獣人の少女1
短いです。
故郷で「ウルフヘジン」と呼ばれる戦士団に所属していた頃の話だ。
「ウルフヘジン」は他族から獣人を守るために出来た人狼族の戦士団で、その主な活動は他国にさらわれた獣人族の救出と村や集落をあらすモンスターの討伐だ。
当時の俺は戦士として、いくつもの密売組織を壊して同胞達を助けていた。
──そして、その助けた同胞たちの中に妙につきまとってくる奴がいた。
獣人族の中でも敏捷性に長けた「ケットシー」と呼ばれる一族で、檻の中で競売にかけられそうになっていたところを俺が助けた。
しかし、そのせいで妙になつかれた。
正直、子供の面倒など見たことがなくてどうしていいのか分からなかったが、そいつを里まで帰すまでは仕方なく俺が世話をしていた。
おかげで戦団の仲間達からはいいようにかわれた。
「足が痛い」と騒ぐのでおぶってやったり、「寒い」といってぶるぶる震えているので「獣化」して湯たんぽの代わりになってやったり、色々と世話を焼いてやった。
今思えば、よくあれだけ我慢して世話をしていたもんだと自分でも感心する。
──さて、問題はここからだ。
俺は断言する。
このことに関して俺は感謝される覚えはあっても恨まれる覚えは全くない。
ましてや、どこぞのアホルースのように女で修羅場になるようなことは絶対にない。
それなのにどうしてだ?
「ガルーさんが嘘吐いたぁ! 私に嘘吐いたぁ!」
「……ガルー? この子あなたの知り合い?」
「………。」
「私のことお嫁さんにしてくれるって言ったのに、嘘吐いたぁ!」
「お、お嫁さん?」
「…いや、言ってねぇし」
「うわぁーーーん! 昔の出来事なかったことにしようとしてるぅ!」
「ガルー、あなた…」
「……勘弁してくれ」
朝、警備隊の屯所で、久しぶりにあったそいつと見事に修羅場をつくっているのは……本当に何故だ?
次はテレサ視点の話です。