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狼の恩返し  作者: kuro
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退院後の職場で

私が辻斬りに襲われてから、一ヶ月半後。


私は退院した。


襲われたときに出来た傷は、今はもうほぼ完治した。


入院した当初はかなりひどい状態だったのだが、医師や治癒魔術師の人達のおかげで今はとても元気だ。


傷跡が残ったりするかなど心配もしていたが、医者と治癒魔術の人がかなり腕が良かったのか、入院する前と殆ど変わらない肌となった。


おかげで襲われてから一ヶ月半後の今日。


私は退院することが出来た。





…だがしかし、私には問題があった。


…実は私は今ガルーに借金をしているのだ。


今回の怪我の治療費だが、ガルーが勝手に医者にお金を渡したらしく、私はそのお金で最高の治療を受けていた。


初め、そのことを聞いたときは驚いて、私は彼にお礼を言おうと思っていたのだが、ガルーは『あの日』以来全く見舞いに来ることはなかった。


立て替えてくれたお金を返さなきゃいけないのに、本当に『あの日』以来全く顔を見せなくなった。


代わりに、ルースさんはよくお見舞いに来てくれた。


彼は本当によく気がつく人で、入院中の暇つぶしに面白い本を何冊も持ってきてくれた。


私はルースさんににガルーの居場所を聞いてみたりもしたのだが、ルースさんは「退院すればすぐにわかりますよ」とにこやかに笑って答えてくれない。



そして今日、私はガルーに治療費を立て替えてくれたお礼を言えずに退院した。




「…とりあえず、職場に明日から書類整理でもやらせてもらえるように頼もう」



どこにいるかわからない男を捜すよりも、まずは自分の生活をなんとかするために私は自分の職場に歩き始めた。



そして、ありえない場所でガルーを見つけた。















「よう、久しぶり」


「………。」


私は目に前にいるガラの悪い男を見て、驚きで声がでなくなった。


場所は私の職場である、警備隊の屯所だ。


そこは数人の警備隊の人間がいつもいて、書類整理や事件の報告書などをまとめている。


机が四つほどあって、その中の一つに見慣れた男が座っている。


そこにいたのは、私が入院中ずっと会おうと思っていた、目つきの悪い、黒ずくめ男だった。


というか、ガルーだった。


私がその姿に声も出せないほど驚いていると、ガルーがとんでもないことを言った。



「言ってなかったけど、俺ここで働くから」


「はぁっ!?」


私はその言葉にやっと声が出せるようになった。



しかし、病み上がりか混乱しているからか、言葉がまとまらない。



「な、なんで! だ、だってあなた! ギルドで、し、仕事」


「あー、ギルド? 別にあれは兼業でも構わないみたいだから、大丈夫だ」


「え、いや、だって、 えぇ!?」



私は驚きで頭がぐちゃぐちゃしてきた。


私がそんな風に混乱していると、



「だって、こうでもしなきゃお前が今度無茶するとき止められないだろ?」



ガルーが頭をかきながら少し困った顔でそう言った。


「!?」


私はその言葉を聞いて、「まさか…!」と思った。


もしかして、この馬鹿は…!


私が頭の中で一つの仮説が浮かび上がった。



(私が怪我したから、警備隊に入った…!?)


あまりにも馬鹿げた考えだと思ったが、このガルーという男の過去を考えるとあながち間違いでもなさそうだった。


というか、多分そうだ。


私はそう考えて、再び驚愕で固まった。



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