相談
強烈な出会いを果たした敬介と淑子であったが、住んでいる世界が違いすぎるのか、はたまた接点が弱すぎるのか。
高校で出会うことは殆どなかった。
それでも、淑子はもう一度敬介に会いたいと思っていた。
こんどはちゃんとお礼を言いたいと考えていたからだ。
だが、知っていそうな人は、周りにいない。
ダメ元で、友人に聞いてみると、一人知っていた。
「祝田敬介?ああ、あの人」
知っていたのは、高校で一番強いと評されている愛美だ。
「知ってるの!?」
お昼ご飯を食べながら、淑子は驚いていた。
「知ってるも何も、昨日かな、ケンカして瞬殺した相手だね」
愛美は、お弁当のミートボールをお箸でつまみ、そのまま口の中に放り込む。
「瞬殺て……」
「相手はこの辺り一帯で2番目に強いって触れ込みだからね。ま、まだ私を知らない人もいるみたいだし、また誰かしらと私はケンカすることになるでしょうね。1番強いのは私だし」
怪我一つしていない愛美がいうと、嘘臭く感じてしまう。
だが、その話の全てが事実だった。
「だったら、また、彼は戦いを挑んでくるよね」
淑子がお弁当を袋にしまっている愛美に聞く。
「来週くるって言っていたから、きっと来るでしょうね。まったく、迷惑なんだけど」
愛美はため息混じりに言う。
「んで、どうしたの、いったいさ」
「実は……」
淑子は、ついこの間起こった出来事を、包み欠かさず愛美に教えた。
「なるほどねぇ、で、お礼を言いそびれたから、それが言いたいと」
こくこくと淑子はうなづく。
「ま、としちゃんらしいね」
水筒からお茶を一口だけ飲んで、愛美は続ける。
「とりあえずは、来週くる?」
「くるって、どこに」
淑子が首を傾げる。
「決まってるでしょ、タイマンのところによ。何かあっても助けられる保証はないけど、あいつは何か卑怯な手を使うようなやつじゃないし。きっと大丈夫だと思うよ」
愛美が軽くいう。
さらに、
「あいつの親が弁護士だからねぇ。困ったようなことにはならないと思うよ」
「え、弁護士?」
「そ、弁護士。知らなかったの」
コクリとうなづく淑子に、ちょっと考えてから愛美が続けた。
「あいつ、いろいろと親から言われて育ったらしくてね。それで反抗期って感じだね。言い方はおかしくなるけど、節度をもってヤンチャしてるって感じかな」
「節度をもって、ねえ」
ケンカ自体が、もはや節度をもってやっていないと思ったが、淑子はそれを言わなかった。
「新参者がどんどんと出てきて、群雄割拠の時代になっている今、組織を束ねるには、相当な覚悟がいると思うわ」
「愛美ちゃんは、組織とかって作らないの?」
「面倒だしねぇ」
水筒も片付けて、淑子をじっと見つめる。
「それに、何かあった時に、部下とかだと、ほら、いろいろとしなきゃならないじゃない。私は一人だけで戦っている方が、楽だからね」
「でも、昔は彼氏がほしーとか言ってなかったっけ。それも仲間じゃないの?」
愛美は、周りを注意深く見回し、淑子に言った。
「彼氏なんだけどさ、実は部活の先輩がカッコ良くてさ、それでいて、とっても優しいの」
「もしかして、惚れちゃった?」
コクコクと、はっきりと愛美はうなづく。
「なら、告白しちゃえばいいんじゃないかな」
「それができたら、こんな葛藤はしてないよぉ……」
愛美が首をがくんと下げて、机をまくらにした。
「なら、ラブレターでも渡したらいいんじゃないかな。うまくいけば、ちゃんと付き合えるだろうし」
明らかに嫌そうな顔をしながら、愛美は寝転がったまま、上目遣いでジト目して淑子を見た。
「やってみなきゃだめだって、いつも言ってるじゃない」
「そうだねぇ」
むくりと起き上がり、それから淑子は愛美に策を授けた。




