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タイマン

タイマンの当日。

「こっちこっち」

慣れた足取りで、愛美は敏子を案内する。

目的地は、当然例の空き地だ。

「ちゃんと来るのかなぁ……」

敏子が不安そうな声で、愛美に尋ねる。

「大丈夫。あいつはあれでも、約束は死んでも果たすタイプだから」

会話は、ここで終わる。

空き地に着いたからだ。


せいぜい150平米といったところだろうか。

150平米といえば大きく感じるが、45坪強といったところだ。

「待ってたぞ、金内愛美!」

そこには、まさしく淑子を助けた本人である祝田敬介その人が、腕を組んで立っていた。

「今日は、どれだけ楽しませてくれるかな。10秒?それともミリ秒?」

愛美が挑発するも、敬介は応じない。

「ところで、そのご婦人は、もしやあの時の人では」

「ええ、その通りよ」

愛美は淑子を一歩前へ歩かせた。

「元気そうで何より。あれ以来、なにも無かったかい?」

周囲に徐々に人が集まってくる。

それに気づきながらも、淑子は敬介に話しかけた。

「あの時のお礼を言いたくて……」

「ああ、気持ちだけで十分だ。あれぐらい、しなきゃならないからな」

「でも、本当にありがとうございます」

頭を下げる淑子。

それに対して敬介は笑いながらいった。

「なに、気にする必要はない。人倫に反することをしていたら、それを止めるというのが道理。ただそれだけのことさ」

頭を上げた淑子に、敬介が話しかける。

「もう大丈夫?」

「ええ、大丈夫」

淑子が愛美からの言葉に答えると、今度は敬介が愛美に言った。

「ならば、尋常に勝負せよ!」

それからボクサーの様に、両手を構える。

「としちゃんは、ちょっと下がっておいて」

愛美が淑子に言うと、淑子は、3歩ほどさがり、他の聴衆に紛れた。

「こちらから行くぞ!」

ウォーと叫び声をあげ、渾身の右ストレートを殴りつけてきた。

それを愛美は身動き一つせず受け止めるとあっという間に敬介の身体は宙を舞った。

「ぐふっ」

背中から地面に叩きつけられて、一瞬息が詰まる敬介。

そんな瞬間を見逃さず、愛美は啓介の首めがけて強烈なパンチを繰り出す。

だが、当たる寸前で止める。

「私の勝ちかしらね」

愛美が宣言する。

誰も何も言わない中で、一人、愛美の足下で敬介が拍手をしていた。

「いやはや、流石に強いや。でも、今度は勝つからな」

「そのセリフ聞き飽きたんだけど」

愛美は笑って手を差し出す。

それを掴み、敬介が立ち上がって今日の試合は終わった。

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