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狼の恩返し  作者: kuro
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道中

俺達二人は昼食をすませ、街で旅に必要な保存食などを買った後、さっさとアガストの街を出た。


王都まではあと数日は歩き続けなければならない。幸い、天候が安定している今ならば距離が稼げる。


…一応、王都まで人を運んでくれる大型の馬車ならアガストの街にもあったのだが、俺達は乗らなかった。


いや、正確には乗ることが出来ないのだ。


理由は、俺とルースは馬と相性がよくないから。


俺は馬に怯えられ、ルースは馬を弱らせる。


詳細は面倒なので言わないが、つまりそういうことだ。


下手をすると乗っている馬を道中で使い物にならなくさせてしまう。


そうすると、俺達はともかく他の乗客や御者が困る。


だから、馬車に乗るのはやめて徒歩で王都に向かっているのだ。


二人とも体力には自信があるので、ぐんぐんと王都への道を進んでいった。


しかし、王都までの道とは随分と危険が多いようで、野生の獣やモンスターによく遭遇した。


まぁ、その殆どは俺達の胃に大人しく収まったのだが、中には煮ても焼いても食えない奴はいる。


例えば、俺達二人の前に突然やってきた「アレ」とかだ。






「おい! そこの男二人っ! 今すぐ有り金を全部寄越せ!」



「………。」「………。」


俺達は周りを取り囲む「そいつら」を見た。


ズタボロの服に、使い込まれた刃物、人相のよくない顔。



そんな奴らが十数人ほどで俺達を囲んでいた。


俺は先ほどの台詞と、目の前の奴らの服装を見て確信した。



「あぁ、山賊か」



俺がのんびりとそう言うと、隣にいたルースが俺にこう言ってきた。



「いや、待ってくださいルース。山賊は山道で遭遇するものです。ですから、きっと彼らは盗賊でしょう」



確かにルースが言うとおり周りに山は見えない。それにここは街道。



だが、



「おいおい、あんな奴らが人から者を盗めるような高等テクを持っているとは思えないぞ?」



俺が目の前を取り囲む山賊風の男を数人指差していった。


そいつらはいかにも頭が鈍そうだった。そんな奴らが、人の財布の抜き取りや空き巣狙いが出来るとは俺は思えない。


俺がそうやって反論すると、ルースが少し首を傾げて山賊風の奴らを見た。



「ふむ。確かに『鈍そうで』『おつむが弱そう』ですね」


「だろ?」


俺の反論に、ルースは少し悩み始めた。


「うーん? 確かこういった人たちの職業でぴったりのがあったような…」


「あー、俺もそれは思った」


「なんて言うんでしたっけ?」


「忘れた」


「仕方ありません。道中で思い出すとしましょう」


「そうだな。いい暇つぶしになるだろ」


俺とルースがそうやってのんびり会話をしていると、当然山賊風の男達が騒ぎ出した。





「手前らっ!! 自分の立場分かってんのか!!」「ふざけやがって!!」「身包み全部はいじまえっ!」「剥いで奴隷商に売っちまおう!」「そうだ!」「それがいい!」「片方は変態貴族に高く売れそうだ」「そうだそうだ」



なんだか物騒な台詞が聞こえてくる。



「─おい、ルース」


「はい?」


「あいつらなんで怒ってんだ?」


「さぁ?」


山賊風の奴らがいきなり怒り始めたので、訳が分からずルースに聞くと、こいつも理由が分からないようだった。



「まぁ、いい暇つぶしになるか」


俺はそう言って肩に背負った荷物を置いた。


そして、首や肩、それに指の骨をボキボキ鳴らす。


その様子を見ていた山賊風の奴らは各々の武器を取って戦闘態勢をとる。


山賊風の奴らの武器は、殆どが鉈や棍棒だが、中にはメイジスタッフを持った魔術師っぽい奴や、小型の弓を持っている奴もいた。


対して俺は武器なし。ルースにいたっては戦う気がないようで欠伸をしている。


どうやら俺だけがこいつらとやるようだ。



…まぁ、いいストレス解消になるだろう。



俺がそうやって少しボーっとしていると、小型の弓を持っていた奴が俺に向けて矢をうってきた。



「おおっ!」


俺はそれを半歩引いてかわす。



「らぁっ!!」



するとかわしたと同時に、山賊風の男が鉈を持って俺に突撃してきた。


俺はそいつに向かってテキトーに拳を振った。



「ぐえっ!?」



鉈が届くよりも先に俺の拳がそいつに顔面に届いた。



「おっと」



グイッ


俺はのけぞって倒れそうになる鉈男の襟を掴んだ。


弓は後々めんどくさい。




なので、矢をうってきた奴に向かって俺は鉈男を思いっきりぶん投げた。



「当ったっれっ!!」



「ぎゃーーーーーー!!!」



ズドン!!



「「ぐぇぇっ!?」」




まるで砲弾のようなスピードで人間が飛び、そのまま鉈男の頭突きを腹にくらった弓男と鉈男は気を失った。



「おお、当たった当たった」



「「……………。」」



俺は見事命中した事に喜び、次の標的を選ぶ。




「うーん、次は少し重い奴がいいな。あんまり軽すぎると飛びすぎてどこ飛んでくかわからん」


「「!?」」



俺はテキトーに体の大きそうな奴に狙いを定め、そいつに向かっていく。



だが、



カッカッカッカッ



ササッササッ



俺が歩くと、山賊風の奴らが俺を避ける。


仕方ないので一番動きの鈍そうな大男に向かっていき、そいつの襟首を掴んだ。



「逃げんな」


「うわわわっ!」



重さ的にはちょうど良く、「弾」が大きいので的にも当てやすそうだ。


俺は襟首をつかんだまま、そいつの腰の辺りを持って持ち上げた。



すると、周りにいた山賊風の奴らがわれ先へと逃げ出した。


俺はそいつらの中で動きの鈍そうな奴を選び、そいつに向かって「弾」を投げた。



「せいのっ!!」


「ぎゃーーーーーー!!」


弾は一直線で狙った的のほうに向かっていき、見事命中した。


そしていつの間にか、周りには山賊風の奴らの姿は俺が投げた「弾」と「的」以外は全部消えていた。


俺はその様子に、傍観を決め込んでいたルースのほうを向いて言った。



「じゃ、行くか」


「そうだね」



地面に置いた荷物をもう一度背負い、俺達は旅を再開した。



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