1/10
プロローグ
「あいつは悪魔のようなやつだ」
そう噂される男がいる。
「彼女は、まるで天使のようだ」
そう噂される女がいる。
男は、名を祝田敬介という。
女は、名を改田淑子という。
敬介は小学校の頃から、ずっとケンカばかりしていた。
彼は、喧嘩に楽しみを見出していた。
そして、強い男になろうとした。
その結果、高校で2番目に強いと評されるようになった。
高校の周囲の不良の頭領となった彼だが、必要時以外に喧嘩をすることを禁じた。
とはいっても、その必要時の範囲は曖昧だったが。
一方の淑子は、成績優良、品行方正、非の打ち所がない女子だ。
彼女は、その話術で相手を圧倒することができた。
そのせいか、先生たちからの評判も1、2をあらそうほどによかった。
そんな彼女が中学校の、そしてのちには高校の生徒会長を務めることになるのは、ある意味で当たり前とも言えるだろう。
交わるはずもない二人。
だが、同級生であり、同じ高校に片方はトップ、もう片方はブービーで入学したといううすいつながりしかなかった二人の運命は、ある時に大きく変わることになる。