006
「失礼、少し取り乱しました」
「いえ、仕方の無いことだとは思いますし、大丈夫ですよ」
「そう言っていただけると有り難い。 …して、用心棒の件ですが――」
「受けて、頂けますでしょうか…?」
「謹んで、お引き受け致します。 貴女の身体に、たとえ下郎の指先、髪一本も触れさせる事の無いよう、約束します」
「あ…」
葵の顔に、笑みが広がっていく。その笑みは安心から来る物なのか、それとも、信頼できる用心棒を見つけたからなのか。
「ありがとう、ございます!」
「いえ、お気になさらず。 では、これから貴女は私の主です。 よろしくお願いします、我が主」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
葵の横に移動し、跪く。
「野分流第十二代当主、朽葉楓、私は、我が主の刀となり、楯となり、手となり、足となり、目となり、何時如何なる時でも、我が主と共に生き、この命尽きるまで、主を守り抜く事を、今、主の御前にて誓います」
「…確かに、聞きとげました。 よろしくお願いします、楓」
「はい、葵様」
静かに、脇に置いてあった打刀を鞘から抜き、葵に差し出す。
葵は刀を受け取ったものの、何をして良いのかわからず戸惑っている。
「海の向こうの国では、忠義の証として肩を剣で叩くそうです…。 姫を守る騎士、今回の依頼にぴったりだとは思いませんか?」
合点がいったのか、微笑を浮かべ頷く葵。
そのまま刀を持ち上げ、楓の肩を軽く叩く。
…西洋では、従者が跪いて行うのだが、二人は立ったまま主従の儀を執り行ってしまった。
まあ、情報が少ないと言えば仕方ないのだが、いまいち締まらなかった。
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