♯6
バスが、排気ガスと共に出発した。
迎えは10日後。
それまでは、交通手段は一切ない。
この10日間は、陸の孤島。
「携帯は、有害な電磁波を発生させるので、10日間はあずかります」
「Q様の許、清浄な生活を送りましょう」
教団服に身を包んだ男たちが、セミナー参加者全員から、携帯電話を没収した。
バスが出発し、携帯電話が没収されると、途端に、シバのにこやかな態度は、豹変した。
「汚れたクズ共! 整列しろ!!」
と、急にがなりたて始める。
ほんと、ナチ将校軍服コスプレしてそうな、嫌な奴だ。
罵られたり、踏まれるのが好きな奴相手に、やってやってくれ。
オレは、罵声浴びせられたら、マジでキレますから!!
(早く施設に入れろよ!! 暑いんだよ、日差しが。)
一応、吸血鬼よ。オレは。
進化してるから、太陽の下、大丈夫だけど。
グラサンかけて紫外線カットして、メラニン影響削いでるし。
(あら★シバ様が、セミナー参加者達に近づき、ジロジロと値踏みを始めましたよ)
糖尿病を患っている、ふくよかな方達はスルー。
比較的、普通な学生風には、参加理由を聞いてやっている。
お客様なんだから、平等に悩みを聞いてやれよ。
比較的爽やかメンズには、参加理由を聞いている。
すり寄りながら、やたら、親身に。
(まさか、こいつ、男色ですか?
セミナーツアーに女子がいない理由って……!?
こいつが、ツアーメンバーをセレクト?)
「君は何故、このセミナーに参加したのかね?」
急に、シバに話をふられたオレ。
「……いや」
(寄るな~)
オレは、心の中で、ムンクの叫び状態だった★
「サングラスは外したまえ」
「これはちょっと……目の手術したばかりで。
手術のせいで、夢が絶たれて……」
と、口から出まかせ言ってみました。
「そうか。辛い目に遭ったね。もう大丈夫。
Q神と、教祖様を信じれば、救われるよ。苦しみから」
「……」
ゲゲゲッ!! 抱きつかないで。
(こいつ、今夜、ぶっ殺す!!)