008
短め。
「さて、では葵様の目的を果た――葵様?」
楓が、先ほどの戦闘で濡れてしまった刀身を懐紙で拭いながら葵を振り返ると、葵は地面にしゃがみ
込んでいた。
「どうしました!?」
驚きと心配を含んだ声音で楓が葵に問いかけると、葵は弱々しく言葉を返した。
「ご、ごめんなさい…腰が、抜けちゃって…」
「そう、でしたか…」
安堵。
溜息を一つついて、懐紙をそこらへ投げ捨てる。
今の楓を一言で表すのなら、安心の言葉以外は無いだろう。
「すこし、怖くて…」
「葵様」
ふわり、と楓が葵の前に移動して葵の両手を同じく両手で包み込む。
目を白黒とさせる葵に対し、微笑みかけながら楓は言葉を紡いだ。
「私が葵様を護ります。何時如何なる時であっても、私が葵様の剣です…。ですから、何も心配は要りません」
母が子に語りかけるように、優しく葵に諭す楓。
「かえ、で?」
「葵様にとっては仮初めの主従関係なのかもしれませんが、野分流において一番の教えは、『主に忠を尽くす』ことです。どうかそれをお分かり下さい」
「仮初めだなんて、そんな事は露程も考えていません」
「有難うございます。……さ、失せ物探しの続きと洒落こみましょう」
「はいっ!」
楓の手を取って立ち上がる葵。その顔には、先ほどまでの恐怖や不安は微塵も感じられず、今は喜色満面といった様子だった。
さて、百合の種を蒔こう
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