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狼の恩返し  作者: kuro
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武闘大会5 決勝戦

 大会は順調に進み、すでに残すは決勝戦のみとなった。


 そして、その決勝戦を戦うのは今大会初出場のガルーと、前大会優勝者の騎士団副団長ノワール。


 ノワールは騎士団には珍しい女性騎士であったが、国一番のレイピアの使い手。


 ガルーは素手で剣や槍を持つ猛者たちを力ずくでなぎ倒すのに対し、ノワールは細身のレイピアで敵の隙を突き、華麗に勝ち上がってきた。


 その戦いには華があり、観客は大いに盛り上がった。


 そして、その盛り上がりは決勝戦が始まると最高潮に達した







※※※※※※







 『カッ! カッ!』


 『ガッ! ガッ!』



 突き出される剣撃を拳で払い――


 『ガンッ! ガンッ!』


 『キンッ! キンッ!』


 繰り出される拳撃を剣で払い落とす――



 両者の拳と剣から繰り出される連撃の数々に、観客が歓声を上げる。


 耳がおかしくなるほどの音の中で、二人の戦士がさらに攻撃の手を増やす。



 目にも止まらぬ突きの連撃。


 それに対抗しての拳の連打。


 

 そして、それを回避する両者の驚異的な見切り。


 試合開始から有効打はなく、勝負の行く末はまだ誰にもわからない。


 それゆえに観客は熱狂する。


 どちらが勝つのかわからない勝負の結果、その過程の姿に。


 観客は熱狂する。


 素晴らしい戦いに、それを見せてくれる強き戦士達に。


 拳を握り、足を踏み鳴らし、声を枯らし、最後の試合に相応しい戦いを褒め称える。

 

 


 ――だが、どんな戦いにも終わりは来る。


 


 ガルーのナックルガードは度重なる攻撃にひしゃげ、ノワールの剣は刀身がなまくらと化している。


 『武器』を使って戦えるのは、両者ともあと一撃だけだろう。


 つまり、両者の戦いはもうすぐ終わる。


『『…………。』』


 観客にもその緊張が伝わり、闘技場は静まり返る。






「…………。」


「…………。」



 一定の距離を保ったまま、ガルーとノワールは対峙する。


 ガルーは両の拳を胸の高さで固定し、ノワールは鋭い剣先を相手の喉元に向かって狙い定める。


 そして、両者の緊張感が最高潮に達した時。


 両者が動いた。


 先に動いたのはノワールの方。


 鋭い剣先をガルーの喉元に向かって一直線に突き出す。


 ノワールが得意とする必殺の一撃だが、すでに戦いが始まってからは何度も破られてきた。


 だが、武器がなまくらとなり、ノワール自身も疲労困憊の今では、これが繰り出せる最後の一撃だった。


 

 ――だが、その最後の一撃は相手に通用しなかった。



 突き出したレイピアは目標に当たらず、空を斬る。


「しまっ……!」


 空ぶったと分かり、すぐに突きの姿勢から体を戻そうとするが、疲労困憊のノワールの体はそこで防御に回すだけの力が残っていなかった。


「おらぁっ!」

 

 気がつけばノワールの目前には、先ほどの一撃を紙一重でかわしたガルーの姿が映る。


 ガルーはすでに反撃の態勢に入っており、このままではまともな防御も出来ずに直撃を食らう。


「くぅっ……!」


 ノワールが反射的に身を庇おうとするがこのままでは間に合わない。


 だが、その時。


「…ちっ!」


 ガルーの攻撃の軌道が変わった。


 ノワールの腹辺りに向かうはずだった攻撃は、何故か武器を持つ手の方へ。


 そして、そのままアッパーカット気味の拳がレイピアの柄に当たる。


『ガンッ!!』


「っ……!」


 その衝撃は疲労したノワールに耐えられる物ではなく、ノワールはレイピアを落としてしまう。


「ふっ!」


「うっ……!」


 そして、その瞬間を逃さずにガルーの拳がノワールの鼻先で止まる。


 しばらくノワールは目の前の拳を見つめていたが、最後は悔しそうにこう呟いた。


「……私の負けです」


 この瞬間、勝負が決まり。


 ノワールは自分の敗北を認め、ガルーの優勝が決まった。


 観客はその時、自分の声が枯れるまで声を出し続けた。



 



 


※※※※※※




 その後、優勝賞金や賞状の受け渡しなどを大げさなやり方で渡され、『さぁ、帰るか』と思っていたガルーだが、思わぬ事がまだ残っていた。



 それは、『大会優勝者祝勝会』だった。

やっと書きたかった所が書けます。

ずっと書きたかったんです。

ガルーの正装姿。




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