今日も同伴通学…ですか
「あいちゃん、学校に行くよ」
「そう…行ってきます」
まあくんに促されて私は玄関に向かう。
「だあめ。あいちゃんの荷物は僕が持つの」
「いいから。重くないし」
私は慌てて鞄を持つ。
「仕方ないなぁ。おばさん行ってきます」
「行ってきます」
「気をつけて行ってらっしゃいね」
私はまあくんが開けてくれたドアから外に出る。
夏の太陽は朝から力強く私達を照らす。
「行こう。まあくん」
私は先に歩き出す。
「待っててば。あいちゃん…」
後ろからバタバタをまあくんが走っている音がする。
これが私達の朝の定番。ご近所のおばさん方もまあくん頑張れって煽っている。
徒歩5分で私達が通う通称丘の上高校に着いた。
正式名称はC中央高校なんだけども、通称通り丘の天辺を切り開いた学校なので大抵の人は丘の上高校と呼ぶ。
私達の家は丘の上高校の天辺から少し下った所にある。
ちなみに一番近い学校が高校で一番遠いのが幼稚園だ。
学校に向かう真っすぐな坂道をひたすら歩くと正門にたどり着く。
逆の裏門になると、校舎の方が高台で裏門から校舎まで坂を歩かないと行けない。
裏門側の住民じゃなくて良かったとホッとする。
「あいちゃん…宿題やってある?」
「宿題?なんかあったっけ?」
「あいちゃん…今日の宿題やらないと放課後居残りって先生が言ってたでしょう?」
「そうだっけ?やってない!!どうしよう…まあくん」
私は上目遣いでまあくんを見た。
けれども、まあくんは一言だけ答えた。
「宿題は自分でやりましょうね?あいちゃん。僕が答えを教えるのは簡単だけども…それは、あいちゃんの為にならない」
「はーい」
いつもならこれでもかって位に私を甘やかしてくれるまあくんなのに、勉強になると別人。
決して手を貸してくれない。まあくん…クラスでもトップクラスなのに。
「ケチケチまあくん…大嫌い」
私は小さな声で呟いた。
「ひっ、酷い。あいちゃんの為なのに…うわぁん!!」
まあくんは泣きだして、一目散に学校に向けてダッシュして行ってしまった。
そして…ボッチになる私。周りの視線は非常に痛い。
「泣かなくたっていいのに…」
私は悪態をつきながら学校の正門をくぐるのだった。