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狼の恩返し  作者: kuro
18/45

戦闘開始

自分、酷い話書いてるほうが書くスピード早いです。

復讐とか絶望とか挫折とか、書いてるとすごく楽しい。

……もしかして自分って、かなりやばい?

王都の夜。


とある人気のなくなった酒場で、俺は酒場のカウンターに座る「そいつ」に声をかけた。


いや、声をかけたというよりも、宣告したと言ったほうがよかったかもしれない。


俺はそいつに向かってこう宣告した。



「死ね」


ボッ!!


宣告とほぼ同時に蹴りを「そいつ」の背中目掛けて放った。


「ッ!!」


だが、「そいつ」は俺の蹴りを椅子から転がり落ちるようにして避けた。


そして、


「…一体、なんのつもりだ?」


そう言って、俺の攻撃を避けた「そいつ」はゆっくりと身を起こした。


「………。」


俺は「そいつ」の格好を改めて確認した。


背丈は170ほどで比較的細身の男。


服装は大陸の人間の服ではなく、東国風の丈の長いヒラヒラしたもの。


男のくせに髪が長く、頭の後ろで馬の尻尾のように紐で縛ってある。


そして、男が腰に持っているかすかに湾曲した細長い物体。


すべて、テレサの同僚から聞いた話と一致する。


そしてなにより、男が腰の持っている物体からは「匂い」がする。


動物やモンスターの血とは違う、人間の血の「匂い」が。


俺はそれを確認した後、「そいつ」に向かって言った。



「てめぇを殺す」


「…ほぅ、拙者の正体がわかるか。ふむ…。これはちと、斬りすぎてしまったか」


「状況がわかってるなら話が早ぇな。ならさっさと、…死ねっ!」



言葉と同時に距離を詰め、右足で「そいつ」の首を狙った。


「ふっ!!」


だが、「そいつ」は俺の蹴りを身を反らすことで避け、今度は腰に持った獲物で俺を攻撃してきた。



一閃



まるで、閃光のような一撃が俺の蹴り足に向けて放たれた。


閃光と俺の蹴り足がまるで交差するように交わろうとするが、俺は蹴りの軌道を無理矢理変える。


「っらぁ!!」


俺は足の踵を曲げ、閃光に向かって踏む潰すように足を振り下ろした。



ガキンッ!!


俺の足と閃光が交わり、金属音が酒場に響いた。











※※※


「…それが、てめぇの獲物か」


俺は自分の鉄靴の先にある、「そいつ」の獲物を見た。


変わった刃物だった。


細長いくせに、妙に身が厚い。


おそらく、東国の戦士が使う「刀」というものだろう。



「…驚いた。拙者の初撃をこのようにして防ぐとは…」


「……うるせぇぞ、辻斬り」


「…ふむ。もしかして、お主は拙者が斬った奴らに縁のある者か?」


「…だったら、どうしたよ」


「ふふっ。「試し切り」のついでにお主のような手練が現れるとは嬉しい限りだ」


「…今、なんつった?」


「試し切りと言ったのだ。この名刀の」



そう言って、顎で俺の足と鍔迫り合いをしている指す辻斬り。


そして、そのまま話し続ける。


「この刀は、大陸に渡った拙者の国の鍛冶師が大陸の鉱石を使って作った刀でな。実に不思議な「力」を持っているのだ。


だが、その「力」を使うには少し「慣れ」が必要でな。少し、この街の人間に協力して貰った」


「………。」


「おかげで、随分この刀に慣れることが出来た。これで拙者は…」


「黙れ…」


「ん?」



俺はべらべらと喋るクソ野郎に向かって、黙るように命令する。


そして、



ガッ!!



足で弾くそうにして辻斬りの獲物を蹴り、辻斬りから距離をとった。


辻斬りも鍔迫り合いから開放されることを望んでいたのか、再び距離を詰める事はしなかった。


そして俺は辻斬りと距離をとり、辻斬りに殺気を込めてこう言った。


「本気で殺す」


「………。」


俺の台詞を聞いた辻斬りは、黙って俺の事を見た。


その目からは先ほどまで喋り続けていた時の余裕はなかった。


おそらく、俺の本気の殺気を感じ取ったのだろう。もう無駄口を叩く余裕はなくなったようだ。


スゥッ



「………」


俺はその様子を見ながら、ゆっくりと右腕を前に突き出した。


そして、その状態で「ある言葉」を呟いた。



『右腕獣化』



その瞬間、俺の右腕は怪物の腕へと変わった。


右腕は肩口から手の指先にいたるまで、黒い毛皮が生え、その腕は膨張した筋肉で服を突き破った。


「!?」


その様子を見ていた辻斬りは驚きの表情を見せるが、俺はさらに、今度は左腕を前に突き出した。


スゥッ


そして、右腕と同じように、また言葉を呟いた。



『左腕獣化』



すると、左腕も右腕と同じように怪物の腕へと変わった。



「………。」


グッ!グッ!グッ!グッ!


何度かその怪物の手で拳を握り感触を確かめる。


そして、



「ブチ殺す」



俺は怪物の両腕で拳を構え、改めて辻斬りと対峙した。









※※※


人狼族と呼ばれる獣人族がいる。


彼らは総じて身体能力、もっと言えば戦闘力が高い。


だが、彼らが本当の力を発揮するのは「人狼化」した時だ。


彼らは「人狼化」と言う、半狼半人の狼の顔を持った怪物のような姿に変わることが出来る。


この姿の状態の彼らは極めて強力で、まず歯が立たない。


そして、満月の夜。


この日、もし人狼族に戦いを挑む人間がいるならば、そいつはよほどの馬鹿者か自殺志願者のどちらかだろう。


彼らは満月の夜、無敵になる。


おそらく、単体で下級の竜すら圧倒する事が出来るだろう。


その理由は、おそらく対峙すれば嫌という程に理解できる。



─今まさに、王都に現れた殺人者がそうだというように。






※※※


閃光の様な斬撃が走る。


何度も何度も、ガルーの体を辻斬りは刀で斬るが、それは全く効果がなかった。


すべて、ガルーの怪物の様な両腕に阻まれる。


見た目はただ毛皮の生えた腕だが、それはとんでもない勘違いだ。


まるで、鋼鉄の毛皮。


腕を斬るどころか、毛の一筋すら斬る事ができない。


むしろ、斬っているこちらの刀が駄目になってしまうのではないかと思うほどに、強固な腕だった。


それを感じた辻斬りは一度距離をとった。


「…これが、大陸の魔術というものか。…なんと強力で面妖な」


そう言った辻斬りの表情は苦虫を噛み潰したようだった。


それに対して、ガルーは表情もなくこう言った。


「そんなちんけなもんと一緒にするな。これは『自前』だ」


その言葉に辻斬りは不思議そうに聞き返す。


「自前だと? まさか、お主人間ではないのか?」


「あいにくと、俺は人狼だ」


「なんと、畜生の類か」


「…なんだと?」


自分の種族を畜生呼ばわりされたことに怒りが増すガルー。


そして、瞬間。


ガルーの攻撃が始まった。



「殺す…!」






※※※



ガルーの怪物のような手にはするどい鉤爪が生えており、その爪が辻斬りを襲う。


辻斬りはそれを持っている刀で防ごうとするが、斬撃は毛皮に阻まれ効かず、徐々に距離を詰められていく。


そして、ついに壁際まで距離を詰められた。


「くたばッれ!!」


それを見たガルーは拳を辻斬りの顔面目がけて放った。


ガンッ!!


「ぐッ…!」


拳は辻斬りの顔面に入り、辻斬りは壁に激突した。


だが、辻斬りは殴られた瞬間に顔を思いっきり捻り拳の威力を逃がしていた。


そのせいで首が吹き飛ぶ事はなく衝撃で吹き飛ぶだけで終わった。



「…なんて奴だ。その腕の防御力にこの膂力だと? …怪物め」


「うるせぇ。黙って殺されろ」


「…それは、御免こうむる」


そう言って、壁に激突した辻斬りは壁に背を預けながら立ち上がった。


だが、足にキているのか、ガクガクと足が揺れている。


「………。」


それを見てガルーは足を振り上げた。



ガッ!!


「ぐはッ!!」


ガルーは辻斬りの鳩尾に蹴りを入れた。


そして、蹴り足を腹から引くことはせずそのまま足で壁に押し付けて辻斬りの体を壁に縫いとめる。


まるで、標本の昆虫のような状態の辻斬り。


手にはまだ刀を持っているが、それはガルーの両腕には効かない。


また、腕以外の場所を斬ろうとしても、壁に縫いとめられた状態では斬撃を放ったとしても防がれてしまう事だろう。


それが分かっているガルーはただゆっくりと足に力を込めていった。


「………。」


「ぐっ…! がぁっ…!」


グッ! ググッ!


まるで、虫を足で潰すように足で腹を踏みにじるガルー。


このまま続けていけば、内臓がつぶれるか砕けた骨が内臓に突き刺さる事だろう。


いや、もしかしたら足が腹を突き破るかもしれない。


それほどに執拗な行動だった。


「………。」


それをガルーは、無表情にただ淡々と続けていた。



人の腹を突き破らんばかりに腹を踏み続ける怪物の腕を持つ男。


彼がしている事は辻斬りという殺人者に相応の報いを受けさせているだけなのだが、


その姿はまるで悪魔のようだった。

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