一ヵ月後。そして、なぞの人影
お久しぶりです。
これからの展開に悩んで更新が遅れました。
詳しくは後で活動報告で書きます。
ガルーがテレサに屯所で働くと言い出してから早一ヶ月。
本当にガルーはテレサと一緒に警備隊で働き始めた。
初めはそのことに難色を示していたテレサだったが、ガルーの仕事ぶりを見ているうちに徐々に何も言えなくなった。
驚くべきことにガルーは警備隊の隊員として優秀だったのだ。
どんな落し物でも数日中に見つけだし、揉め事が起きれば来ただけで騒ぎを止める。
喧嘩中の頭に血がのぼった奴らだろうが、舌打ちをして「あぁ?」と睨んだだけで喧嘩を止める。
見た目はチンピラだが、外見に反して意外と優しいところがあり、街で迷子などを見つけると仕事をほっぽってめんどくさそうにだが助けに向かう。
─こんな隊員がいると近隣の住民が知れば、人気者になるのだろうが、ガルーは少し違った。
その理由は…テレサとの関係が原因だった。
ガルーは仕事中ずっとテレサのそばから離れない。
見回りだろうが、書類仕事だろうが、四六時中そばにいる。
まるで従者のようにテレサの後ろを歩き、テレサが仕事で何かを頼むと猛ダッシュでその仕事を片付けて戻ってくる。
その姿は傍目には情けなく見えてしまい、近隣の住民達はガルーのことを優秀な隊員とは思えず、住民の中には「テレサの腰巾着」「金魚のふん」などと呼ぶ輩もいる。
そのせいで、ガルーはあまり住民にすごいと思われることはなかった。
彼らがもしもガルーの本当の強さを目にすれば、そのような考えなど二度と思いはしないのだが…あいにくとガルーが例の辻斬りを倒したこともわけあってあまり人に知られていないので、ガルーの凄さを知っている人間は王都には数えるほどしかいなかった。
※※※
「あー、くそ。あの猫、さんざん暴れやがって」
「それはあなたが鬼のような形相で追いかけたからでしょう? きっと皮でも剥がされると思ったのよ」
「んなことしねぇよ」
「じゃ食べられるとでも思ったのよ」
「…お前は俺をどういう目で見てるんだ? あ?」
ガルーとテレサは街の巡回の帰り道、話をしながら歩いていた。
話の内容は、先ほど捕まえた猫の話だ。
猫は住民の飼っていた仔猫で、屋根に登って降りられなくなったのをガルーが屋根に登って助けたのだ。
しかし助けたはいいが、猫はガルーに怯えたのかどうしたのか物凄く暴れて、ガルーの手や腕にひっかき傷をつけた。
そのことでガルーは愚痴をこぼし、猫につけられた傷ごときでぐだぐだ言うガルーに向かってテレサがここぞとばかりにからかっているのだ。
「あー、くそ! お前も一度は猫に引っ掻かれてみろ! そうすれば俺の気持ちが分かるから!」
「残念、私は猫と相性がいいから引っ掻かれるなんてことはありません」
「は? 相性? そんなもの関係あるのかよ?」
「あるわよ」
「はっ。そんなものあるわ……けが、………あるなぁ。…うん」
「? どうしたの?」
「…いや、お前の言うとおりだ。猫には相性がある。そして俺は相性が悪い。間違いない」
どこか遠くを見つめるようにしみじみとつぶやくガルー。
どうやら、何か心当たりがあるようだ。
「??」
ガルーの考え変わりようにテレサは不思議がったが、そろそろ屯所の近くまできていたので、深く追求せずにそのまま二人で歩き続けた。
──無言で歩き続ける二人。
その二人の様子を、実は遠くから見ていた人影がいた。
「………。」
…だが、その人影は何故か─
「…うぅっ。ホントにこんな所にいたぁ。しかも、知らない女の人といるぅ」
二人が一緒に歩いている姿を見て、肩を落としていた。
影から聞こえるのは高い少女の声。
声からは隠しようのない悲しみが溢れ、ときおり鼻をすする音も聞こえる。…どうやら泣いているようだ。
……暗殺者の類ではないようだが、何故か二人のことを恨みがましい目で見ている。
何故少女が泣いているかはわからないが、どうやら二人の内の片方とは知り合いらしい。
その証拠に時折、「ガルーさんの馬鹿ぁ…」とか「女たらしの不良狼」などと、ある人物のことを恨みがましくつぶやいている。
……少女が何者なのかはまだ分からないが、とりあえず敵ではなさそうだった。
誤字と脱字の報告と感想をお待ちしています。