金稼ぎ
テレサと名乗った俺の恩人の身の上話をすべて聞いてから、俺は席を立った。
俺が席を立ったのを見てテレサとなぜか一緒に話を聞いていたルースの野郎も俺のほうを見た。
二人は俺が席を立ったことに不思議そうなに見ていたが、俺はこれからしなければならない事ができたので一言だけ言葉を残して二人に背を向けて店を出た。
ちなみに、二人に言ったのはこんな言葉だ。
「金稼ぎに行って来る」
ガルーが『金稼ぎに行ってくる』という言葉を残して店を出た後、ルースとテレサは顔を見合わせて話しを始めた。
「…あの、ルースさんでしたっけ? あなたのお名前は」
「はい、そうです」
「そのー、ルースさんに聞きたいんですけど。…まさかあの人、私が借金の返済で困ってるって言ったから、あんなことを言ったんでしょうか?」
「はい、その通りです。」
「…あの人は馬鹿なんですか?」
「あぁ、あなたもそう思います? 実は私もです。」
「………。」
「まぁ、そもそもですね。あのガルーと言う男は─」
ルースはそう言って、ガルーについて色々とテレサに情報を吹き込んだ。
そして、ルースの話を聞いたテレサはいくつかのことを理解した。
それは、
ガルーと言うあの青年がものすごい馬鹿だという事と、ルースと言うこの青年が意外におしゃべりだという事だ。
場所は変わり、ギルドの依頼ボードの前。
つい先ほどまで騒ぎがあった場所だが、今はその様子もなく人もまばらだった。
依頼ボードの前には数人のギルドメンバーが依頼ボードに張られた依頼書を吟味するように見ているだけで、もういつも通りのギルドに戻っていた。
…だが、その戻った平穏を壊す青年が現れた。
その青年は依頼ボードの張られた『討伐依頼』の依頼書を一枚一枚奪い取るように引き剥がし、受付へ向かい、そのすべての依頼を請けようとした。
だが、そんな無茶な仕事の請け方は受付が認めるわけがなく散々もめた。
しかし、最後には受付のほうが折れ、そいつはその大量の討伐依頼の仕事を請けることになった。
ちなみに、依頼書の内容はこのようなものだ。
『紅狼を10匹討伐』『食人植物の群生の討伐』『岩トカゲ3匹討伐』『二股蛇を2匹討伐』『角熊を1匹討伐』
依頼書の共通点は、すべてが中級のモンスターの討伐依頼で、そのすべてのモンスター達の生息地地帯が王都から少し離れた場所にある深い森だった。
そして、その一つ一つの依頼難度が高く、黄色から緑色のギルドカードを持っている人間が請けるような、中々に難易度の高い依頼だった。
普通ならばこの様な依頼は、ギルドの中で戦闘に特化した人間でしっかりパーティを組み、準備を整えてから望む。
だが、そいつはそんな事をするそぶりは一切せずに、買い物に行くような気軽さでモンスターの討伐に向かった。
ギルドにいた人間はその姿を見て「田舎から出てきた若造が調子にのっている」と思っていたが、次の日からその評価を改
める事になる。
翌朝、ギルドの前にあの黒ずくめの青年が現れた。
─手には、いくつものモンスターの「首」を持って。
おそらく彼が、その手に持ったモンスター達を討伐してきたのだろう。
だが、そのわりに青年には怪我もなく、また疲れた様子もなかった。
それどころか、青年は実にめんどくさそうな仕草で受付のカウンターに複数のモンスターの首を置き、依頼が終わった事を報告した。
まわりがその様子に驚く中、青年はさっさと依頼達成の手続きをした後、報酬金50万をもらいすぐどこかに消えた。
この日から、その青年はギルドの中で特に注目される「ハンター」となった。
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