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番外編 まあくんの涙…プライスレス

泣いたまあくんはどうなった?

僕は目に涙をためて走っていた。こうなった原因はすごく些細なことだ。

あいちゃんに僕がやった宿題を写させてあげないって言ったら、あいちゃんが僕の事を大嫌いって言った…それだけの事。

小学生よりも低レベルなものかもしれない。

いつもなら…五月蠅い!!で終わるはずのあいちゃんに大嫌いと言われたのがしょっくだったんだ。

あいちゃんに大嫌いと言われたって事は、僕にとっては死ねと言われたのと同じようなものだ。



教室に着いた僕は、教室の後ろの窓際にしゃがみ込んで俯いた。

いつもなら自分の籍に着くんだけど、そんな気分じゃない。

学校には来たけれども、授業を受ける気にもならない。

けれども、あいちゃんは勉強が分からないと必ず僕に聞くから答えたい一心で勉強した結果が、かなりレベルの高い丘の上高校の中でも、上位の成績を維持できるようになった。

当のあいちゃんだって苦手だと言っている化学だって上位50人までにはきっちりと入っている。



少しだけ冷静さを取り戻した僕は少しだけ焦っていた。

僕の周りをぐるりと、クラスの皆が囲んでいるからだ。

「どうしたの?まあくん?」

「あいちゃんが…。僕はあいちゃんの為にと思ったのに…くすん」

またさっきのあいちゃんの姿を思い出して悲しくなった。

本当に僕の事…大嫌いになったのかな?

そんなのは嫌だ。どうしよう。でも…僕から謝るのも変だし…。

「全くあの女は。かわいい皆のまあくんを泣かせるだなんて」

「本当。まあくんかわいそう」

「自分の事よりも、あいつのことを先に考えるだなんて…健気過ぎる」

皆は口々にあいちゃんの事を言っているけれども。あいちゃんのことを悪く言われることはない。

そんな皆の姿が凄く嫌な気分になった。

「うるさい!!あいちゃんのことを悪く言うなぁ!!うわぁ~ん」

更に泣きだした僕を、皆は呆れるように見ていた。



「それじゃあ、ホームルームはおしまい。まあくんは、こっちにいらっしゃい」

僕は担任の恵美先生促されて、とぼとぼと歩きだした。

「何?あいと何かあったの?」

僕はただ頷いた。どう答えていいのか分からないから。元々はあいちゃんが悪くって、僕が言った事が更に悪化しただけなのに。

恵美先生は僕を家庭科準備室に連れて行ってくれた。

「まずは座ってね。アイスコーヒー飲むでしょう?皆には内緒よ?」

恵美先生は唇に人差し指を当てて、にっこりと笑った。

先生らしくない態度に僕はきょとんとして見ていた。

コトンと先生はテーブルに氷の入ったアイスコーヒーを入れてくれた。カランと氷の音が涼しげに室内に響く。



「とりあえず、落ち着こうね」

「先生…アイスコーヒーは?」

「作ったんだけども…暫くは飲めないから。飲んでもらえると嬉しいなぁ。えっと…書類の申請には何が必要だっけ?」

「先生…それって…」

僕はある事に気がついた。でもそれは口にしてはいけないような気もした。

「今は…言わないでね。今年度はいる予定で来年度は休職しようかなって思ってる」

「そうなんですね。無理しないでくださいね。他には誰が知ってるんですか?」

「哲君位かな?奥さんが同級生だし、兼業主婦としては先輩だしね」

先生は、冷蔵庫から麦茶を取り出した。



「私の話はここまで。何があったの?」

「あいちゃん…僕の事いらないって…」

先生がくれたアイスコーヒーを一口飲む。苦さの中に、柔らかさを感じる。恵美先生見たいな味だ。

「あれ?私が聞いた話はちょっと違うけど…。ま、いいか。悩め若者よ」

「だって…あいちゃんは大嫌いって。だから…僕よりも大好きな人がいるんだ。だから僕の事がうざいんだ。僕なんかいらないんだ」

僕は思った事を正直に先生に伝える。それを聞いた先生は笑っていた。

「まあくん。今日の午前中はここで自習。ネガティブスイッチが切れるまでね。保健の先生が今日は出張でいないのよ。教科の先生からは自習プリントを預かってます。提出したら出席になるってから…いいわね?私は授業の資料を作るのにここか隣にいるから安心しなさい」

先生はそう言うと、パタパタと音を立てて、隣の家庭科室に移動してしまった。



家庭科準備室に取り残された僕はとりあえず、貰ったプリントを解くことにした。

丁寧に午前の授業3時間分しっかりとそろっていた。

プリントは夏休みに貰う時見たく、びっしりと問題が書かれている。

とりあえず僕はプリントの問題を解き始めた。

プリントを解き終わった僕は、恵美先生の手伝いをしながらまだ教室に戻っていなかった。

僕は教室に戻ろうとしたけれども、先生に押しとどめられた。

「帰ったら、あの子達またしつこいわよ?お昼から帰ったら?」

それで…今は先生の授業の準備をお手伝いしている。



「家庭科って…保健体育と被るんだね」

「家庭って事は家族も含まれるから、仕方ないんだよ」

先生は、体育課から借りた保健の資料を片手に自分の資料を作っていく。

「私がここを教えるのは気が引けるんだけども…」

「でも先生が結婚してるんだからいいんじゃない?先生だってあるんでしょ?でき婚」

「まあくんに言われるのはちょっとやだ。ないとは言わないよ」

「てっちゃんは…大学生でパパになったじゃない」

「哲君達は…お祖母ちゃん達が見てくれるから学校が休みのうちに出産できるように計算してたから…ね」

先生が授業で扱うのは、これからの未来予想図。

資料として広げているのは、哲先生の奥さんが高校生のころに書いたものと恵美先生が書いたもの。

「私は…結婚も出産も早まっちゃったけどね。真美は…本当に計画通り。あの子らしいけど、今回が双子なのは計算外って愚痴ってる」

てっちゃん夫婦がベビーカーを押してるのも、公園で遊んでるのも僕は知ってる。

「てっちゃん達の結婚って…高校出てすぐでしょ?真美さんの最初の子って…」

「もちろん、入籍後よ。それで、二十歳前に一人目出産して、教育実習を体が回復してからやって、もう一人出産してから教師になったの」

「普通じゃないよね?」

「そうね。でもあの二人だとらしいでしょ?私は覚えてるわよ。ランドセルを背負ってた二人をね。大きくなったものね」

「先生…そのネタは止めて下さいよ」

「そうね。折角だから…まあくんも書いてみる?できたら提出ね」

「はーい」



突然、携帯電話のバイブがなる。僕は携帯を開いてみた。

-ごめんなさい-件名のないシンプルなメール。あいちゃんからだ。

さっきまでうじうじしていた僕が凄く馬鹿らしく見えた。

このメールから、あいちゃんが勢いで大嫌いって言ったのが分かったから。

「先生、あいちゃんからメールきた」

「何だって?」

「ごめんなさい…って」

「そう。ほら…考えすぎだったでしょう?」

「はい…。ごめんなさい」

僕は素直に恵美先生に謝った。

「本当…まあくんは弘樹にそっくり」

「弘樹?誰ですか?」

「弘樹?10月から札幌に単身赴任になる私の旦那よ」

「ふぅん?旦那さんも先生が大好きだったの?」

「そうよ。まあくんより大変だったかも。隣にいないと大騒ぎだったから。私はそれでもと思ったけど…あいは違うでしょう?」

先生は僕に頬笑みを投げかけている。

確かに恵美先生とあいちゃんは違う。



「今のままの僕だとあいちゃんは疲れちゃう?」

「今のままなら平気。今以上になると逃げ出すわよ…考えてみなさい」

僕はちょっとだけ想像してみた。逃げられる前に…殴られそうだ。

「それに、あいはまあくんのことをどう思ってるのかしら?」

「僕は、あいちゃん以外はいらないって事を言ったよ。でもあいちゃんは返事に時間が欲しいって」

「幼馴染として好きなのか、まあくんだから好きなのか分からないんでしょ?私達もあったから」

「先生達はどうやって乗り越えたの?」

「私たちはたまたま二人揃ってまあくんと同じ考えだったの。だから分かってからは寄りそっていられた。でもあなたたちは違う。焦ることはないよ。哲君達だって、異性として交際し始めたのは、高校の文化祭後だから。あいの答えを待ちなさい。でも…悪い答えは出ないと思うわ」

「先生…」

「たまには先生を信じなさい。だって、二人の絆はそんなに脆くはないでしょ?」

僕とあいちゃんの絆…か。もう少し、待っていられるかもしれない。

「うん…待ってみる。ありがとう。先生」

「完全復活したまあくんには少し働いて貰おう」

僕はその後にみっちりと恵美先生にこき使われたのだった。



本当はもっとぶっとんだまあくんがいたのですが、昨今のニュースを見まして…マイルドに変更しました。


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