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近所の公園

あのタイマンから数日が過ぎた。

すっきりとした気持ちの淑子は、日課になっているランニングを、近所の公園でしていた。

1周1.5kmのコースを4周するため、1回で6km走ることになる。


朝早いとは言っても、午前6時半ともなれば、散歩やジョギングやサイクリングといった人たちもいる。

だが、そこで想像もしていない人と出会うことになった。

2周を走り終わり、少しの休憩をとっていると、後ろから犬の鳴き声が聞こえてきた。

別の犬の声もしているから、どうやらケンカをしているようだ。

ちらりと見ると、ゴールデンレトリバーと、白いチワワがいた。

そして、その飼い主を、淑子は見た。

ゴールデンの方は誰か知らないが60台くらいの男性で、チワワの方は間違いなく敬介だった。

「こらっ」

敬介がリードを引っ張っているが、チワワは吠えるのをやめない。

「やめんかっ」

今度は、低音ボイスでチワワに吠えかかると、一発で吠えるのをやめた。

それは、怖がっているようにも見えた。

「すみませんでした。こいつ、気が強いもので」

「ハハハ、いや、いいんですよ。よく吠えかけられてますから」

ほらソラ、と初老の男性が言うと、すぐにソラと呼ばれたゴールデンはその場に座った。

「あれ、祝田さん?」

淑子はその瞬間に声をかける。

こちらを振り返り、顔を見るともう確信を持った。

「ああ、貴女でしたか」

なにかホッとした感じで、敬介が淑子に返事をした。

その時、初老の男性が、淑子に話しかける。

「おや、あなたは確か……」

何かを思い出そうとしている表情を数秒したのち、晴れ渡るような顔つきになった。

「そうそう、改田さん。お父さんは元気にしていらっしゃるかな」

「あの……」

私はかなり戸惑った。

身も知らずの人から、声をかけられたからだ。

「これは、私をご存知なかったですね。直接お会いしたのは、10年も昔、それも一度きりでしたから」

「こちら、青山裕司(あおやまゆうじ)さん。手野大学の物理学部で物理を教えていらした元教授さん」

敬介が、簡単に紹介した。

「よろしくお願いします」

淑子が青山に頭を下げる。

「いやはや、君たちは知り合いなのかな」

「ええ、ちょっとしたことで……」

「そうかい、そうかい。それは何よりだ」

なにがなによりなのか、さっぱり二人にはわからなかった。


それから青山は再び犬の散歩へと戻った。

敬介は淑子に言った。

「んじゃ、またな」

「あ、ちょっと待って」

「ん?」

淑子が、思い切って聞く。

「連絡先、教えてくれますか」

「ああ、いいよ」

それぐらいならと言って、持っていた携帯で、メアドや電話番号を交換した。

それから、ふたりはそれぞれ、さっきまでしていたことに戻った。

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