一章―――開幕
あぁ、文才がほしい…。
本を読もう本を…。
――――――――――東京新羽田国際空港第13ターミナルEカウンター
俺は待っているのだ。
この入国手続きなる物が終わるのを
スタードリップコーヒーことスタドのコーヒーは7杯目に突入し正直に言えば気落ち悪い。
ケータイを出してみるも圏外
担当者である佐藤某さんは俺のために各所に電話を掛けまくっている。
まったくもって申し訳ない。
俺も何も知らなかったのだ。
あの女が行けと言ったから来たのだ。
入国で手間取るなんて思わなかった。
ではなぜこの俺が引っ掛かっているのか
軽く経緯を説明しようと思う。
まずは俺の入国ビザのミス
今回取ったのは留学扱いになる修学ビザ
しかし、俺の場合には異能者なので異能ビザを取ってから就学ビザを取らなければならなかったのだ。
残念ながら俺には異能ビザがない。
なので、俺の一応祖国であるアメリカに問い合わせをしているのだ。
というわけで待機すること四時間。
本来であれば、今日のクラス分けで俺も参加し、学園生活が始まるはずだったのだ…。
時刻は9時2分
集合時刻は8時30分
仕事柄遅れることを許されなかった俺としては非常に胸が痛い。
右腕の時計を見る。
秒針は全力疾走を続ける。
ちょっとぐらい休めばいいのに…。
なんて馬鹿なことを考えていると、佐藤さんがこちらに走ってくるのが見える。
「はぁはぁ、お待たせしましたぁ」
なんかふにゃふにゃした人だな…。
これが俺の第一印象
しかし、胸に燦然と輝く五芒星は二つ。
つまり、高等異能管理官
詳しい説明は省くが異能者に対する警察の幹部だと思ってくれればいい
この年齢ので仕上がるというのは相当なキャリアか
凄腕の実戦班なのかどっちかだろう
彼女はぱらぱらと資料をめくり一人唸っている。
なんだ?不備でもあるのか?
「あのぉ…いいですかぁ?」
不意の問いかけに驚きを隠しつつ
「あ、はい」
と何気なく答える。
「貴方の能力ってこれで間違いありませんかぁ?」
見せられたのはペラペラのコピー用紙
そこには俺の身長やら何やらが詳細に書き込まれている
それの下部異能の名前を見て答える
「間違ってませんよ、俺の能力は不死です。」
あっけらかんと答える。
「はぁ、そうですかぁ…。不死のかたはよく見ますが貴方のようなタイプは初めてですぅ…。」
はぁ、そうですか…。
俺は何も言わない。
それを確認した彼女はいろんなコピー用紙に楽しそうにハンコを押している。
最後は俺の拇印で締めくくられすべての紙にハンコのマークがついた。
その何枚かを俺のパスポートに挟み渡される。
「大変長らくお待たせしましたぁ、これで入国できますよぉ」
「はい、ありがとうございます」
「いぇいぇ~、お気になさらずぅ」
俺は飲みかけのスタドのコーヒーと、バックを手に持ち立ち上がる。
最後に軽く手を振って別れる。
--------------------------------
彼女こと、佐藤結月は背中の汗がしたたり落ちるのを理解していた。
彼…先ほどの入国手続きの彼であるが、正面に座ってから一秒も気が抜けなかった。彼は私を警戒していた
それだけなのだ。彼が何か殺意を向けてきたわけでもなんでもない
ただの警戒心
それに私は戦慄した。
恐らく腰にある対異能者用の銃にまで気付いていただろう…。
仮にも五芒星二つ持ちの私がかなわないと悟るほどの相手
17歳にしてどうすればあんな風格が手に入るのであろうか…。
彼女は戦慄を覚えつつスタドのコーヒーを飲む
―――――やっぱり、私には合わないやコーヒーは…。
入国手続きを終えて空港を出る。
この軽く髪を撫でる程の蒸し暑さ
―――――あぁ、やっと日本だ…。
懐かしの国
俺の故郷
あの女の弟子になる前に住んでいた平穏の大地
彼は帰ってきたのだ
7年ぶりに
ここから再び彼の物語が始まる。
彼―――――吉野 政行のものガタリが
酷評覚悟です
ご意見くださーい