!俺の完璧な調整が無残に負けるのを見るのは!!耐えられないんだよ!!」
ヒステリックな声を突然あげるテツ。驚いたノリは一歩足を下げる。それを見たテツは冷静さを取り戻し、ぽつぽつと理由を語り始めた。
「俺がなんでエンジニアとして働いているかわかるか?ノリ、お前がゲーマーとして世界で一番の攻略者になりたいように、俺も世界で一番の攻略者を作り上げた男になりたいんだ」
「テツ…」
「お前たちがモン○ンをやっているとしたら、俺達は信長の○望、ドラ○ンク○ストモンスターズをやっているんだ!この世界で!そして最強の国を、モンスターを作りたいんだ!いや、いつも作っているんだ俺は!!だけど現実にはそれは最強にはならない…わかるよなノリ」
「そ、それは…」
「いくら完璧に調整しても、プレイヤーの腕が悪くて負ける。自分の作った最高の存在が自分以下の不出来な存在に倒されていく…!!この気持ちがわかるか!!ノリ!!俺はもうそんな生活は嫌なんだ!最高の剣を作ったのなら最高の剣士に使われたい…エンジニアとして当たり前のことだろ!?」
テツの思いにノリは心砕かれそうになる。確かにノリの腕は良くはない。若い頃はその勢いによって何とか持ってきたが都市が経ち30代に近づくにつれ、意欲は衰え、逆に上がってきたテツの腕に頼りっきりの状態が続いていた。前回の仕合が良い例だ。
だが、それでも一緒に今までやってきた仲間と離れたくない。ノリはプライドをかなぐり捨ててテツに媚びた。
「それでも…いやわかったから…俺がダメなところを直すから…テツやめないでくれ…」
「…ノリが頑張っていることはわかるさ…だけどどうやったって無理なんだ。…ここまで付き添った中だから。お前の最高の相棒を自負しているからこそ俺は言う。ノリ、お前、才能ないよ。だからお前じゃだめなんだ」
「な…!!」
その言葉にノリの怒りは頂点に達した。勢い掛かってテツの胸倉をつかみ問いかける。
「じゃあいるってのかよ!!お前の才能にあう!!才能のあるやつが!!」
「…ギルド[マックスパンサー]からエンジニアとして誘われているんだ。あのキルトのエンジニアをしてほしいって」
「マックスパンサー!?キルトだって!?」
マックスパンサーとはギルドの中でも最大手。年間好感度ランキング、年間収入ランキング、年間最優良ランキングで常に一位に入るような攻略組とも言われるトップギルドだ。そしてキルトはその甘いマスクから多数のファンを持ち、容赦ない斬撃、負けずに必ず敵をキルすることから絶対の支配者とうたわれる現在最高ランクのゲーマーだ。ノリなんかとは格が違う。あまりのことにテツを落とすノリ。起き上がってテツは服を叩きながら言う。
「…友達として…君の第二の人生に幸があることを祈る…」
こうしてノリのチームは解散することとなった。
☆☆☆
あれから二年…
淀川ノリ。28歳。無職。家なしです!
ノリは今日も公園に屯し、手に取った瓶から直接酒を飲む。汚れた衣服。完璧な人生の負け犬の姿だ。
ベンチに大きくもたれ掛り、ノリはこれまでのことを思い出す。
あの後、ノリは結局テツを失った。やけになったノリはしばらくソロで活動していたがその後、新しくエンジニアを探そうと動き出した。だがそれは上手くはいかなかった。プロ・ゲーマーには資格がいる。それは認めません状に記入するだけではなくエンタテイナーとして優れているか、しっかりと見せるものになるか…言ってみれば芸人やタレントのオーディションのようなものだ。そもそも今の世のゲーマーはヒーローと扱われることからしてそのような扱いは間違っていない。問題はそれにより、ゲーマーも絶対数が少ないこと、そしてゲーマーの命を預かるエンジニアにも相応の試験が用意され、また少ないことだ。
ノリはプロ・ゲーマー初期の廃人勢の一人だ。かれこれゲーマー歴10年となる。いわば試験の無かった世代なのだ。現代のゲーマーは器量よし、腕良し、見た目良しの三拍子そろったものが多数いる中でこんなおっさんを指名してわざわざエンジニアになるようなものはいない。誰もが泥船ではなく豪華客船に乗りたいのだ。
…結局ノリはエンジニアを見つけることができなかった。それでも諦めずに自分で調整し、ゲームに出てつづけた。だがそれも裏目に回る。ゲーマーは下手であっても突き詰めてニーズに刺されば、受ければ売れる。逆を言えば、中途半端な奴ほどおちぶれるのだ。ノリの調整は戦いの腕は中途半端だった。それこそがテツの言った才能の無さなのかも知れない。結果ノリは滑り落ちるように人生を転落させていった。そして公園の住人だ。彼に残っているのはゲーマーの資格と過去の栄光、そして酒の残り2mmだけだ。
「あ”あ”あ”~!!」
人生を悲観した雄叫びが上がる。無くなった酒瓶の底を何度も押し、それでも出ないとわかるとそれを乱暴にゴミ箱に殴り捨てる。
そして手近な新聞紙を手に取り寝転がった。今日の宿に使おうと思った新聞紙。だがその一面を見てその考えを止める。新聞紙にはこう書かれていた。
キルト!第一回フェルクルゲーム王座決定戦へ!!
今注目のキルトの相棒テツ!!その真価とは!?
「うがああああ」
衝動で破り捨てるノリ。その後自身の宿がなくなったことに気付き後悔する。だが落ち込んでばかりはいられない。ノリは新たな宿を求め立ち上がった。
ふらりとよろめく、どうやらノリは酒が抜けきっていないらしい。おぼつかない足取りで一歩前に踏み出すと、ノリの視界に一人の少女が映る。彼女はこちらをじっと眺めていた。
「あ”あ”!?見せもんじゃねーぞ!!」
人はここまで荒むことができるのだろうか?今のノリは狂犬だ。もしかしたら昨日犬にかまれ患ったのかもしれない。ノリは犬だったのだ。そう負け犬だ。
そんないきがるノリは少女は冷静な瞳で見つめる。そしてノリに話しかけた。
「あなた淀川ノリね?プロ・ゲーマーの」
「んだっだら!なんだって言うんだオラ!!」
「ふん。お手」
少女はそう言って手を出した。完全にノリを犬扱いしている。だがノリはそれに乗ってやろうと思った。思い通りにさせてせいぜいおだてさせようと思ったのだ。そしてそのまま優越感に浸り、性格が悪くなって滅べばいい。ノリの心持ちは陰険だった。
ノリが前足を出す、そして手が触れる寸前少女は手を引いた。その顔には嫌悪感が溢れていた。自分がしていることに気付いたのか?案外まともな奴だったんだな(洗脳)と思ったノリだったが。少女はただよくよく考えてみたら今のノリ、チョー汚い触れられたくないと思っただけだった。
沈黙が場を占める。
先に口を開いたのは少女だった。
「ま、いいわ、合格だわ。あなたなら私の言う通りに動いてくれそうだし」
「あ”?」
「ちょっとやめてくれないそのヤンキー口調?あなたと組むことになる私のセンスが疑われるじゃない。それとその体もっと綺麗にしてよね。今のあなた犬以下だわ。今の時代飼い犬の方が良い生活をしてるわよ」
「組む?脳みそ腐ってんのか?お前と何を組むっていうんだよ?」
「腐ってるのはあなたの見た目と心と脳と…あら?全部ね?…まあいいわ。決まってるじゃないあなたに残されてるのはゲーマーの資格と過去の栄光だけでしょ?…チームを組むといっているのよ。私、プロ・エンジニアだから」
その言葉にノリは驚く、そして蔑みの目で少女を見た。
「冗談はほどほどにしな、嬢ちゃん。お飯事は家で帰ってやるんだな」
その思考回路は以前と同じくらい正常に回っていた。台詞が当社比20%アップくらい良くなっている。ゲーマーと言う言葉がノリの奥底に眠っていた第二、第三のノリを蘇らせたのだ。
「冗談じゃないわ。資格はしっかりと持っている…それとも何?中学生はゲームしちゃいけないっていうの?エンジニアもゲーマーも試験さえ受ければ年齢は関係ないはずよね?」
確かにそうだ。ノリはそう思った。厳密には小4以上にならなければゲーマー資格は得られないのだが基本的には年齢は関係ない。それこそエンジニアだったら赤ちゃんでも可能だ。もちろん資格試験に通ればと言う前提はついて回るが。
だがそれでも…ノリは考える。
「やだね。なんだってお前みたいな素人と組まなければいけないんだ」
ノリだって選ぶ権利はある。それがプライドだ。現場で働いたプロとしてこんな素人丸出しと組むわけにはいかなかった。
「もし私と組むなら、住むところの面倒と生活の保障をしてあげても構わないわ」
「やります!!」
組むわけにはいかなかったのだが…!!
☆☆☆
銭湯に入り、身綺麗になったノリが連れて混まれたのはこじんまりとしたシェアハウスだった。少女…財津ミラ曰く。このシェアハウスは彼女がプロデュースすることになるチームを住まわせて相互連絡を活発にするために作られたらしい。
金持ちだ!!
人生のどん底を歩いたノリのテンションが二段階、階段飛ばしに上がった。金の魔力とは偉大なのだ。それゆえに人は滅ぼしあう。その哲学をノリはホームレス仲間からいやというほど学んでいたのだ。
「そこの部屋…そこがあんたの部屋ね。上の部屋が私の部屋。あとはおいおい増えていくはずだわ」
「ひゃっは~姉御さすがです!!こんな贅沢なところに住まわせてもらってこれからも全力でついてきます!!」
ゴマをすることも忘れない。これはホームレス生活中。河原で一人座り込んでいた。ちょっと危ない系の人の舎弟ヤスから学んだ処世術だ。あのヤスは相当鬱憤が溜まっていた近頃犯行をおかすかもしれない
犯人はヤ○
「ふざけてないでまともでいて。話していて疲れるわ…」
「んで?なんで俺だったんだ?つーかあんたの状況は?名前だけじゃ何もわかんないんだけど」
切り替えの早さは達人級。いろいろ吹っ切れたノリは強かった。真面目トーンに戻りシリアス展開に発展する…
「あんたを選んだ理由は負け犬だったから。状況?チームならまだないわこれから作るのよ。まあある程度決まっているけどね。私のことは秘密。あと明日早速仕合だから」
「なんだって!?」
しなかった…
☆☆☆
プロ・ゲーマーの仕事とはゲームをしている姿をARを介して観客に見せ、収益を上げることである。基本は勝利時の賞金であるファイトマネー、あとは人によりグッズ販売、テレビ出演などが仕事としてあげられる。
ノリの復帰戦はダンジョン攻略となった。これはいわゆる攻略の様子を見せそれを楽しんでもらう物だ。ゲーム実況だと思えばわかりやすい。ノリなどのプレイヤーはそれを成すための素材と言った所だ。
ノリは会場に到着していた。VRを利用し、潜るだけでその場に付く。だが現在はアバターではなくノリの姿だ。もっともファン受けを考えてアバターも同じ姿にするものが多いのだがそれは今、関係ない。ノリのアバターは今、ミラによって調整中だ。このようにして選手であるゲーマーが待機している間にエンジニアが様々な道具、パラメータなどを設定する。道具やパラメータは大会が規定した使用ポイント上限を上回らないように設定する必要がある。それさえ守ればどんな構成でもいい。そしてポイントを使いそれら、戦う前のことを準備するのがエンジニアの最も大切な仕事だ。
『準備できたわ』
そのミラの言葉に従いノリは外に出た。そしてノリにアバターが装備されていく。再びノリが姿を現した時、ノリはステテコパンツにタンクトップ、鉢巻を付け、手に伸びる剣を一本持ったオッサンの姿で立っていた。
「おい」
ノリの心の叫びが混乱に抑制され、たった一言簡潔な言葉を吐き出させる。
「なんだこれ?」
再び言葉を絞り出した時、ノリは自体を理解した。そして羞恥で顔を真っ赤に染める。おっさんの赤面とかみたくね~ひっこめ!!という悲しい観客の野次を聞きながらノリはミラの言葉をまった。
『私の調整』
「なんで?」
再び質問。心からのノリの本音だ。
『ノリだけにノリみたいな?』
「上手くねーよ!!なんだよみたいなって!!」
ノリはこの瞬間決めた。金持ちだから媚びへつらおうと思っていたが此奴はバカだ。金持ちでもバカでは破産する。自分をしっかりと持たないといけない。彼女の金は自分が守ると。
『ホラ。あそこにパンダのキグルミも居る。あっちにはヒーローマスク。そんなものよゲーマーって。一時期のゲーム実況者もゲテモノぞろいだったじゃない。今回の主催者も大差ないし。きっと面白おかしくしてくれるわ。よかったわね人気出るわよ』
「色々苦情がでそうなこというな~!!そんな方面での人気は欲しくないんだよ~!!」
ノリが目指さしていたのは渋いハードボイルド路線だった。だからファンタジー系には手を出さず。ミリタリー、ロボ系を中心に戦ってきたのだ。
なのに今はステテコパンツ…いつから俺は山賊路線。ヤン○ス路線になってしまったのか。だが俺にはアニキと呼べるような明確な師匠はいない。これは致命的な差だアニキを探さないと…せめてドリルを回すくらい熱い人でないととノリは混乱した。
ノリがメダパ○を解除している間に事態は進む。いつの間にかスタートは切られ、全てのゲーマーが迷宮の奥へと向かっていた。
遅れたノリももう仕方ないと思って。走り出す。そしてミラに聞いた。
「おい、これは何ができるんだ!?」
『剣を伸ばせるわ!!』
「…それ以外は?」
『鞘を伸ばせるわ!!』
「ほか…」
『柄が伸ばせるわ!!』
「特化兵装ぅううう~!!!」
ノリはこの時理解した。此奴は俺を選んだんじゃない。俺しか選べなかったのだと。どこのだれが調整役としているエンジニアがまさか調整をぶん投げしてくると思う。まさかの極振り。まさかの特化。ミラを少しでも有能と見た俺の目は節穴だった。ただのアホのやったんや…と半ば自暴自棄になりながらもノリは思う。
だが彼の体はこれまで歩んだ前の男…テツを忘れられていなかった。彼の体に染みついた癖がミラに対しても発揮される。
目の前の大穴を見つめノリは叫ぶ
「ミラ!!この大穴どうしたらいい!?」
『剣を伸ばすのよ!!』
ノリは剣を逆向きに置く、そしてその剣を伸ばし、その上を歩いて伸びた剣を拾って走り出した。
ノリはモンスターに囲まれた。
「ミラ!!モンスターたちが情報をくれ!!」
『剣を伸ばすのよ!!』
ノリは剣を伸ばし力任せに振る。
「ぬうぅぅう!!」
モンスターたちは切り刻まれた。
ノリはおもりを置いている間、開く扉を発見した。
「ミラ!!この扉を…」
『剣を伸ば…「ワンパターンンンン!!!」』
ノリは慟哭した。ワンパターン戦法。力ませすぎる突破だ。これはもう○転裁○でセーブを残しておき、証拠連打をする感覚に近い。なんであれ答えがあればいいといった形だ。こんなのゲーマーの吟じが許さないと思いつつも剣を伸ばしておもりが必要な部分を押すノリは真面目な生徒だろう。むしろ慣れてしまっただけかもしれないが。
扉を突破したノリにミラから返答が返る。
『ふん。わかっていないわねワンパターン戦法の恐ろしさをスマ○ラでピッ○でうりゃりゃりゃりゃってやってれば大抵勝てるのよ』
「なんだその経験談。それはそれこれはこれだろ!!」
『変わらないわ。何よりワンパターン戦法は見ていて面白いもの。同じことで突破するのは笑いになるわ。これが私のプロデュース…文句があるならあんたがその剣の新たな使い方を見せればいいじゃない?あんたゲーマーなんでしょ?言われたことをやって、攻略情報のまま進めて…それでゲーマーって言えるの?』
その言葉にノリは打ちひしがれた。そうだ俺はゲーマーだったんだ。昔は攻略情報何て見ずに、テツと一緒にいろいろ考えながら進めていた。ロボで戦いながら新しい戦い方を見つけていた。いつからだろう自分がそんなに熱くならなくなったのはゲーマーだと名乗りながら二番手で攻略情報を見ながら、誰かの知識に頼りながらゲームを楽しむようになったのは。
『私は準備をする…だけどどう活かすかはゲーマーであるあなた自身だわ。本当に自分が本物だっていうならこの状況を何とかして見なさい』
その言葉が聞こえた時、階層徘徊型ボスがノリの前に現れた…。
☆☆☆
「うぉおおお!?」
ノリは必死に逃げ回っていた。そしてイヤホンに向かって声を掛ける。だが何度呼び出しても声は聞こえなかった。それにいつも気にしていた観客の音声も今は断ち切られてしまっている。
正真正銘ノリは今、一人だった。
階層ボスはミノタウロスだ。こういうものは大抵初回はミノタウロスだってどっかの偉い人が言っていた。ノリはテツと共に最初のダンジョンを駆け抜けた時の冗談の掛け合いを思い出しながら動いていた。
あるもの全て使って敵を倒す
ノリはそのゲーマーとしての原則を思い出していた。なぜゲーマーが居るのか?調整するだけならエンジニアが居ればいい。見たいだけなら実況が居ればいいだろう。なぜゲーマーが居るのか…それは誰もが通っていない道を新たなゲームを切り拓くためだ!!
ノリは熱き魂を思い出した、ここぞといった所で熱くなりすぎてしまう…ノリのプロ・ゲーマーとしての魅力であり、そして欠点だ。
ノリは剣をミノタウロスに振るう。だがミノタウロスの巨体に剣は届きにくい、そしてミノタウロスの身のこなしは予想より速かった。吹き飛ばされたノリは起き上がる。
ノリは剣を伸ばした。ノリにはある考え方合った。これが伸ばすことに特化しているというならば…
伸びた剣がミノタウロスの腕の少し上を通り抜ける。だがその剣は曲がって(・・・・)伸びた。
伸ばすことに特化しているならまげて伸ばすこともできる!!それがノリの答えだった。ミノタウロスを巻きつけるように剣が伸び、切り傷を増やしている。
怒り狂ったミノタウロスだがそれは隙になった。
真正面から迎え撃ったノリは剣を伸ばし、突撃する。その剣はミノタウロスを貫きそしてその命を奪った。
「うぉおおお!!!」
久しぶりの勝利に、蘇った思いにノリは慟哭した。
『ふふ、それでこそゲーマーよね』
ミラが小さく呟く。その声が聞こえてきたと思ったその時、さらに聞こえてきたのは観衆の大歓声だった。
『スゲー』
『一騎打ち燃えたぜ』
『やるじゃないかオッサン!!』
『まだまだ、こんなもんじゃないわ。兄をキルトを越えるために私たちはまだまだ伸びりつめなきゃだめよノリ。このスターロードをね!』
この日、一人のプロ・ゲーマーが蘇った
プロ・ゲーマー ノリ
おしまい
三人称視点は難しい。
ノリで考えたのでこの話はこれで終わりです。
ちなみにAR(拡張型現実)はいわゆる実体のない、遊戯王なんかのソリッドビジョンです。
眼鏡をかけると現実にVRでの戦いの光景が重なって映し出されます。それを見ることで目の前にロボット同士の戦いが見れます。実体がないのでどんな場所で見てもOKです。なんなら隣に立って一緒に戦っているフリも可能です。
また、今回はロボットと迷宮だけですがタイムアタックや格ゲー、野菜作りから料理までゲームの種類は豊富です。




