第7章
翌日、凛は心のどこかで、昨夜の雪との出来事で少し落ち着けるのではないかと思っていた。
でも、教室に入ると、そんな期待はすぐに裏切られた。
自然と視線は、ハルのいる席に向かう。
無意識に、動きや仕草、髪の揺れまで追ってしまう。
心の中では、「もうやめよう」と思うのに、目が離せない。
――やっぱり、変わらない。
不意に、凛は気づいた。
ハルの肩の力の抜けた姿、手の動かし方――
あれ、昨夜の雪と、どこか似ている。
胸の奥がざわつく。
いや、違う。ハルはハルで、雪は雪だ。
でも、視覚と記憶の中で混ざり、どうしようもなく惹かれてしまう。
そのとき、ハルと視線が合った。
一瞬、世界が止まったような感覚。
慌てて目を逸らし、席に座る。
周りの仲間との会話に混ざろうとするが、意識はハルの方に残ったままだった。
昼休み、凛は思わず立ち上がる。
図書館へ行くつもりはなかったのに、足は自然とハルの方へ向かっていた。
図書館の扉を押し開けると、ハルが本棚の間に立っていた。
凛の視線に気づいたのか、ハルはほんの少し微笑んだ。
「凛、どうしたの?」
その声に、凛は思わず顔を赤くする。
ぎこちなく、言葉を探す。
「あ、あの……、ちょっと……」
言い終わらないうちに、凛は恥ずかしさと動揺で、急いで立ち去ってしまう。
足がもつれそうになりながらも、なんとか出口までたどり着く。
図書館を出た後、凛は深呼吸をした。
胸の奥がまだざわついている。
でも、そのざわつきが、どこか切なくも、少し心地よかった。
――やっぱり、ハルを追ってしまう。
止めようとしても、止められない。
凛は、自分の心の迷路に、少しずつ入り込んでいくのを感じた。




