表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼の恩返し  作者: kuro
40/45

祝勝会3

男性とあまり接したことがないアマリーにとってみれば、ガルーのような男に声をかけるのはとても勇気がいることだった。


 しかし、アマリーは声をかけた。


「あの…ガルー選手ですよね? 今大会で優勝なさった……」


 それがガルーを護衛として雇う為に必要な事であり、また大会優勝者に対する礼儀であったからだ。


「ん? あぁ、俺がそうだが…。なんか用か?」


 声を聞き、ガルーは少し驚いた顔で娘の方に向き直った。いきなり身なりのいい貴族らしき娘が話しかけてきて驚いたのだ。


 だが、会場の中にいた他の貴族たちはガルーのその返答に少し眉をひそめた。


 貴族相手に対しての言葉遣いがなっていないと思ったからだ。


 しかし、アマリーはそんな事はあまり気にしないのか、特に気にした様子もなく話を続けた。


「……実は、ガルー選手の折り入って頼みがありまして」


「俺に?」


「はい…、えっと、あの実は……」


 少し言いよどみながら次の言葉をどうやって切り出そうかと悩んでいるアマリー。その後ろでは侍女であるリースが心配そうな顔で主人の後ろ姿を見ている。


 その様子に、ガルーはピンと来た。


「……まさか、俺を雇いたいとかって話か?」


 他の大会参加者が貴族たちにスカウトされているのをずっと会場の長椅子で見ていたガルーは、試しに鎌をかけてみた。


 すると案の上、その言葉を聞いたアマリーは驚いた顔でガルーの顔をまじまじと見た。


 そして、その顔を見たガルーは少しばかり苦い顔をした。


 しかし、次の瞬間には表情を引き締めて毅然とした態度をとった。


「…だったら、悪い。俺は誰にも雇われるつもりはねぇんだ。他を当たってくれ」


 そう言ってガルーは給仕に空になったグラスを渡してどこかに行こうとする。


 相手の目的がわかったガルーはさっさと人気が無い場所へ消えようとアマリーのほうを振り返りもせずに歩き始めた。


「ま、待ってください……!」


 これにアマリーは慌てて追いかけようとする。


 だが、ガルーとドレスを着たアマリーとでは歩く歩幅が全く違う。


 距離は縮むことは無く、ただ距離が開くだけとなった。


「も、もう少しだけ話を……!」


 その事に焦りを感じ、アマリーは急いでガルーを追いかけようとする。


 しかし、その所為で普段は着慣れているはずのドレスが足に絡みついた。


「あっ…!」


 アマリーは慌ててバランスをとろうとするが、足は彼女の思うように動かず、このままでは大勢の人のいる前で派手に転ぶことになる。


(だめ。転ぶっ……!)


 今にも転びそうなアマリー。


 しかし、それを見逃すガルーではなかった。



「……何やってんだアンタ?」


「え?」


 

 気がつけばアマリーの体はガルーに支えられていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ