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玉砕

「なんで…?」

淑子は、うっすらと涙を浮かべながら、敬介に聞く。

敬介は、わずかに考えてから、淑子に理由を簡単に言った。

「俺は、まだこいつに勝ってないからな」

そう言いながらも、敬介は愛美を指さす。

「え、私?」

愛美がきょとんとした顔をして言う。

「そうさ、俺がいまだに勝つことができていない相手、金内愛美に勝ってからこそ、俺は君と付き合いたい」

「それって、あなたなりのケジメってところかしらね」

愛美が言い返す。

「そう取ってもらってもかまわない。だから、それまでは、この件は留保ということでいいかな」

敬介が淑子に尋ねる。

「うん、私、ずっと待ってる」

淑子は敬介にそう答えた。

そして、振りかえらずに帰っていった。


「……それでよかったの?」

愛美が敬介に不服そうに聞いた。

「いいんだよ、俺がちゃんと惚れた相手には、ちゃんと相手してもらいたいからな」

「そりゃ、けっこうなこったで」

愛美が言ったが、敬介は意に介するふうではなかった。

「何はともあれ、行くか」

「ええ」

二人はそれから連れだって、いつもの広場へと向かった。

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